出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話128 ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』とダヴィッド社

「パリの日本人たち」の一人である丸山熊雄の『一九三〇年代のパリと私』(鎌倉書房)を読んで初めて知ったのは、彼らと報道写真家のロバート・キャパが親しく、川添紫郎と井上清一のアパートに転がりこんでいたという事実だ。そのような前史があったために…

45 敗戦と『紀ノ上一族』

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話127 アルス版「ナチス叢書」と『世界戦争文学全集』、ゾラ『壊滅』

小島威彦の『百年目にあけた玉手箱』第四巻で、北原白秋の弟が経営するアルスの「ナチス叢書」は小島の編集との記述に出会い、長年の出版に関する疑問が解明されたように思った。私はゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」の翻訳と編集に携わっていた時期があり…

古本夜話126 『伊太利亜』、『イタリア』、『戦争文化』

『伊太利亜(一九三八年)』という雑誌的な印象を受ける一冊があって、それを十五年ほど前に入手している。菊版ソフトカバーの黒地の表紙に、イタリアの国旗が斜めにレイアウトされ、イタリアのモダニズムを感じさせる。表紙には「XVII E.F.」とあるので、Er…

 44 FBI と紀ノ上一族

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話125 「パリの日本人たち」と映画

小島威彦と仲小路彰の科学文化アカデミアが戦争文化研究所、世界創造社、スメラ学塾へと展開されていくためには、小島の昭和十一年から十三年に及ぶ、ビルドゥングス過程とでもいうべきヨーロッパ留学が不可欠であった。小島の旅と留学は『百年目にあけた玉…

古本夜話124 国民精神文化研究所と科学文化アカデミア

創立に参画した酒井三郎による『昭和研究会』(講談社文庫、後に中公文庫)のような記録が上梓されている昭和研究会は例外にして、これまで取り上げてきた国際政経学会、太平洋協会、国民精神文化研究所などの政府の外郭団体的な研究所についての詳細な証言…

43 その後の紀ノ上一族

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話123 小島威彦『世界創造の哲学的序曲』と西田幾多郎

田中美知太郎は『西田幾多郎』(『日本の名著』47、中央公論社所収)の上山春平との対談「西田哲学の意味」の中で、東京のアカデミズムにおける京都学派の「インペリアリズム」のことを語り、小島威彦がその世話役だったと述べている。ともに獄死することに…

古本夜話122 小島威彦『百年目にあけた玉手箱』、戦争文化研究所、世界創造社

前回まだその著書を入手していなかったので、あえて名前を挙げなかった人物がいる。それは小島威彦で、彼は他ならぬ「パリの日本人たち」とスメラ学塾の中心人物である。小島は九十歳を超えた一九九五年に『百年目にあけた玉手箱』という全七巻、二百字詰一…

42 紀ノ上一族の少年たち

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話121 高楠順次郎『知識民族としてのスメル族』、スメラ学塾、仲小路彰『肇国』

太平洋戦争と大東亜共栄圏の進行下において、多くの人々がその強力な磁場の中へと引き寄せられ、奇怪な言説や歴史を語り出すようになる。それは本連載で繰り返し言及してきた『大正新修大蔵経』や『世界聖典全集』の企画、編集、翻訳の中心人物である高楠順…

古本夜話120 平野義太郎と『太平洋の民族=政治学』

前回ハウスホーファーの『太平洋地政学』(岩波書店)を翻訳した太平洋協会について、詳細がわからないと書いておいた。しかしその数年後に海野弘の『陰謀と幻想の大アジア』(平凡社)を読むに及んで、そこに太平洋協会への言及を見出したのである。それは…

出版状況クロニクル39(2011年7月1日〜7月31日)

出版状況クロニクル39(2011年7月1日〜7月31日)私は10年以上にわたって、東北のある地酒を好み、それだけをずっと飲んできた。しかしその地酒は東日本大震災もあって、品薄になっているようだ。しばらく入手できない時期も生じていた。それに関連して想起さ…