2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧
菊判の赤い箱入りの十巻本がある。それは昭和四十九年から翌年にかけて、日輪閣から刊行された『秘籍 江戸文学選』で、前回言及した人々が中心になって編まれている。定価は二千円だが、これも二十年以上前に、数千円というゾッキに近い古書価で買ったように…
しばらく間があいてしまったが、もう一度松村喜雄の『乱歩おじさん』(晶文社)に戻ろう。松村は花崎清太郎=花咲一男の『雑魚のととまじり』に言及し、石川一郎は探偵小説にしか興味がなかったけれども、花崎は乱歩の同性愛文献を見せてもらいたがっていた…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
これは海野弘の『ホモセクシャルの世界史』(文春文庫)を読むまで知らなかったが、華麗な女性遍歴で有名なバイロンもホモセクシャルの陣営に属していたようだ。海野によれば、バイロンの愛の傾向が国内にあっては女性に向けられ、国外に出ると男性への愛が…
江戸川乱歩の「J・A・シモンズのひそかなる情熱」が『精神分析』に連載されたことは既述した。『精神分析』は昭和六年に東京精神分析学研究所から創刊された雑誌で、乱歩はその昭和八年の第一号から第六号にかけて、前述の論考を寄稿したのである。その経緯…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
エリスの『性の心理』がナボコフの『ロリータ』(若島正訳、新潮社)の構想にあたって、インスピレーションと「うずき」を与えたことを、サイモン・カーリンスキー編『ナボコフ=ウィルソン往復書簡集1940−1971』(中村紘一・若島正訳、作品社)で知った。 …
エリスの『性の心理』は日本の近代文学や性科学に大いなる影響をもたらしたが、それらの中で最も直接的で真摯なインパクトを与えたのは、小倉清三郎が主宰した相対会に対してだったと考えられる。小倉は東京帝大哲学科出身の熱心なクリスチャンであり、その…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
本連載63「平井功『孟夏飛霜』と近代文明社」のところで、田山花袋の『近代の小説』にふれたが、言及を差し控えた。しかし二回続けて花袋について書いたこともあり、ここで記しておきたい。近代の文学者の中で、花袋ほど評価されておらず、正規の全集も編…
性の「告白」という視点から見れば、田山花袋の『蒲団』とエリスの『性の心理』は関連しているのではないかとの仮説を提出しておいたが、ここでは花袋の『東京の三十年』(岩波文庫)に描かれている洋書の流入状況についての証言を確認してみよう。エリスに…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
ハヴロック・エリスの『性の心理』は初巻の刊行からほぼ百年後の一九九六年に、紛れもない全訳が未知谷から佐藤晴夫訳で出版され、日本語で読むことができるようになった。全巻を通読すると、『性の心理』が膨大な文献を渉猟した性の一大パノラマであること…
[出版状況クロニクル34]で予告したように、[古本夜話]は3月から木、土曜日の週2回更新とする。続けてのご愛読を乞う。 海野弘の『ホモセクシャルの世界史』や都築忠七の『エドワード・カーペンター伝』に書かれているように、シモンズとカーペンターに対…
出版状況クロニクル34 (2011年2月1日〜2月28日)年末に忘年会を兼ねて、知多半島の先にある島に出かけた。その島の周囲は6キロ、人口は2000人余、沿岸漁業が中心で、新鮮な魚介料理を味わうことができる。私はこの島を好み、四度目の訪れになる。夕食後に…