出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話674 加藤咄堂『大死生観』、井冽堂、積文社

本連載671で、加藤拙堂が要職にあった上宮教会の出版部が井冽堂で、その発行者山中孝之助が丙午出版社の創業メンバーであり、明治四十二年に亡くなったことを既述しておいた。それならば、井冽堂のほうはどうなったのだろうか。同じく書籍で比較してみる…

古本夜話673 丙午出版社と木村泰賢『原始仏教思想論』

ここに丙午出版社の書籍が二冊あるので、それらにもふれておきたい。その二冊は木村泰賢『原始仏教思想論』と新井石禅『修道禅話』である。両方とも裸本だが、いずれも大正時代の出版で、前者は菊判上製の専門書、後者はB6判上製の禅講話書といっていいだろ…

古本夜話672 大日本雄弁会『高嶋米峰氏大演説集』

本連載669の境野哲も同様だったとされる。その事実を伝えるように、『高嶋米峰氏大演説集』という一冊が編まれ、昭和二年に大日本雄弁会から刊行されている。その「序に代えて……(雄弁私見)」で、米峰は自らが雄弁家の天性を備えていないことを知ってい…

古本夜話671 高嶋米峰と丙午出版社

新仏教運動と出版に言及するのであれば、境野哲や杉村縦横(楚人冠)と同様に、『新仏教』編輯員だった高嶋玉虬=高島米峰にもふれなければならない。それに新仏教運動に寄り添う出版の第一人者として高嶋を挙げることに誰も異存はないと思われるからだ。そ…

古本夜話670 今北洪川『禅海一瀾』

前回は森江書店の、発行者を森江佐七とする麻生区飯倉町の森江本店の境野哲『印度仏教史綱』を取り上げたが、今回は本郷区春木町の森江英二の森江分店の書籍にもふれてみたい。後者が前者の養子で、独立して書店兼出版社を営んでいることも既述したばかりだ…

古本夜話669 境野哲『印度仏教史綱』と森江書店

新仏教運動にはずっとふれてきた世界文庫刊行会だけでなく、多くの出版社が併走していたので、それらもトレースしてみる。『新仏教』の発行者兼編輯者が堺野哲であることは本連載651で既述したが、彼は『日本近代文学大事典』に境野黄洋として立項されて…

古本夜話668 川辺喜三郎と「フリーメーソンリー」

しばらく続けて世界文庫刊行会の『世界聖典全集』とその別巻ともいうべき『世界聖典外纂』に関してふれてきたが、とりあえず終えるに当たって、少し異なる最後の一片を付け加えておきたい。それは川辺喜三郎の「フリーメーソンリー」についてである。 どうし…

古本夜話667 杉浦貞二郎と「基督教各派源流」

大東亜戦争下の昭和十六年に思想統制を目論んだ宗教団体法により、合同教会としての日本基督教団が成立した。しかし戦後は宗教団体法が廃止されたのだが、大半の宗派がそこにとどまったことで、キリスト教宗派はまとめられたような印象を与えてしまう結果を…

古本夜話666 シュタイナー『三重組織の国家』と浮田和民

やはり『世界聖典外纂』には宇井伯壽による「神智教」も収録されている。宇井は高楠順次郎門下のインド哲学や仏教学の碩学として知られ、三島由紀夫も『暁の寺』を書くに当たって、宇井の全六巻に及ぶ『印度哲学研究』(岩波書店)などを拳々服膺したと伝え…

古本夜話665 佐伯好郎『景教碑文研究』

少しばかり飛んでしまったが、本連載655の『世界聖典外纂』の佐伯好郎による「景教」は、『景教碑文研究』のリライト版とも考えられるので、それを簡略に見ておきたい。同653のゴルドン夫人の『弘法大師と景教』刊行の二年後の明治四十四年に、佐伯好…

出版状況クロニクル109(2017年5月1日〜5月31日)

17年4月の書籍雑誌の推定販売金額は1121億円で、前年比10.9%減。 送品稼働日が1日少なかったこと、返品の増加が主たる要因だが、2ケタマイナスは16年10月以来である。 書籍は550億円で、同10.0%減、雑誌は570億円で、同11.9%減。 雑誌の内訳は月刊誌が466…