2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧
講談社ノベルスなどの創刊に始まる新しいプログラムノベルスの流れは多くの注目すべき作家たちを生み出していった。一作だけで消えてしまった作家もいたけれども。それらの人々と作品に関して、言及していくときりがないので、志水辰夫と大沢在昌にとどめて…
前回の「北島春石と倉田啓明」のところで、浅草の「春石部屋」に集まってきた人々の中に、演歌師の元祖添田啞蝉坊がいたことを記しておいたが、その息子の添田知道も「春石部屋」について書いている。それは『演歌師の生活』 (雄山閣)における演歌師の歌集…
八〇年代に創刊された「プログラムノベルス」が多くの作家たちを生み出したことを既述したが、大沢在昌はまさにその典型であろう。彼の長編第一作『標的走路』 は八〇年に双葉社ノベルス、第二作『ダブル・トラップ』 は八一年に太陽企画出版のサンノベルス…
山崎俊夫とホモセクシャル小説、及び慶應義塾と『三田文学』からなる連環で思い出したのだが、山崎と同時代の作家で、同様の文学環境を経て、同じ傾向の小説を書いた人物がいる。その名を倉田啓明という。倉田啓明を知ったのは、桜井書店の桜井均が出版を廃…
〇五年に刊行され、〇八年に文庫化された志水辰夫の短編集『うしろ姿』 (文春文庫)の「あとがき」は、それまで作家たちが自覚しつつあったにしても、当時はほとんど誰も発してこなかった出版状況をめぐる生々しい言葉と感慨が書きこまれていた。それに志水…
前回記したように井東憲が『変態作家史』の中で、「大正の変態心理小説」を列挙しているが、その一人である山崎俊夫の作品集をあらためて読んでみた。たまたま昭和六十一年に奢灞都館から刊行された『美童』と題する『山崎俊夫作品集』 上巻を所持していたか…
昨年末に上記の本を著者の鷹見本雄から恵贈を受けた。同書はタイトルが長いので、以下『鷹見久太郎』と略す。 『鷹見久太郎』が私のところに贈られてきたのは、昨年上梓した『古本探究2』 (論創社)の中に、「出版者としての国木田独歩」を収録したからだ…
前回 江戸川乱歩とその文学世界のSM小説的な「秘めたる資質」について、少しばかりふれたが、それに加えて乱歩は岩田準一を同行衆として、男色と少年愛の研究の道に深く入りこんだ文学者であり、そこにこそ乱歩の幅広い世代にわたる、衰えない人気の源泉があ…
論創社サイトにて「出版状況クロニクル22(2010年1月26日〜2月25日)」を更新しました。
消費社会の風景はまったく映し出されていないのだが、郊外のニュータウンそのものを舞台とする不気味な物語がずっと書き続けられている。その物語はいまだに完結しておらず、それがどのようなクロージングを迎えるのか、まったく予断を許さない。それは小説…