出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話605 寺島徳治、文理書院、『人生手帖』

これは日本評論社と直接の関係はないのだけれど、文理書院についても書いておきたい。それは美作太郎が『戦前戦中を歩む』の中で、前回の千倉書房にふれた際に、「序でながら、その後の千倉書房の編集部からは、文芸評論家の瀬沼茂樹や、『人生手帖』の創始…

古本夜話604 千倉書房、白柳秀湖、籠山京『勤労者休養問題の研究』

前々回の大畑書店の他にも、日本評論社から独立して出版を始めた者もいて、それは千倉豊である。彼は『出版人物事典』にも立項されているけれど、美作太郎に語らせたほうがいいだろう。美作は千倉の写真を掲載し、『戦前戦中を歩む』の中で、次のように述べ…

古本夜話603 服部之総『黒船前後』と国際文化情報社『画報近代百年史』

前回、服部之総の『黒船前後』の書名を挙げただけで、その内容にふれなかったこともあり、服部の軌跡を含め、ここで書いておくことにしよう。『黒船前後』は戦後になって三和書房、角川文庫版が出され、昭和四十一年に増補の上で筑摩叢書、五十六年には新編…

古本夜話602 大畑達雄と大畑書店

前々回、『唯物論研究』の第二〇号だけが大畑書店を発行所として出されたことにふれておいた。 (『戦前戦中を歩む』) 大畑書店は本連載588でもその名前を挙げた大畑達雄が立ち上げた出版社である。彼は日本評論社の翻訳者、編集長だった。美作太郎は『戦…

古本夜話601 木星社書院と瀬沼茂樹『現代文学』

実は最近になって、古本屋の店頭で福田久道の木星社書院の単行本を見つけたので、前回の『唯物論研究』の発行とも関連しているはずだし、ここで書いておこう。それは瀬沼茂樹の『現代文学』で、昭和八年一月の出版である。『唯物論研究』創刊号が七年十一月…

古本夜話600 『唯物論研究』と福田久道

唯物論研究会や「唯物論全書」「三笠全書」に関しては三笠書房との関連で、後にまとめて言及するつもりでいたが、本連載594、595、596と三回続けてふれ、小山弘健、赤木健介、古在由重、式場隆三郎といったメンバーも取り上げてきたので、ここで唯…

古本夜話599 小山書店版『チャタレイ夫人の恋人』と「チャタレイ裁判」

前々回、『チャタレイ夫人の恋人』の健文社版は未見だと既述したけれど、戦後の小山書店版は入手している。確認してみると、これは『ロレンス選集』第一、第二巻として、昭和二十五年四、五月に上下巻で刊行されたもので、このチャタレイ夫人の恋人の翻訳出…

古本夜話598 伊藤整『ロレンス篇』、『世界文豪読本全集』、春山行夫

昭和十年代初頭の健文社によるロレンスの伊藤整訳『チャタレイ夫人の恋人』を始めとする作品の翻訳は、そのまま三笠書房の同十一年から刊行の『ロレンス全集』へと継承されたと思われる。だがそれは『チャタレイ夫人の恋人』を含め、五巻ほど出たところで中…

古本夜話597 健文社とロレンス『恋愛論』『チャタレイ夫人の恋人』

前々回、伊藤書店の伊藤長夫のプロフィルは定かでないけれど、健文社の役員を務めた後、伊藤書店を興したことを既述しておいた。そこで続けて健文社にもふれておこう。幸いにして健文社の鮎川秀三郎に関しては、出版タイムス社編『日本出版大観』(昭和五年…

古本夜話596 唯物論研究会と式場隆三郎『サド侯爵夫人』

前回、伊藤書店の「青年群書」の一冊が式場隆三郎の『これからの結婚』で、彼もまた唯物論研究会のメンバーだったことを既述しておいた。しかしそれは初めて知る事実で、式場に関しては『日本近代文学大事典』の次のような立項に沿う知識しか持ちえていなか…

出版状況クロニクル102(2016年10月1日〜10月31日)

出版状況クロニクル102(2016年10月1日〜10月31日) 16年9月の書籍雑誌の推定販売金額は1374億円で、前年比2.9%減。 書籍は717億円で、同3.2%減、雑誌は657億円で、同2.6%減。 雑誌内訳は月刊誌が545億円で、同2.0%減、週刊誌が112億円で、同5.8%減。 …