出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話205 金子洋文『投げ棄てられた指輪』と新潮社「現代脚本叢書」

叢文閣の秋田雨雀『国境の夜』と一緒に買い求めた同時代の戯曲集があり、それは金子洋文の『投げ棄てられた指輪』で、前者と同様に背や表紙がかなり痛んでいたために、とても安い古書価で購入した記憶が残っている。『国境の夜』が「現代劇叢書」の一編だっ…

ブルーコミックス論37 山岸涼子『甕のぞきの色』(潮出版社、二〇一〇年)

(潮出版社) (秋田書店プリンセスコミック) (秋田書店) その魅惑的なタイトルゆえに、「山岸涼子スペシャルセレクション」4の『甕のぞきの色』を購入してしまった。ただこの作品は記憶の片隅に残っていたので、初出を見てみると、一九九二年十一月から…

古本夜話204 秋田雨雀『国境の夜』、叢文閣「現代劇叢書」、『秋田雨雀日記』

大正期には戯曲の「叢書」も出されている。 大正十年五月に叢文閣から刊行された秋田雨雀の戯曲集『国境の夜』がある。菊半截判の濃紺の上製本で、表題作を含めて四作が収録されている。叢文閣は説明するまでもなく、有島武郎の友人足助素一が営む出版社であ…

古本夜話203 矢島一三、中興館、海外文芸叢書『七死刑囚物語』

大正期の「叢書」について続けてみよう。 背の下の部分の傷みは激しいが、アンドレーエフ作、相馬御風訳『七死刑囚物語』を以前に入手している。大正二年に海外文芸叢書社から刊行された「海外文芸叢書」の第一篇で、菊半截判である。表紙に記憶があったので…

ブルーコミックス論36 金子節子『青の群像』(秋田書店、一九九九年)

金子節子の『青の群像』は、裏表紙カバーの内容紹介のコピーにあるように、その「青」を含んだタイトルはそのまま「青春群像劇」を意味していて、色彩の「青」の喚起するイメージは伴っていない。しかし主人公たちは男女の二卵性双生児で、姉は「碧(みどり)…

古本夜話202 宇野浩二『文芸夜話』と金星堂「随筆感想叢書」

本連載176などで数回にわたってふれてきた新潮社の「感想小品叢書」とよく似たシリーズが、新潮社をライバルとして文芸出版を始めていた金星堂からもほぼ同時期に刊行されているので、それも挙げてみよう。これは前回の文藝春秋社の命名も関係しているか…

古本夜話201 春秋社と文藝春秋社出版部

前回の庄野誠一に関連することもあり、文藝春秋社をめぐる一編を加えておく。本連載180で、文藝春秋社出版部なる名称が菊地寛によって、春陽堂から独立した小峰八郎に貸与されたものだと既述した。またそこで、この頃は文藝春秋社出版部の本に出会わない…

ブルーコミックス論35 原作李學仁・漫画王欣太『蒼天航路』(講談社、一九九五年)

前回の江戸川啓視と石渡洋司の『青侠ブルーフッド』は秦の始皇帝時代に端を発し、墨子を祖とする青幇への弾圧を物語のベースに置いていた。 秦の始皇帝といえば、ただちに秦始皇陵兵馬俑坑を思い浮かべてしまう。これは一九七〇年代に発見された中国古代文明…

古本夜話200 庄野誠一「智慧の環」と集英社『日本文学全集』

砂子屋書房の刊行書目を見ていて、昭和十三年に庄野誠一の短編集『肥つた紳士』が出されていることにあらためて気づいた。庄野ももはや忘れ去られた作家だと考えられるが、それでも『日本近代文学大事典』には立項がある。それによれば、明治四十一年東京芝…

古本夜話199 砂子屋書房「新農民文学叢書」と丸山義二『田舎』

ここでもう一度、砂子屋書房の出版物に戻る。 農民文芸会に端を発する文学史と出版史をずっとたどってきたので、柳田国男の農政学から埴谷雄高の左翼農民運動へと至る問題、渋谷定輔の『農民哀史』(勁草書房)や松永伍一の『日本農民詩史』(法政大学出版局…

ブルーコミックス論34 原作江戸川啓視、漫画石渡洋司『青侠ブルーフッド』(集英社、二〇〇五年)

前回の『プルンギル』の原作者江戸川啓視によるもう一編のコミックがある。それは石渡洋司の『青侠ブルーフッド』で、冒頭に次のような注記が置かれている。それはこれから語られる物語、事件、登場人物、対立する組織はすべてフィクションであるという、小…

古本夜話198 『居酒屋』の訳者関義と『展覧会の絵』

論創社版「ルーゴン=マッカール叢書」に『ナナ』の新訳を加えることが決まり、その参考のために、戦前だけでなく、戦後も含めて『ナナ』の既訳状況を調べたことがあった。その中に昭和三十年に青木書店から刊行された関義・安東次男訳も見出されたが、前回の…

出版状況クロニクル48(2012年4月1日〜4月30日)

出版状況クロニクル48(2012年4月1日〜4月30日)先月 記したように、山下耕作の『総長賭博』を40年ぶりに映画館で観たこともあって、続けて同じく東映仁侠映画の名作、加藤泰の『明治侠客伝 三代目襲名』や『緋牡丹博徒 お竜参上』なども、DVDで観てしまった…