出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話595 伊藤書店「青年群書」、赤木健介『読書案内』、古在由重『戦中日記』

伊藤書店に関して、もう一編続けてみる。それは表紙には記載がなく、背表紙も薄れていて出版社名がわからなかったのであるが、開いてみると、それが伊藤書店の刊行だと判明したからだ。その書名は『読書案内』、それは「青年群書」というシリーズの一冊で、…

古本夜話594 伊藤書店、石母田正『中世的世界の形成』、小山弘健他『日本産業機構研究』

日本評論社や企画院絡みの出版物にふれてきたが、やはり両者の近傍にあったと思われる出版社についても取り上げておきたい。それは伊藤書店である。この版元を知ったのは石母田正の最初の著作『中世的世界の形成』の初版が、昭和二十一年に伊藤書店から刊行…

古本夜話593 昭和研究会著『労働新体制研究』

昭和研究会は近衛文麿と一高時代の同級生で、彼を首相の座につかせようとする後藤隆之助によって、近衛のシンクタンク的団体として立ち上げられ、正式には昭和十一年に発足している。それは前回の同十二年の企画院の設立とほぼ時を同じくしていて、当然のこ…

古本夜話592 菊地春雄『ナチス戦時経済体制研究』、東洋書館「労務管理全書」、桐原葆見

本連載589のところで挙げた古書目録に、昭和十六年刊行の菊地春雄『ナチス労務動員体制研究』があり、出版社は東洋書館だった。これは未見だが、同じ著者、同じ出版社の『ナチス戦時経済体制研究』は入手している。奥付を見ると、昭和十五年発行、十七年…

古本夜話591 岩崎徹太と木曜会

前回ふれた慶応書房と岩崎書店を通じ、戦前から戦後にかけて出版に携わってきた岩崎徹太は出版業界において、とても重要な人物であり、多くの出版インフラとバックヤードの形成に貢献している。しかし岩崎書店が児童書の版元という事情ゆえなのか、現在では…

古本夜話590 慶応書房と加田哲二『戦争本質論』

前回、及び本連載565でふれた岩崎徹太の慶応書房も、バジーリイ『ソヴエート・ロシア』(岡田篤郎訳)、リヤシチェンコ『ロシヤ経済史』(東健太郎訳)といった左翼出版物を刊行するかたわらで、多くのドイツ関連書も出している。それらを後者の巻末出版…

古本夜話589 長守善『ナチス経済建設』

本連載582で、中絶してしまったが、昭和十年に刊行され始めた日本評論社の『ムッソリーニ全集』について、このような出版傾向は日本評論社だけでなく、ファシズムやナチズム関連本が多く刊行されるようになったとの美作太郎の証言を紹介しておいた。私も…

古本夜話588 茅原茂と日本評論社前史

本連載581から美作太郎の『戦前戦中を歩む』や石堂清倫の『わが異端の昭和史』などを参照しながら、戦前において社会科学書の重要な出版社だったと見なせる日本評論社に関して、断続的にふれてきた。まだ何冊か、戦前の日本評論社の単行本が残されている…

古本夜話587 矢内原忠雄『南洋群島の研究』

本連載584で、鶴見祐輔が設立した太平洋協会は、彼自身も関係していた太平洋会議や太平洋問題調査会の延長線上にあるのではないかという推測を述べておいた。また同580において、東亜研究所の「東研叢書」として、米太平洋問題調査会編『太平洋地域の…

古本夜話586 エドモンド・ウィルソン『金髪のプリンセス』

これは戦後の出版になってしまうけれど、いつか書こうと思いながらも、なかなか機会が得られず、二十年以上が過ぎてしまっているので、ここで書いておきたい。それは前回に六興出版部と吉川晋にふれたからで、その一冊は昭和三十六年に吉川の手により、六興…

出版状況クロニクル101(2016年9月1日〜9月30日)

出版状況クロニクル101(2016年9月1日〜9月30日) 16年8月の書籍雑誌の推定販売金額は1042億円で、前年比4.7%減。 書籍は482億円で、同2.9%減、雑誌は559億円で、同6.2%減。 雑誌の内訳は月刊誌が450億円で、同7.7%減、週刊誌は109億円で、同0.1%増。 …