出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話432 綿谷雪と『真山青果全集』

岡本経一の『私のあとがき帖』の中に、「真山青果門の綿谷雪」という一章があり、それでそれで昭和十五年に講談社から刊行された『真山青果全集』全十五巻が綿谷雪の編集によるものだと知った。実は真山青果も集古会の会員で、『千里相識』に松竹御雇座付作…

古本夜話431 柴田宵曲とふたつの『子規全集』

もう一編、柴田宵曲について続けてみよう。 岡本経一は『私のあとがき帖』 の「俳人柴田宵曲」の中で、『ホトトギス』以後の柴田の仕事のことも書いている。 「ホトトギス」が丸ビルに移ったのに厭気がさして大正十二年、社を去った。翌十三年震災に遭って倒…

混住社会論82 三浦朱門『武蔵野インディアン』(河出書房新社、一九八二年)

もうひとつ続けて武蔵野を舞台とする作品を取り上げてみよう。それは三浦朱門の『武蔵野インディアン』で、同タイトルの他に「先祖代々」「敗戦」「解剖」の四編からなる連作小説集である。『武蔵野インディアン』という総タイトルに表象されているように、…

古本夜話430 岡本経一『私のあとがき帖』と柴田宵曲

大東出版社の「大東名著選」のことがさらに詳しく書かれているのではないかと思い、昭和五十五年に出された岡本経一の『私のあとがき帖』(青蛙房)を読んでみた。するとこの本が青蛙房の二十五周年記念とされ、『私のあとがき帖』と題されているだけあって…

古本夜話429 大東出版社と林若樹『集古随筆』

本連載で何度か続けて林若樹に言及してきたが、彼の著作や文献は集古会の山中共古、三村竹清、木村仙秀などと同様に、青裳堂書店から刊行され、『林若樹集』『若樹随筆』『若樹文庫収得書目』の三冊に及んでいる。しかし現在ではこれらも品切となり、古書価…

混住社会論81 大岡昇平『武蔵野夫人』(講談社、一九五〇年)

前回の国木田独歩の『武蔵野』の刊行からほぼ半世紀を隔てた一九五〇年に、大岡昇平の『武蔵野夫人』が『群像』に連載され、はやり同年に単行本化されている。そして翌年には十五万部という文芸出版のベストセラーとなり、また福田恆存脚色による文学座での…

古本夜話428 長谷川伸、新小説社、『大衆文芸』

瞼うへ下合せりや闇に湧いて出てくる母の顔 長谷川伸 前回に続き、長谷川伸が引き継いだ第三次『大衆文芸』のことも書いておこう。長谷川伸をあらためて認識したのは、昭和五十二年に旺文社文庫に収録された『狼』を読んでからのことだった。この京の大店に…

古本夜話427 時代小説、探偵小説、平凡社『現代大衆文学全集』

これまで何回も江戸川乱歩に言及し、この数回続けて生田蝶介、国枝史郎、白井喬二、三上於菟吉といった新しい大衆文学としての「時代小説」にもふれ、この「時代小説」の物語祖型群が早稲田大学出版部の『近世実録全書』ではないかとも指摘しておいた。乱歩…

混住社会論80 国木田独歩『武蔵野』(民友社、一九〇一年)

明治三十四年、すなわち一九〇一年に出版された国木田独歩の『武蔵野』は、近代文学における郊外風景論の始まりと見なすべき一冊で、前年に刊行された徳富蘆花の『自然と人生』にしても、初出の「武蔵野」の影響を抜きにしては語れない。またそれは早くも一…

古本夜話426 『講談雑誌』と白井喬二「怪建築十二段返し」

「島原大秘録三部作」の著者である生田蝶介が編集長を務めた『講談雑誌』を一冊だけ持っている。四六判の三百二十ページ余の大正十二年十一月号で、武田比佐による伽羅色の地に枝にとまる鳥を描いた「秋の山」という表絵は斬新に感じられるが、折り込みの目…

古本夜話425 『近世実録全書』と生田蝶介『島原大秘録』

われは思ふ。末世の邪宗、切支丹でうすの魔法。 北原白秋「邪宗門秘曲」 前回、早稲田大学出版部の『近世実録全書』が、当時台頭しつつあった新しい大衆文学としての「時代小説」の物語祖型群ではなかったかと書いたので、その実例を挙げてみよう。二十年ほ…

出版状況クロニクル77(2014年9月1日〜9月30日)

出版状況クロニクル77(2014年9月1日〜9月30日)8月の書籍雑誌推定販売金額は1177億円で、前年比7.9%減。これは6月の9.5%減に次ぐ落ちこみである。その内訳は書籍が同4.8%減、雑誌は10.1%減で、雑誌のうちの月刊誌は9.5%減、週刊誌は12.3%減となってい…