出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

混住社会論116 ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』(原書、一八八三年、論創社、二〇〇二年)

百貨店の創立とともに、歴史上はじめて消費者が自分を群衆と感じ始める。(かつては彼らにそれを教えてくれたのは欠乏だけであった。)それとともに、商売のもっている妖婦めいた、人目をそばだたせる要素が途方もなく拡大する。 ベンヤミン『パサージュ論』…

古本夜話499 池田宜政と『修養全集』

昭和円本時代の講談社の『講談全集』については本連載486で既述したが、それと同時期にもひとつの円本『修養全集』も刊行されていた。こちらも昭和三年から翌年にかけて、全十二巻が刊行され、総発行部数は三百万部に達したとされている。これらの『講談…

古本夜話498 南洋一郎と『怪盗ルパン全集』

前回の講談社の『少年倶楽部』における多彩な物語のかたわらに、翻訳探偵小説も対置としておくべきであろう。それは私たち戦後世代の読書とダイレクトにつながっているからだ。松村喜雄の「フランス・ミステリーの歴史」、及び日本における翻訳史をテーマと…

混住社会論115 M・M・ジンマーマン『スーパーマーケット』(商業界、一九六二年)

合衆国が消費社会の典型(パラダイム)である。 ロザリンド・H・ウィリアムズ『夢の消費革命』(吉田典子他訳、工作舎) 拙著『〈郊外〉の誕生と死』において、欧米と日本の消費社会化の時期に言及し、イギリスやフランスや日本が一九七〇年前後であったのに…

古本夜話497 講談社と『少年倶楽部』

小山勝清の「彦一頓智ばなし」は柳田門下にいた頃、故郷の球磨地方を始めとする九州の民話に関して調べたことに端を発するとされている。しかしそれだけでなく、立川文庫の『一休禅師頓智奇談』などによって全国的に広まっていた頭のいい少年によるトリック…

古本夜話496 堤糸風と『講談全集』

講談社の『少年倶楽部』の編集長だった加藤謙一の回想記『少年倶楽部時代』に、円本時代の『講談全集』をめぐる思いがけないエピソードが記されている。戦後における『講談全集』の焼直し出版が東都書房設立のきっかけとなったことは既述したし、私がインタ…

混住社会論114 『大和ハウス工業の40年』(同編集委員会、一九九五年)

一九七〇年代前半にコンビニやファストフードは都市の内側において誕生し、その後半から郊外化していった。それらはストリートビジネスからロードサイドビジネスへと変容することで、八〇年代の郊外消費社会の隆盛に不可欠な装置となり、その機能システムと…

古本夜話495 人物往来社『考証江戸事典』

村雨退二郎が歴史文学研究会を主宰し、南條範夫もその会員だったことは既述した。村雨の死の五年後に当たる昭和三十九年に南條範夫編『考証江戸事典』が人物往来社から出された。 これは南條範夫が「あとがき」で記しているように、村雨の遺稿を整備編纂した…

[古本夜話] 古本夜話494 南條範夫『駿河御前試合』と山口貴由『シグルイ』

村雨退二郎の歴史考証随筆『史談蚤の市』や『史談あれやこれ』(いずれも中公文庫)は、新しい歴史文学を構想するにあたって大きな影響を受けた三田村鳶魚の衣鉢を継ぎ、これまでの時代小説に描かれている間違った歴史事物について、多くの言及に及んでいる。…

混住社会論113 安土敏『小説スーパーマーケット』(日本経済新聞社、一九八一年)とテーラー『科学的管理法』(産業能率短期大学出版部、一九六九年)

(講談社文庫 上) (下) 続けて言及してきたリッツアの『マクドナルド化する社会』の中で、「マクドナルド化」の先駆としてテーラーの科学的管理法やベルトコンベアによる大量生産のフォードシステムなどが挙げられていた。ここでは前者の科学的管理法を取…

出版状況クロニクル87(2015年7月1日〜7月31日)

出版状況クロニクル87(2015年7月1日〜7月31日) 15年6月の書籍雑誌の推定販売金額は1188億円で、前年比4.6%減。 その内訳は書籍が550億円で、0.6%増、雑誌は638億円で8.8%減、そのうちの月刊誌は7. 2%減、週刊誌は14.6%減。 書籍が前年を上回ったのは送…