出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

混住社会論125  トシオ・モリ『カリフォルニア州ヨコハマ町』(原書一九四九年、毎日新聞社一九七八年)

南北アメリカへの日本人移民に関しては本ブログの「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」でふれてきたが、アメリカで生まれた日系二世、日系アメリカ人の物語にはほとんど言及してこなかった。ここではそれを取り上げてみたいと思う。これまで様々に論じてきたよう…

古本夜話519 後藤朝太郎『文字の史的研究』

これも本連載514で記しておいたが、マックス・ミュラーの『言語学』に金沢庄三郎とともに共訳者として名前を連ねているのは後藤朝太郎である。これは金沢が「序」で断わっているように、「本書の訳文は文科大学学生後藤朝太郎氏の筆になつた」ものであり…

古本夜話518 金沢庄三郎『日鮮同祖論』

本連載514で、マックス・ミュラーの『言語学』の共訳者として金沢庄三郎の名前を挙げておいた。近年石川遼子による初めての評伝『金沢庄三郎』(ミネルヴァ書房、平成二十六年)が出され、その生涯が克明にたどられている。(『言語学』下) 金沢の詳細な…

混住社会論124 スティーヴン・グリーンリーフ『探偵の帰郷』(早川書房、一九八五年)とリチャード・ピアス『カントリー』(ポニー、一九八四年)

(パンフレット) 本連載122で一九八〇年前後のタイの農村を見たように、様々な時代における日本やフランスやアメリカの農村の風景にふれてきた。そして日本の農村が八〇年代になって、ロードサイドビジネスの林立する郊外消費社会へと変貌してしまったこ…

古本夜話517 今岡十一郎『ツラン民族圏』と『ハンガリー語辞典(洪和)』

本連載514と515で、続けてマックス・ミュラーのアーリア人、セム人、トラニアン人の言語と民族分類、及び宗教の関係を既述しておいたが、日本人もまたそこに世界を代表する民族を見て、それらに日本人の出自、もしくは日本を重ねるという試行錯誤を繰…

古本夜話516 マックス・ミュラーの小説『愛は永遠に』

これは戦後の出版ではあるけれど、マックス・ミュラーの唯一の文学作品『愛は永遠に』が昭和二十八年に相良守峯訳で角川文庫から刊行されているので、この小説も紹介しておきたい。その前にこれまでマックス・ミュラーに言及してきたが、詳しいプロフィルを…

混住社会論123 『アメリカ教育使節団報告書』(一九四六年、講談社学術文庫、一九七九年)

前回、タイの農村と小学校を舞台とする『田舎の教師』にふれたが、タイは他の東南アジア諸国と異なり、外国の植民地になったことがない。それゆえに近代の波にさらされていても、その教育システムはタイ社会の在り方と密接に結びついているのだろう。しかし…

古本夜話515 マックス・ミュラー『宗教学綱要』

前回、マックス・ミュラーの南条文雄訳『比較宗教学』が明治四十年に博文館の「帝国百科全書」の一冊として刊行されたことを既述しておいた。これは一八七〇年に王立協会でミュラーが四回にわって行った講演に参考資料を加え、七三年に“Introduction to the …

古本夜話514 マックス・ミュラー『言語学』と『比較宗教学』

明治三十一年から四十二年にかけての十二年を要し、博文館の「帝国百科全書」第二百編が刊行された。『博文館五十年史』の明治三十一年のところで、「数多き本館出版物の中に、当時最も権威あるものは、此年より創刊したる『帝国百科全書』二百冊であった」…

出版状況クロニクル90(2015年10月1日〜10月31日)

出版状況クロニクル90(2015年10月1日〜10月31日)15年9月の書籍雑誌の推定販売金額は1416億円で、前年比6.1%減。 その内訳は書籍が741億円で、前年比2.3%減、雑誌は675億円で9.9%減、そのうちの月刊誌は8.1%減、週刊誌は17.8%減。週刊誌は今年に入って…