出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

41 パナマにおける紀ノ上一族

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話119 ハウスホーファー『太平洋地政学』と太平洋協会

ナチズム三大聖典の日本での翻訳刊行に続いて、やはり重要なナチズム文献が昭和十七年に岩波書店から出版されている。それはハウスホーファー著、太平洋協会編訳『太平洋地政学』である。 この「地政学」なるタームが昭和五十年代に「ゲオポリティク」として…

古本夜話118 シュペングラー『西洋の没落』、室伏高信、批評社

前回の村上啓夫訳『性と性格』の「訳者付言」に、諸外国語に関する教示について、村松正俊に対する謝辞があった。前々回の室伏高信に続いて、村松の名前も出たことからすれば、ヴァイニンガーと同年生まれの青年が出版した、同じドイツのベストセラーにも言…

40 メキシコ人と紀ノ上一族

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話117 ヴァイニンガー『性と性格』とダイクストラ『倒錯の偶像』

オットー・ヴァイニンガーの『性と性格』がヒトラーの『わが闘争』などにも影響を与えたことをあらためて確認したのは、ブラム・ダイクストラの『倒錯の偶像』(富士川義之他訳、パピルス)においてだった。ダイクストラは『性と性格』が「第三帝国総統の図…

古本夜話116 第一書房版『我が闘争』と小島輝正『春山行夫ノート』

ナチズム三大聖典のうちの『プロトコル』と『二十世紀の神話』を続けて取り上げたからには、もうひとつのヒトラーの『我が闘争』にふれないわけにはいかないだろう。既述したように、これは第一書房から昭和十五年六月に室伏高信訳として刊行されている。私…

39 排日と紀ノ上一族

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話115 バハオーフェンと白揚社版『母権論』

ローゼンベルクの『二十世紀の神話』について、「読むに堪えない」もので、ナチスの指導者たちさえも読んでいなかったのではないかというノーマン・コーンの指摘を、前回記しておいた。しかし実際に『二十世紀の神話』を通読してみると、そこに呪術的な言葉…

ExLibrisは森洋介+書物蔵である。

私の「ExLibris=森洋介」の指摘に対して、当人ではなく、書物蔵(id:shomotsubugyo)が7月11日に「twitter」を発している。 そそっかしい小田光雄氏がまたぞろ、キョーレツな間違いを。「誤植訂正はExLibris=森洋介によっている。以後はことわらない。」 Ex…

古本夜話114 ローゼンベルク『二十世紀の神話』と高田里惠子『文学部をめぐる病い』

ノーマン・コーンは『シオン賢者の議定書』において、『プロトコル』、ヒトラーの『わが闘争』、ローゼンベルクの『二十世紀の神話』を、ナチズムの三大聖典とよんでいる。そしてローゼンベルクと『二十世紀の神話』は『プロトコル』のユダヤ人の世界陰謀神…

38 久生十蘭 『紀ノ上一族』

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話113 藤沢親雄、横山茂雄『聖別された肉体』、チャーチワード『南洋諸島の古代文化』

前回『猶太思想及運動』や『四王天延孝回顧録』の四王天が、パリやジュネーブの国際連盟に出向していたことは既述したが、それは大正十三年から昭和二年にかけてだった。彼は『回顧録』の中でそれを、「現職生活中公私共に最も印象深いものの一つ」と述べて…

古本夜話112 四王天延孝『猶太思想及び運動』と内外書房

『驚異の怪文書ユダヤ議定書』の「訳者の言葉」において、久保田栄吉はユダヤ研究の権威として、「四王天延孝閣下及安江陸軍、犬塚海軍其他の先輩」の名前を挙げ、謝辞を恩師の相馬愛蔵、黒光や杉山茂丸などに掲げている。後者の相馬夫妻や杉山のことはひと…

37 ブラジル上陸

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

出版状況クロニクル38(2011年6月1日〜6月30日)

出版状況クロニクル38(2011年6月1日〜6月30日)2010年の日本の自殺者数は3万1690人で、13年連続で3万人を超えている。それは小さな市や町の人口に相当する。だから日本社会は東日本大震災によって、現実的にも多くの市町村が失われてしまったことに加え、…