2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧
一九七一年に小田切秀雄は、古井由吉、黒井千次、後藤明生、阿部昭たちを「内向の世代」とよび、彼らが外部社会との対決を避け、内向的になっていることを批判した。しかしそのような批判も生じる一方で、「内向の世代」の作家たちは戦後文学において、これ…
特価本業界はマンガの揺籃の地であったばかりでなく、金の星社のような児童書出版社とともに歩んだ記録をも残している。『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』は金の星社を仲間として扱い、次のように記している。「金の星社(黎明社)―黎明社としてわれ…
読者としてのマンガと貸本屋体験も語っておくべきだろう。以前にも雑貨屋兼貸本屋のことを記していて、それと相前後し、読んだ貸本マンガに関して、どちらが先だったのか、記憶の混同があるかもしれないが、書いてみよう。あれは昭和三十五、六年のことでは…
大友克洋の『童夢』と岡崎京子の『リバーズ・エッジ』におけるスティーヴン・キングの影響に関して指摘したこともあり、ここでキングについても一編書いておきたい。それは大友と岡崎のコミックのみならず、キングは一九八〇年代以降の日本の小説や映画に多…
近年になって小熊秀雄原作の漫画に関しては、創風社が『小熊秀雄詩集』『小熊秀雄童話集』に続いて『小熊秀雄漫画傑作集』全四巻を編み、大城のぼる以外の渡辺加三、謝花凡太郎、渡辺太刀雄の『不思議の国インドの旅・勇士イリヤ』『コドモ新聞社』『火打箱…
前回、入手経路はまったく不明だが、たまたま家にあり、小学生の頃に読んだマンガを取り上げ、それが中村書店から刊行された大城のぼるの『愉快な探検隊』で、三一書房の『少年小説大系』に復刻収録されていることを記しておいた。そしてその事実を知ったこ…
大友克洋の『童夢』に続いて、もう一冊コミックを取り上げてみる。それは岡崎京子の『リバーズ・エッジ』で、九〇年代の作品であるが、同じ郊外の風景を舞台とし、やはりスティーヴン・キングの影響を見てとれるからだ。さらに付け加えれば、梶井基次郎の「…
個人的なマンガの体験についても語ってみることにしよう。これはまったく入手した経路がわからないのだが、私が小学校の低学年だった頃、家に一冊のマンガがあった。私以外に子供はいなかったから、私が誰かからもらったマンガでないことだけは確かである。…
これは戦後編でと考えていたけれども、特価本業界に関してずっと書いてきたことからすれば、マンガにふれないわけにはいかないだろう。『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』も、「全版組合の歴史をたどる上で、マンガと貸本を除いては語れないものがあ…
この連載としては初めてのことだが、出たばかりの新刊の紹介と書評を兼ねた一編を挿入しておきたい。その新刊は菊地史彦の『「幸せ」の戦後史』である。彼はこの著作において、「私もまた昭和と平成を生きてきたひとつの社会現象」という認識のもとに、「自…
『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』の中に、敗戦を迎えた昭和二十年の秋深くなった頃、出版物卸商業協同組合が立ち上げられたとの記述がある。それは同十六年の日配の成立以来、特価本業界も統制下に置かれ、市会も開くことができなかった状況に対し…
坂東恭吾へのインタビュー、「三冊で一〇銭! ポンポン蒸気の中で本を売る」(尾崎秀樹・宗武朝子編、『日本の書店百年』所収、青英舎)の中に、言及しておかなければならない名前も出てきていた。それは残本をばらしている博文館の倉庫で、坂東が出会った人…
出版状況クロニクル59(2013年3月1日〜3月31日)アダム・スミスは『国富論』第一編において、次のようなことを述べている。労働生産力を向上させた機械の発明や改善は哲学者、もしくは思索家によってなされたのであり、社会の進歩につれて、哲学や思索は他の…