2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧
前回は井上哲次郎の『釈迦牟尼伝』だったが、それらの仏教書ルネサンスの動向に併走するように、明治四十五年に聚精堂から津田敬武の『釈迦像の研究』が出されている。これは古代から近代に至る釈迦像を収集し、その変遷を比較研究した一書で、具体的にそれ…
やはりどうしても国土計画のことが気にかかるので、もう一回書いてみる。 本間義人は『国土計画を考える』(中公新書)において、国土計画は「時の政治権力の最大の計画主題(つまり国策)実現のための手段として利用される」機能を有し、「時の国家権力の意…
かなり飛んでしまったが、本連載512、513、514などで続けてふれてきた仏教書の光融館や井冽堂と並んで、明治三十年代にやはり仏教書版元として文明堂がある。この出版社は、前回の井冽堂が加藤咄堂や南条文雄の民衆啓蒙教化本を柱にしていたように…
これは本連載170でもふれていることだが、大正文学や思想を考察する上で、筑摩書房から出るはずだった『大正文学全集』が未刊に終わったことは本当に残念至極というしかない。同じく筑摩書房の『明治文学全集』を抜きにしては、もはや明治文学や思想を語…
これは拙著『〈郊外〉の誕生と死』でも記しておいたことだが、一九五〇年代から六〇年代にかけて、私はずっと農村に住んでいた。当時の村は商品経済、つまり消費生活とは無縁に近く、それらはかなり離れた町で営まれているものに他ならず、何かを買うために…
前回の宮島新三郎と同様に、大正時代の英文学者、文芸評論家だった厨川白村も四十三歳で早逝している。それは鎌倉での関東大震災時の津波にさらわれたことによる死だった。厨川も残念なことに谷沢永一の『大正期の文芸評論』で取り上げられていないし、やは…
本連載では大正時代の出版物に言及することをひとつの目的としているし、このところずっと小説だけでなく、戯曲や旅行などにもふれてきた。だがこの際だから、ここで大正文学全体の位相を考えてみたい。私の場合、主として臼井吉見の『大正文学史』(筑摩書…
(第一部) (第二部) 本連載123『アメリカ教育使節団報告書』で、私もその一人であるオキュパイド・ジャパン・ベイビーズ、つまり占領下に生まれた子供たちが遭遇せざるを得なかったアメリカの影に覆われた教育状況に言及しておいた。だが教育状況だけで…
これは少しばかり番外編という色彩も帯びるけれども、本連載547などに関連し、しばらくぶりに『博文館五十年史』に目を通したこともあり、ここでその鉄道書や旅行書などについても記しておく。それらも大正時代を始まりとしているからだ。若い頃はまった…
前回『日本戯曲全集』にふれ、その箱文字が恩地孝四郎によるもので、これが同じく春陽堂の『明治大正文学全集』とも共通していることを指摘しておいた。 それに関連して装幀家の真田幸治の「雪岱文字の誕生―春陽堂版『鏡花全集』のタイポグラフィ」(『タイ…
出版状況クロニクル96(2016年4月1日〜4月30日)16年3月の書籍雑誌の推定販売金額は1816億円で、前年比3.4%減。 書籍は1063億円で、同2.5%減、雑誌は753億円で、同4.7%減。 雑誌のうちの月刊誌は630億円で、同3.6%減、週刊誌は123億円で、9.9%減だが、3…