2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧
明治末期から大正時代にかけて、日本に深い影響をもたらしたと思われる英国心霊研究協会のメンバーたちの「心霊問題叢書」の刊行、またマックス・ミューラーの『東方聖書』に範を求めた高楠順次郎を中心とする、いくつもの宗教書出版プロジェクトについて、…
本連載106「望月桂、宮崎安右衛門、春秋社」のところで書いたように、一燈園の西田天香の『懺悔の生活』が春秋社のベストセラーとなったにしても、それで春秋社が一燈園の専属出版社化したわけではないし、むしろ現在では一燈園と西田のことは忘れられ、…
この「ブルーコミックス論」を始めるにあたって、青林堂の「現代漫画家自選シリーズ」の川本コオ『ブルーセックス』をまず取り上げるのは、あえて意図したことでもないし、牽強付会でもない。この連載を考えた時、最初に浮かんだコミックが『ブルーセックス…
前回に続いて三富朽葉のことを記しておく。第一書房の豪華本というと、『三富朽葉詩集』の一冊しかもっていない。それはいかにも第一書房らしい装丁で、四六判、八百ページ余、背革、天金、マーブルの表紙、シンプルなデザインの箱入りである。奥付には大正…
少し飛んでしまったが、厚生閣と春山行夫についてのもう一編を書いてみる。これは古本屋で見つけるまで知らないでいたし、それまでこのシリーズに関するまとまった文章を目にしたことがなかった。それは『日本現代文章講座』全八巻で、昭和九年に厚生閣から…
序2 これまで英語、日本語、フランス語と続けてきたので、それぞれの「青」のイメージについて、ここでラフスケッチしてみる。ミシェル・パストゥローは『ヨーロッパの色彩』(石井直志、野崎三郎訳、パピルス)において、「青」は西欧総人口の半分以上が常…
ラフスケッチの繰り返しにすぎなかったけれど、スメラ学塾へと集結していった「パリの日本人たち」を中心に紹介してきた。これがとりあえずのスメラ学塾関連の連載の終わりになるので、ここで言及を遅延させてきた、その中心人物である仲小路彰にふれておか…
スメラ学塾は残された第一次資料がほとんどないようなので、小島威彦『百年目にあけた玉手箱』の記述からだけでは、その明確な立体図や二千人に及んだという塾生の実態、そこで行なわれた講義や講演がリアルに浮かび上がってこない。それは西田幾多郎門下の…
序1 数年前にグレアム・グリーンの短編「ブルーフィルム」に言及したことがあった。 その短編はイギリス人のカーター夫妻が夕刻にホテルのティールームで話している場面から始まる。二人は倦怠期を迎えている夫婦で、子供はなく、東南アジアの一国にきてい…
考えてみれば、すでに四十年以上前から気になっている出版社があって、出版業界のことを調べるようになってからも、かなり注意しているのだが、詳細を把握できない版元が存在する。それは前回取り上げた米倉二郎『東亜地政学序説』の生活社である。これは確…
前回言及した「出版新体制」や大東亜戦争の始まりとパラレルに、やはり西田幾多郎の弟子にあたり、当時の京都学派を代表する高坂正顕、西谷啓治、高山岩男、鈴木成高が『世界史的立場と日本』(中央公論社)を昭和十八年に刊行する。これは『中央公論』に昭…
◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…
小島威彦と仲小路彰たちによって、昭和十四年に立ち上げられた世界創造社、戦争文化研究所、スメラ学塾のかたわらで、日本では国家総動員法が公布され、イギリスとフランスがドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が起きていく。そして翌年には日独伊三国同盟…
出版状況クロニクル40(2011年8月1日〜8月31日)「重厚長大 昭和のビッグプロジェクトシリーズ」(ジュネオンエンタテインメント)というDVDがある。これは東京タワー、佐久間ダム、名神高速道路、青函トンネルなどの工事過程を映像に収めたアーカイブで、戦…