出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話388 『新進傑作小説全集』と佐々木茂索

前回の『菊池寛全集』と同年の昭和四年に、やはり平凡社から『新進傑作小説全集』全十五巻が出されている。これも前回ふれた『世界探偵小説全集』や『ルパン全集』と同じ菊半截判の全集である。これらも同年の刊行だから、平凡社はこの年に三種類の菊半截判…

混住社会論60 G・K・チェスタトン『木曜の男』(原書一九〇八年、東京創元社一九六〇年)

前回、E・ハワードがベラミーのユートピア小説『顧みれば』の影響を受け、『明日の田園都市』を著し、最初の田園都市レッチワースの開発に取り組んでいったことを既述しておいた。そしてベラミーの影響もさることながら、フェビアン協会の社会主義やクロポト…

古本夜話387 平凡社版『菊池寛全集』

菊池寛こそは昭和円本時代をリアルタイムで象徴する作家にして出版者であったといっていいだろう。改造社の『現代日本文学全集』や春陽堂の『明治大正文学全集』においても、一人で一巻を占め、平凡社からは二回にわたって『菊池寛全集』を出し、編集者とし…

古本夜話386 『世界探偵小説全集』の企画と代訳

平凡社の円本や全集を続けて取り上げたこともあり、さらにいくつか言及してみたい。江戸川乱歩が『探偵小説四十年』で証言しているように、昭和四年は「探偵小説出版最盛の年」で、個人の『小酒井不木全集』(改造社)を除いても、『ルパン全集』『世界探偵…

混住社会論59 エベネザー・ハワード『明日の田園都市』(原書一九〇二年、鹿島出版会一九六八年)

本連載や『〈郊外〉の誕生と死』において既述してきたように、戦後の郊外や混住社会は高度成長期を通じての産業構造の転換、人口増加、それらに伴う都市への人口移動と集中、モータリゼーションの進行と消費社会化といったプロセスを経て出現してきた。これ…

古本夜話385 平凡社の戦前版『名作挿画全集』

「出版人に聞く」シリーズ12の飯田豊一『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』のインタビューで、あらためて教えられ実感させられたのは、SM雑誌のみならず、日本の小説や物語における挿絵の重要性である。日本の出版業界の場合、欧米と異なり、小説の書き下ろし…

古本夜話384 『令女文学全集』と『少年冒険小説全集』

これまで続けてふれてきた吉屋信子や西條八十を始めとする少女小説家や詩人たちが勢揃いした円本があるので、それを紹介しておきたい。それは昭和四年に平凡社から刊行された『令女文学全集』全十五巻である。 『令女文学全集』 9巻 8巻平凡社は最も多く円本…

混住社会論58 『日本ショッピングセンターハンドブック』と『イオンスタディ』(いずれも商業界、二〇〇八、〇九年)

一九六九年の二子玉川の高島屋を起源とする郊外ショッピングセンターは、九〇年代における大店法(大規模小売店舗法)の改正と規制緩和、それに続く二〇〇〇年の大店法廃止と大店立地法(大規模小売店舗立地法)の施行によって、大型ショッピングセンターの…

古本夜話383 実業之日本社『芳水詩集』と『少年世界』

前回書きそびれてしまったけれど、吉屋信子の洛陽堂版『花物語』の判型は、吉武輝子の言葉を借りれば、「大きさは葉書大」、つまり菊半截判、あるいはA6判ということになり、ほぼ現在の文庫本サイズであった。それはほるぷ出版の復刻からも確認できる。 (国…

古本夜話382 吉屋信子、『黒薔薇』、『花物語』

交蘭社の詩集などについて、続けて言及してきたが、ここで小説にもふれておくべきだろう。前回の福田正夫『夢見草』の巻末広告に吉屋信子の名前も見えていることを既述しておいたが、それらの書名を具体的に挙げてみると、『花物語』四冊、長篇小説『屋根裏…

出版状況クロニクル71(2014年3月1日〜3月31日)

出版状況クロニクル71(2014年3月1日〜3月31日)2月の出版物推定販売金額は1530億円で、前年比3.6%減、その内訳は書籍が810億円で同2.8%減、雑誌が720億円で同4.4%減。 返品率は1月よりは低くはなっているが、やはり前年を上回り、書籍は33.7%、雑誌は37.…