2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧
私はかつて ユーゴスラヴィアの作家ダニロ・キシュの『若き日の哀しみ』と『死者の百科事典』(いずれも東京創元社)について、「死者のための図書館」(拙著『図書館逍遥』所収、編書房)という一文を書いたことがあった。この二冊の短編集はナチスによるジ…
小谷部全一郎の『日本及日本国民之起原』に表出している妄想的としかいいようのない日ユ同祖論、あるいは木村鷹太郎の日本民族のギリシャ、ラテン人同種論にしても、同様な奇怪な言説でしかないのだが、それらは酒井勝軍というトリックスターを得て、さらな…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
前回の小谷部全一郎の『日本及日本国民之起原』を高木彬光の『成吉思汗の秘密』で閉じた。しかしこの二人にもう一人の人物の名前を加えると、飛ばすことができない三題噺を形成してしまうので、その一編を書いておくことにする。 小谷部の同書は言及が遅れた…
春山行夫は独学で英仏語とエンサイクロペディア的知識を取得し、モダニズム詩人として出発し、関東大震災後の大正十三年に名古屋から上京し、昭和三年に厚生閣書店に入る。そして「エスプリ・ヌーヴォー」にふさわしく、すべてが新しいといっていい出版社、…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
前回論じた宮崎安右衛門が、曹洞宗僧侶桃水や聖フランシスなどを模範とする求道生活をめざしていた頃、キリスト教陣営の側からも聖フランシスに関する本が出された。それは大正十一年に小出正吾が著した処女出版『聖フランシスと小さき兄弟』(厚生閣書店)…
続けて二回、多種多様な刊行会による、大正時代における宗教書出版を見てきた。あらためて考えると、大正時代こそは宗教書ルネサンスとよんでいいほどで、それに合わせるように出版社と宗教はこれまでになく接近し、つながり、密接だったと考えられる。本願…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
前回大正時代における仏教・宗教書出版につい書いたので、乱歩絡みの仏教書のことも書いておこう。松村喜雄は『乱歩おじさん』の中で、花咲一男と乱歩の書物談議を紹介し、花咲が『国訳大蔵経』を勧められ、「この本を〈文学〉として読め、と乱歩さんが教え…
本連載46「折口信夫『口ぶえ』」のところで、『世界聖典全集』にはふれないと書いた。だが新光社の仲摩照久が高楠順次郎の『大正新修大蔵経』の出版に取り組んでいたこと、及びジャネット・オッペンハイムの『英国心霊主義の抬頭』(工作舎)を続けて取り…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
本連載91「大内三郎『漂魔の爪』と伊藤秀雄『明治の探偵小説』」のところで、「探偵実話」や黒岩涙香の「探偵小説」の出版社に少しふれたこと、そして前回 黒岩の『天人論』に言及したので、この機会に涙香をめぐる出版のことも書いておこう。涙香の著作を…
前回言及した英国心霊研究協会とその七代目会長フレデリック・マイアーズが著したHuman Personality and Its Survival Bodily Death は、明治後半から大正時代にかけて、日本の文学者たちに予想以上に広範な拡がりを持って、大きな影響をもたらしていたよう…
出版状況クロニクル37(2011年5月1日〜5月31日)若かりし頃は自分がこのようなクロニクルを書くことになるとは夢にも思っていなかった。しかし思いもかけずに出版状況論を書くことになり、いつの間にか10年以上が過ぎてしまった。そして仲間内で最も若か…