出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル112(2017年8月1日〜8月31日)

17年7月の書籍雑誌の推定販売金額は952億円で、前年比10.9%減。
書籍は467億円で、同6.2%減、雑誌は484億円で、同15.0%減。
雑誌の内訳は月刊誌が382億円で、同17.1%減、週刊誌は102億円で、同6.1%減。
返品率は書籍が42.0%、雑誌は46.2%で、月刊誌は47.8%、週刊誌は39.5%。
7月期は土曜休配日が2日あったことが雑誌マイナスの大きな原因とされているが、15.0%マイナスは尋常ではない。
とりわけ月刊誌は17.1%減とかつてない大幅マイナスで、月刊誌、ムック、コミックが揃って凋落を告げている。
今年に入っての雑誌のマイナスは、4月の11.9%減、5月の10.0%減に続く3度目の2ケタ減で、それに返品率を考えれば、雑誌の流通販売自体が利益を生み出さない状況へと向かっていると判断できよう。
この8月に四国をバス旅行してきた。その際に車窓からロードサイドの風景をずっと眺めていたのだが、書店を見かけることが少なかった。書店数が半減してしまった現実を反映しているとあらためて認識させられた。



1.『日経MJ』(8/2)の16年度「日本の卸売業調査」が出された。「書籍・CD・ビデオ」部門を示す。

■書籍・CD・ビデオ卸売業調査
順位社名売上高
(百万円)
増減率
(%)
営業利益
(百万円)
増減率
(%)
経常利益
(百万円)
増減率
(%)
税引後利益
(百万円)
粗利益率
(%)
主商品
1日本出版販売624,422▲2.42,208▲19.42,409▲26.841212.1書籍
2トーハン475,907▲2.66,3046.64,22318.32,83613.0書籍
3大阪屋栗田80,20016.8書籍
4星光堂58,999▲5.6CD
5図書館流通センター42,8557.41,8813.52,0596.61,23819.0書籍
6日教販27,357▲0.935213.214139.611210.5書籍
7ユサコ5,860▲3.722928.722828.814016.8書籍
10春うららかな書房3,84911.11500.01042.02123.2書籍


 MPD188,062▲0.783418.384515.95934.5CD

[大阪屋、栗田、太洋社が消えて2回目の調査となる。
しかしこの部門の見出しに「実店舗振るわず苦境」とあり、本文で「ネット通販や電子書籍の利用が増える一方、実店舗で買い物する消費者は減っており、市場環境は厳しさを増す」と述べられているように、TRCを除いて、売上高は減少するばかりだ。
それに取次は輸送会社からの値上げ要請も相次ぎ、物流コストの増加も指摘されている。また日販の場合、アマゾンのバックオーダー発注の廃止もあり、それらはどのような影響をもたらすだろうか。取次も苦難の一年となろう。
4の星光堂はCD卸のトップだが、5.6%の減少で、こちらも定額配信サービスが普及し、音楽DVDとCD販売の落ちこみを伝えている]



2.1に掲載されていない中央社の決算も出された。
 売上高は228億円、前年比1.6%減。営業利益は3億円、同10.0%減。当期純利益は23.7%減の減収減益。
 その内訳は「コミックスを除く雑誌」が前年比6.0%減、「雑誌扱いのコミックス」が4.6%減、返品率も2%増の31.2%に上昇し、雑誌の下半期の落ちこみと高返品率がその要因となる。

『出版状況クロニクル4』で、2010年代に中央社だけが増収増益、低返品を続けてきたことを既述しておいた。しかし前期の売上高は231億円、前年比1.7%減だったので、2年連続のマイナスとなっている。また全体の返品率も7年ぶりに30%を超えてしまった。
コミックを含めた雑誌の凋落が、中央社をも直撃していることになるし、それはコラボしてきたアニメイトも同様だと思われる。
本クロニクル99などでアニメイトの120店舗網、タイバンコク店の出店、書泉や芳林堂のM&Aなどを伝えてきたが、その後のことはリリースされていない。「あなたの街にアニメイトを出店させよう!」とのキャッチコピーによる出店希望を募る企画の行方はどうなったのであろうか]
odamitsuo.hatenablog.com



3.インプレス総合研究所による16年度電子出版市場は2278億円、前年比24.7%増。
 その内訳はコミックと文学コンテンツ(写真集なども含む電子書籍)が1976億円、同24.7%増、このうちのコミックの売上が1617億円、26.6%増、文字コンテンツは359億円24.8%増。電子雑誌は302億円、24.8%増。

[前回のクロニクルで、出版科学研究所による17年上半期電子出版市場規模が1029億円に達し、17年の電子出版市場は2000億円を超えるであろうと記したばかりだ。ところがインプレスのデータは16年4月から17年3月までのものだが、すでに2000億円に達していたことになる。

本クロニクルは電子出版市場が2000億円に達した場合、その金額はコミックとコミック誌の売上に相当するもので、それが取次や書店の流通販売市場に取り返しのつかない打撃になると繰り返し指摘してきた。それが早くも現実化してしまったのであり、ここでの電子コミックシェアは71%に及ぶ。

このような電子コミック状況を背景にして、トーハンはLINEマンガとコラボした書店試し読みキャンペーンを600店まで拡大していた。それに加え、9月からは従来の出版社別、レーベル別とは異なる4社の「ウェブアプリ棚」を設け、スマホ読者を書店へと誘導する試みをスタートさせる。

それをめぐって、「トーハン、コミック売場に『ウェブアプリ棚』」と題し、関係者の座談会が『新文化』(8/3)に掲載されているので、詳細はそちらを見てほしい。
念のためにLINEの調査データを添えておくと、新たなコミックをどこで知ったかの問いに対し、アプリとの回答は44%、書店は49%で、書店ではネット発コミック売上は1~2%ほどでしかない]



4.小学館とDeNAはデジタルメディア事業を目的とする共同出資会社MERYを設立。小学館の山岸博副社長が社長に就任。資本金は6億5万円で、出資比率は小学館が66.66%、DeNAが33.34%。
 年内までに20代前後の女性を対象とするファッション、美容、コスメなどの情報デジタルサイト「MERY」を開設する。記事作成、編集、校閲などの業務は小学館、システム構築やネット上のマーケティングといったサポートはDeNAが担当する。

[これも前回のクロニクルで、LINEマンガや楽天マンガの取次を担うメディアドゥの現在と今後の方向づけにふれておいた。このメディアドゥに小学館も資本参加している。またマンガweb サービス「サンデーうぇぶり」のACCESSとの共同リニューアルも発表されている。だがMERYはコミック関連ではなく、雑誌全般に及んでいくデジタル化ビジネスの立ち上げと見るべきだろう。
だがはたして大手雑誌出版社の大手デジタル雑誌出版社への転換は可能なのであろうか]



5.マガジンハウスは日之出出版と販売業務提携し、日之出出版の定期刊行物『Fine』『FINEBOYS』『Safari』の3誌と年間50点ほど刊行しているムック、書籍の発売元になる。

Fine FINEBOYS Safari

[このような発行元と発売元のジョイントは、新潮社や朝日新聞出版でも行なわれてきたし、取引正味が高いほうに発売元を移行させていくことは、これからも起きていくであろう。
しかしそれは所謂疑似M&Aとでもいえるし、再びの分離は、取次や書店との関係からも難しいことも折りこみ済みだと思われる]



6.公取委の発表によれば、アマゾンは電子書籍取引における出版社や電子取次と締結した「同等性条件」を撤廃する。
 「同等性条件」とは、電子書籍の小売原価やアマゾンへの卸価格などを競合他社と同等になるように義務づけてきたものだが、公取委はそれが出版社の事業活動を制限し、イノベーション意識や新規参入を阻害するとしていた。

[この電子書籍とアマゾンの問題もさることながら、本クロニクルでも3回続けて取り上げてきたアマゾンのバックオーダー中止と「e託販売サービス」への誘導問題はどのような余波、及び出版社への選択となって表われているのだろうか。
版元ドットコムは、「e託販売サービス」利用はバックオーダー終了前が17社だったのに対し、それ以降は25社になったと発表している。出版協、梓会、人文会加盟出版社の状況はどうなっているのか知らせてほしい]



7.丸善ジュンク堂は池袋本店から100メートルの新築ビルに文具専門店の丸善池袋店を開店。
 地下1階は雑貨、筆記用具、画材などの一般文具150坪、1階はカフェカウンターと座席、書籍、文具のフェア台50坪、2階は丸善オリジナル文具、万年筆など高級文具とカフェ42隻、書籍で100坪。


8.三洋堂HDは名古屋の三洋堂書店志段味店内に「スポーツクラブWill G(ウィルジー)三洋堂志段味」を開設すると発表。同店2階147坪のレンタル部分を閉鎖して転用。
 「スポーツクラブWill G」を運営するのは、全国に82店舗を展開するアクトスで、三洋堂HDは同社とFC契約を締結し、フィットネス事業に参入する。
 三洋堂のブックバラエティストア展開の一環とされ、それに伴い、全83店舗に共通ポイントカード「ponta」を導入する。


9.CCCのFCであるトップカルチャーは「蔦屋書店」全店舗の半分の36店舗を大幅改装。
 売上高が低迷するレンタルDVD、CD部門を半分に縮小し、化粧品やキッチン用品などの物販エリアを2倍に広げる。それは実質的にレンタルDVD、CD陳列スペースが4分の1になるとされる。

[7、8、9の大手書店チェーンに見られる新たなケーススタディは、これまでそのチェーン展開を支えてきた大型店出店が実質的に不可能な状況へと入りつつあることを告げていよう。

本クロニクルで繰り返し指摘してきたように、大手書店の新規大型店出店は、実質的に取次による初期在庫を利用した金融支援に他ならなかった。しかし書店売上の失墜はもはやそれも成立しなくなっている。

本クロニクル106で、16年のジュンク堂と蔦屋書店、TSUTAYAの大型店出店リストを挙げておいたが、そのような動きはほとんど見られなくなっている。それは書店にとって大型店出店が採算ベースにのらないことと同時に、金融機関からの融資に関して、新規事業のほうがスムーズだからであろう。また出店を支える取次の体力が限界に達したことも意味している。7の事例はその象徴といえよう。

その一方で、8と9が示しているのは、大型複合店の柱であったレンタル部門の凋落で、これも音楽、動画配信市場の成長と見合っている。1980年年代から2010年代にかけて、郊外店、大型店、大型複合店とシフトしていく中で、現象的には大型複合店が勝利を収めたかのように推移してきたが、それがバブルでしかなかったことを浮かび上がらせている。

三洋堂とトップカルチャーだけでなく、トーハンと日販、MPDもそのバブルの後始末と後退戦の中に否応なく引きずりこまれていくだろう。
そうした意味において、ここに挙げた書店の3つのケーススタディは、偶然の一致として起きたものではないと思われる]
odamitsuo.hatenablog.com



10.日本の書店状況とは対照的な、アメリカの独立系書店事情が『文化通信』(7/31)の増刊「bBB」に紹介されている。
 それは「独立系書店の将来を楽観している」というニューヨークのグリーンライト・ブックスのレベッカ・フィティングの言である。要約してみる。

*ニューヨークのブルックリン地区で、2009年に地域住民の要望を受け、グリーンライト・ブックストアが55坪でオープン。16年には本店から6キロの場所に新店舗プロスペクト・レファーツガーデン店を同規模で出店。経営者の一人のレベッカはランダムハウスでセールスレップ(書店営業)をしていた。
*本店は地域の人たちの協力で、25人から一口1000ドル以上、7万5000ドルを借りて開店した。その借入金返済が終わり、本店も繁盛しているので、その地域に書店がないこともあり、新店を出すに至った。
*新店では100人が20万ドル以上貸してくれて、それらの人々の30%以上が本店のコミュニティに属している。
*本店の成功は地域の人々が書店がほしいと思い、顧客になってくれたことに尽きるし、ビジネスとしての書店を営んできたからだろう。
*作家を呼んだり、子どもたちへの読み聞かせ(ストーリータイム)といったイベントは週に2~4回開催している。イベントの多くは出版社からのオファーにより、基本的には無料で、この書店のことを知らせ、文化をシェアすることを目的としている。
*従業員は2店舗と劇場の売店、外商などで31人。フルタイム21人、パートタイム10人、バイヤー、外商は1人だったが、2店舗になったので、2人にするために会社の組織作りを進めている。
*新刊発注はマージンを増やすために、できるだけ出版社に直接注文し、客注、売れ行き良好書、小出版社の本は取次を使っているが、取次比率は全体の9%である。
*返品率は12~13%だが、なるべく返品しないようにしているし、買切条件だとマージンも高い。それに出版社の入荷速度が速くなり、月曜日に注文すれば、金曜日には届く。
*文具、グリーティングカード、玩具、ギフトなどの本以外の商材(サイドライン)の売上比率は12%で、本の量から考え、ちょうどよいと考えている。
*アメリカで独立系書店が増えているのは、2011年大手チェーンのボーダーズが倒産し、その店舗があった地域から書店が消えてしまったので、新しい書店ができているからだ。
*書店を開店させようとする若い人々がABA(米国書店組合)の会員になることで、新たな書店コミュニティが形成され始めている。ABAに加盟すると、そのウェブショッピング(Eコマース)のプラットホームを、独立系書店も利用できることが最大のメリットである。その他にも書店員の教育、出版社とのリンク、クレジットカード会社野手数料が少ないことなどが挙げられる。
*書籍販売単価はハードカバーが27ドル、ペーパーバックは17ドルぐらいで、書店マージンは小出版社で40%、大手出版社で52%。客単価は28ドル、客数は平日で160~180人、週末で300~325人。


[これがアメリカの独立系書店のモデルケースとすれば、毎月の実売客が7000人で、月商20万ドル、書店マージン45%とすると、9万ドルとなる。
まさに独立系書店とは書籍を売ることによって成立しているのであり、日本の書店が、書籍、雑誌、コミック、しかも雑誌とコミックに依存している事実とまったく相反している。それはまた日本の独立系書店の困難さを伝えていよう]



11.「チェーンストアのための経営専門誌」を謳う『販売革新』(8月号)が、「アマゾン後のリアル店舗」特集を組んでいる。

販売革新

[そこではニトリ、ヤマダ電機、マツキヨ、ビッグカメラ、カインズ、ドンキホーテなどの物販店舗の、アマゾンに抗しようとする店舗紹介がなされている。
しかし書店だけはない。それは大手ナショナルチェーンがアマゾンに対して、「チェーンストア」の機能を失い始めていることを表象しているのかもしれない。
日本でも10 のような独立系書店があれば、「販売革新」にふさわしい売場として紹介されていただろう。だが残念なことに、7、8、9に見られる他業態への転換しかない。そのような選択肢も困難であることはいうまでもない]



12.『週刊東洋経済』(8/6)が「SCの憂鬱」という記事を掲載している。

週刊東洋経済

[今月はユニー・ファミリーマートHDとドンキホーテの資本提携による、ユニーの「アピタ」「ピアゴ」へのドンキの出店、セブン&アイHD傘下の西武船橋店、西武小田原店の閉店が発表されている。
それに伴い、テナントのほうもまた閉店することになるが、かつては集客のために必要とされていた書店も、もはやそのような存在価値が失われつつあるのかもしれない。

書店だけでなく、この特集があげているショッピングセンターのテナントの出、退店数はファッション、ファッション雑貨、食品、生活雑貨などであるけれど、あまりにもドラスチックな状況を示している。16年のファッション店の出店は3356店に対し、退店は4580店に及んでおり、漂流するファッションというイメージを想起してしまう。
しかしファッション店は什器もろともの移動は可能だが、書店の場合は棚などの汎用性は少なく、売場が縮小されていく中で、それもリース料だけを残して捨てられていく運命をたどるかもしれない]



13.『出版ニュース』(8/下)に日向咲嗣「暴かれたツタヤ図書館の選書リスト」が寄せられている。
 それによれば、ツタヤ図書館として3館目の宮城県多賀城市の2016年の追加購入蔵書3万5000冊の選書リストを入手したところ、そのうちの1万3000冊が中古本だった。
その1万3000冊の出版年の内訳は、2013年が2013冊、10~12年が4501冊、5~9年が3200冊で、75%を占めている。

ジャンル別でいえば、料理2620冊、美容健康2146冊、旅行1218冊で、生活実用書の視点から見ても鮮度が重要なのに、それらが考慮されていない。これらは大半が1円で売られているもので、CCCの関連会社ネットオフから仕入れたものではないか。つまり古本を「新刊」定価で納品したという疑惑がもたれているのである。追加蔵書予算は5250万円とされている。

この問題に関して、多賀城市とCCCに対し、追加購入蔵書の納入企業一覧と価格等がわかる文書の情報開示請求をしたところ、多賀城市は「不存在」と回答し、CCCは理由も明示せず、開示を拒否したとされる。

『出版状況クロニクル4』で、ツタヤ図書館問題については、その始まりである武雄図書館の本質としての「虚像の民営化」を指摘しておいた。
しかし本クロニクル100で、同じく『出版ニュース』連載の「図書館ウォッチング」などから、依然としてツタヤ図書館問題がくすぶり続けていることを記したが、今回の日向文はツタヤ図書館問題が何も解決されていないことを知らしめている。
ここに示された多賀城市とCCCの対応は、確かに公金支出上に関して、説明責任を果たしていない。この問題は公共図書館業界における「森友・加計学園」問題のような様相を示し始めている。
なお日向文はニュースサイトBusiness Journal に連載したものの要約なので、詳細はそちらを参照されたい]


odamitsuo.hatenablog.com
biz-journal.jp



14.『文化通信』(8/7)の堀鉄彦「生まれ変わる出版プラットフォーム」が「書籍フリマアプリ」を取り上げている。これによって新たな書籍流通が広がるとして、エイベンチャーのLabitの「ブクマ!」、メルカリの本、CD、DVD、ブルーレイ専門の「メルカリカウル」が挙がっている。

 これらは個人同士が直接取引するフリマの仕組みを利用するので、アマゾンなどのマーケットプレイスよりも手数料は安く、出品手続きも簡単で、「ブクマ!」も「メルカリカウル」も新刊も手がけていく。それによって新刊市場と中古市場を含む、新しいマーケットプレイスが生み出され、出版流通にも少なからぬ影響をもたらすのではないかと観測されている。

[これは連載第1回なので、その後もレポートをたどるつもりでいる。
そういえば、2013年にサービスを開始した「メルカリ」は流通総額が月間100億円を突破したようだ。

だが問題も露出してきているようで、『週刊新潮』(8/31)が「メルカリは泥棒市場だ 万引本800冊でも放置」の記事を掲載していることも付記しておこう。なお「メルカリ」は多くの事実誤認があり、訂正と謝罪を求める抗議文を内容証明郵便で送ったという]



15.風船舎の古書目録第13号『特集:都会交響楽』が届いた。

fusensha.ocnk.net

[そこに思いがけないものが掲載されていたので、そのことを書いておきたい。それは明治末から昭和十七年にかけての「横浜本牧チャブ屋『キヨホテル』経営者倉田治三郎・喜代子夫妻旧蔵アルバム」13冊で、実際にその写真が8ページにわたって紹介されている。価格は162万円だが、横浜風俗文化や谷崎潤一郎研究者にとっては垂涎の的ともいうべき資料であろう。
この通称キヨハウスはその文章が引かれているように、横浜に居を構えていた谷崎の家の隣にあった、アメリカまで知られていたチャブ屋だった。管見の限り、その最も詳しい言及は今東光の『十二階崩壊』(中央公論社)に見ることができる

書店市場と相俟って、古書市場の苦戦も伝えられているが、このような資料も古書店があればこそ出てくるのであり、そのサバイバルを願って止まない。
これは売れたであろうか。もし売れてなければ、現在の『谷崎潤一郎全集』の編纂者である千葉俊二こそがぜひ買うべきだ。
また風船舎目録は音楽関係をメインとしているが、それに関連して付け加えておきたい。先頃、「出版人に聞く」シリーズの関根由子『家庭通信社と消費社会』(仮題)の打ち合わせで、フリー編集者の野中文江と会った。すると彼女から、最初に勤めた出版社が河合楽器のカワイ出版から独立した二人が立ち上げた啓隆閣であることを知らされた。それからしばらくして、古本屋で1970年刊行のマーツァ『20世紀芸術論』を見つけ、購入してきた。ここでも音楽書を出していたのだろうか]
十二階崩壊



16.今月の論創社HP「本を読む」19は「薔薇十字社と『ルート版の会』」です。

ronso.co.jp

以下次号に続く