2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧
前回の三木清が編集に携わった河出書房の『廿世紀思想』全十一巻を一冊だけ持っている。それは半世紀近く前に古本屋で購入したもので、第四巻に当たる。とりあえず、全巻の明細とその「概論」を担当している執筆者名を示しておく。ただし第十一巻は三木の「…
昭和十六年に日本評論社から刊行された三木清編『新版現代哲学辞典』が手元にある。菊判上製、二段組六三二ページの裸本だが、おそらく箱入だったと思われる。これは「新版」とされているけれど、「旧版」がどこから出されたのかは定かでない。三木にしても…
日本評論社の出版物で最も印象的なのは『明治文化全集』全二十四巻である。といっても全巻を揃えておらず、昭和二年から五年にかけて出された最初の円本版は第二巻「正史篇」と第六巻「外交篇」の二冊だけで、その他は戦後の昭和三十年に刊行された改版の六…
本連載586などでふれた六興出版部の戦前の書籍を見つけたので、これも書いておきたい。それは吉川英治の『草莽寸心』で、昭和十九年五月初版、九月再版、部数一万部とあり、発行者はこれも本連載607で言及した小田部諦となっている。『草莽寸心』は並…
火野葦平の『麦と兵隊』と並ぶベストセラーとして、 棟田博の『分隊長の手記』があり、その続々編というべき『台児荘』まで三作が刊行されている。 (『棟田博兵隊小説文庫』版)上田広や日比野志朗と異なり、棟田は戦後に『拝啓天皇陛下様』(講談社)を出し…
本連載618の日比野志朗のところで、日比野や火野葦平と並んで上田広も「帰還作家」として文名をあげたと書いておいた。上田も陣中小説『黄塵』(改造社、昭和十三年)や『建設戦記』(同、同十四年)が評判作となったとされる。それもあって、これまでず…
これは小説でないけれど、前回の日比野士朗『呉淞クリーク』と刊行を同じくして、やはり昭和十四年に中央公論社から林芙美子の『北岸部隊』が出版されている。 昭和十三年八月の支那事変における漢口攻略戦に伴い、林は従軍ペン部隊の一員として上海に派遣さ…
前々回、『猶太人ジユス』を取り上げたこともあり、同じく中央公論社の小説、それに関連する何編かをはさんでおきたい。それは昨年の十月上旬に刊行した北村正之、河津一哉『「暮しの手帖」と花森安治の素顔』(「出版人に聞く」シリーズ20、論創社)に関連…
前回の谷譲次訳『猶太人ジユス』に「不思議な異人」や「通り魔のやうな怪人」のメタファーとして、「漂泊(さまよ)へる猶太人」という言葉が何度も使われていた。これは原文を確認していないけれど、ウージェーヌ・シューの『さまよえるユダヤ人』(小林龍雄…
続けて日本におけるユダヤ人問題にふれてきたが、昭和五年に中央公論社から谷譲次を訳者とするフオイヒトワンゲルの『猶太人ジユス』が刊行されている。 しかしこの四六判七〇〇ページに及ぶ大部の翻訳『猶太人ジユス』は、当時の谷=林不忘=牧逸馬の多忙な…
出版状況クロニクル104(2016年12月1日〜12月31日) 16年11月の書籍雑誌の推定販売金額は1159億円で、前年比1.2%増。 書籍は531億円で、同4.9%増、雑誌は628億円で、同1.7%減。 雑誌内訳は月刊誌が522億円で、同0.3%増、週刊誌が105億円で、同10.5%減。…