出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話526 田中英夫『洛陽堂河本亀之助小伝』、中山三郎、小川菊松『出版興亡五十年』

前回、田中英夫の『河本亀之助伝』を鶴首して待ちたいと書いたが、それにただちに応えてくれるようにして、田中から『洛陽堂河本亀之助小伝』(燃焼社、二〇一五年十一月刊)を恵送された。それゆえにここでそれにまつわる何編かを書いておきたい。 同書には…

混住社会論128 邱 永漢『密入国者の手記』(現代社、一九五六年)

太平洋戦争における日本の敗戦とGHQによる占領が強制的といっていい混住社会を出現させたことに関して、本連載でも繰り返しふれてきた。しかしそれは日本ばかりでなく、その混住の位相は異なっていても、日本の植民地でも起きていた現実に他ならない。例えば…

古本夜話525 南条文雄『忘己録』と井冽堂

本連載512で光融館の南条文雄の『梵文阿彌陀経』を始めとする「通俗仏教講義」シリーズを紹介し、それらの内容が学術的なもので、シリーズのタイトルとしてふさわしくないように思えると述べておいた。だがその一方で、ほぼ同時代に南条は「通俗仏教講義…

古本夜話524 尾上八郎『平安朝時代の草仮名の研究』と自費出版

前回で雄山閣のことは終えるつもりでいたけれど、書いておかなければならない、もう一冊が出てきたので、さらに一編を追加しておきたい。この連載は出版物の編集事情と並んで、流通や販売に関しても言及することを心がけているのだが、定かに解明できないの…

混住社会論127 宮内勝典『グリニッジの光りを離れて』(河出書房新社、一九八〇年)

前回の有吉佐和子の『非色』の舞台となったマンハッタンのハーレムから、さらに南に下ったところにイースト・ヴィレッジがある。『非色』にはプエルトリコ人たちのスラムとして、スパニッシュハーレム=イースト・ハーレムが描かれていたけれど、イースト・…

古本夜話523 田村栄太郎と雄山閣「生活史叢書」

これもしばらく後のところでと考えていたのだが、注目すべき何人かが揃って登場していることもあり、やはりここで書いておこう。『雄山閣八十年』はそれに寄せられた「雄山閣八十年を祝って」という祝辞の三十数名の顔ぶれからすると、大半が大学教授で占め…

古本夜話522 未来社『金日成著作集』と雄山閣『金日成伝』

前回、吉本隆明の初期の著作を出版したのが雄山閣に「同居」していた淡路書房と未来社であることを記しておいた。それは同時代の雄山閣と未来社のささやかな縁を垣間見せてくれるが、それ以上に両社が朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)の金日成の伝記や…

混住社会論126 江成常夫『花嫁のアメリカ』(講談社、一九八一年)と有吉佐和子『非色』(中央公論社、一九六四年)

私が同時代を背景とする現代小説を読み始めたのは、一九六〇年代前半で、しかも光文社のカッパノベルスが全盛だったことから、それらは松本清張、水上勉、黒岩重吾、梶山季之などの、所謂「社会派推理小説」が多かった。これらの作品群はミステリーでありな…

古本夜話521 吉本隆明、武井昭夫『文学者の戦争責任』と淡路書房

これは戦後の出版に属するし、時代もテーマも飛んでしまうので、この連載に書くべきか、少しばかり迷ったのだが、主たる出版物に関して吉本隆明と併走した宮下和夫へのインタビュー『弓立社という出版思想』(論創社)がようやく上梓されたこともあって、こ…

古本夜話520 蘆田伊人と『大日本地誌大系』

前回の後藤朝太郎野『文字の史的研究』を確認するために、十数年ぶりに社史の『雄山閣八十年』を再読し、やはり昭和円本時代に『大日本地誌大系』全四十巻を刊行していることをあらためて知った。ただ社史にはまとまった言及はみられず、戦前の講座、全集本…

出版状況クロニクル91(2015年11月1日〜11月30日)

出版状況クロニクル91(2015年11月1日〜11月30日) 15年10月の書籍雑誌の推定販売金額は1227億円で、前年比7.8%減。 その内訳は書籍が588億円で、前年比2.5%減、雑誌は639億円で同12.1%減、そのうちの月刊誌は12.6%減、週刊誌は10.1%減。 この月刊誌、…