出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話318 小川寅松、尚栄堂、吉田俊男『奇美談碁』

前回、小川菊松が大洋堂出身であり、その大洋堂からは多くの出版人たちが誕生したことを既述しておいた。それに関連して小川がどうして言及しなかったのか、やはり何らかの事情が潜んでいると思われる人物と出版社がある。その人物とは小川寅松、出版社は尚…

混住社会論30 三池崇史『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』(大映、一九九五年)

日本映画状況とそのインフラを考えるにあたって、一九八〇年代に立ち上がったビデオレンタル市場を抜きにして語れないだろう。とりわけ九〇年代に入ると、Vシネマというジャンルが急速に台頭してくる。Vシネマとは劇場公開されないビデオレンタル専門映画の…

古本夜話317 大洋堂、小川菊松、加藤美倫『世界に於ける珍しい話と面白い噺』

本連載で『出版興亡五十年』を始めとする誠文堂新光社の小川菊松の著作を拳々服膺してきたが、彼のルーツも特価本業界の系譜上にあると考えていいだろう。小川の出版人生は十六歳で上京し、大洋堂に入ったことから始まっている。小川のことも含んで、大洋堂…

古本夜話316 金竜堂と原浩三『日本好色美術史』

前回、また坂東恭吾に登場してもらったので、再びもう少し彼のことをたどってみる。『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』における「坂東恭吾の足跡」によれば、月遅れ雑誌の販売から始まり、大正十年頃から三星社として「造り本」の出版と特価本の卸に…

混住社会論29 篠田節子『ゴサインタン・神の座』(双葉社、一九九六年)

(双葉文庫) 神 荒野の道より民を導きたまふ 「出エジプト記」 折口信夫が「国文学の発生(第三稿)」(、『古代研究(国文学篇所収)』所収、『折口信夫全集』第一巻、中公文庫)でいうところの神としての「まれびと」が、古代ならぬ現代の郊外に、しかも混…

古本夜話315 木村小舟と『図解趣味の仏像』

本連載261で木村小舟が坂東恭吾のために、雑誌『興国少年』(後に『皇国日本』)を立案し、昭和十年代に坂東が七年間にわたってその発行に携わっていたことを既述しておいた。木村は博文館の『少年世界』に寄稿したことがきっかけで、その主筆巌谷小波に…

古本夜話314 淡海堂と南川潤『心の四季』

前回、梧桐書院が淡海堂系列の出版社であることを記しておいたが、淡海堂については『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』の中にまとまった紹介がなされていない。本来であれば、淡海堂と酒井久三郎はこれまでに取り上げてきた春江堂、大川屋、河野書店…

混住社会論28 馳星周『不夜城』(角川書店、一九九六年)

少しばかり時代が飛んでしまうけれど、前回の大沢在昌『毒猿』における新宿と台湾の関係の後日譚と見なしていい作品が九六年に刊行される。それは馳星周の『不夜城』である。『不夜城』は次のように書き出されている。 (角川文庫) 土曜日の歌舞伎町。クソ熱…

古本夜話313 中山太郎『日本民俗学辞典』と梧桐書院

特価本業界とともに歩んだのはプロフィルの定かでない著者、作家、編集者だけでなく、本連載でも既述してきたように、梅原北明一派や宮武外骨たちも同様で、彼らの本が成光館などの出版社から再版されていることからもうかがわれる。また民俗学に関係する人…

古本夜話312 高木斐川『政治及社会思想』(教文社)と高木、古賀峡谷編『世界風俗奇聞大観』(廣文社)

ここで大阪から東京に戻り、もう少し特価本業界のことを続けてみよう。まだ本が残されているからだ。特価本業界にはプロフィルの定かでない著者や作家や編集者たちが多くいて、「造り本」を始めとする多種多様な出版企画に関係していたと思われる。そのよう…

混住社会論27 大沢在昌『毒猿』(光文社カッパノベルス、一九九一年)

一九九〇年に発表された大沢在昌の『新宿鮫』(光文社カッパノベルス)と九一年の第二作『毒猿』はいずれも一匹狼の刑事の新宿鮫を主人公とし、その舞台を新宿としていることは変わらないけれど、後者は私のいう混住小説のファクターを導入したことによって…

古本夜話311 久世勇三『漫画と落語のどぼとけ』、霞亭会、大鐙閣

ここでひとまず大阪の出版業界への言及を終えるので、最後にもう一本付け加えておきたい。それは大鐙閣についてである。拙稿の「天佑社と大鐙閣」(『古本探究』所収)、本連載172において大鐙閣と『解放』と新光社の関係、同193でゾラの翻訳を刊行し…

古本夜話310 小笠原白也『女教師』と青木嵩山堂

二回大阪の和本に関して続けたので、もう一回それについて書いてみる。これもまったく偶然なのだが、脇阪要太郎が『大阪出版六十年のあゆみ』で語っている大阪の近代文芸書の草分けで、駸々堂と並ぶ青木嵩山堂の一冊でもある。それは痛みの激しい菊判二百八…

出版状況クロニクル62(2013年6月1日〜6月30日)

出版状況クロニクル62(2013年6月1日〜6月30日)ヤマダ電機の13年度の売上高は1兆7014億円で、これは12年の出版物売上高1兆7398億円とほとんど同じであることを示している。このヤマダ電機の他に、エディオン、ケーズ、ヨドバシカメラを加えた家電量販店4社…