出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話695 畦上賢造訳『自助論』と内外出版協会

前回、これも言及できなかったけれど、山室軍平の『私の青年時代』の中に、活版小僧として働くかたわらで、勉強と読書にいそしんだことが語られ、次のような記述にも出会うのである。それは明治二十年頃だった。 其の頃私は又スマイルスの「自助論」(中村敬…

古本夜話694 山室軍平『私の青年時代』と救世軍

これは前回ふれなかったが、金森通倫『信仰のすゝめ』の巻末広告には山室軍平の『青年への警告』が掲載されていたし、星野天知の『黙歩七十年』には思いがけずに山室が伝道仲間だったことが記されていた。金森と同様に、山室に関しても、まず『世界宗教大事…

古本夜話693 金森通倫『信仰のすゝめ』と「大正伝道叢書」

ずっと新仏教運動と出版に関してふれてきたけれど、キリスト教においても、大正期は大いなる伝道の時代だったと思われる。 『信仰のすゝめ』という一冊がある。これが福澤諭吉のベストセラー『学問のすゝめ』(岩波文庫)のタイトルに由来していることはいう…

古本夜話692 金井為一郎『サンダー・シングの生涯及思想』と東光社

前々回ポール・ケラスの八幡関太郎訳『仏陀の福音』と同様に、これも長い間よくわからない一冊があった。それは 金井為一郎の『印度の聖者 サンダー・シングの生涯及思想』で、大正十三年十二月に初版が出され、入手しているのは十四年十二月の第九版である…

古本夜話691 ポール・ケーラス『悪魔の歴史』

前回のポール・ケラス=ケーラスだが、平成六年になって、未邦訳の『悪魔の歴史』(船木裕訳、青土社)が刊行されている。これは「悪魔学」の古典としての翻訳とされているが、それもあってか、正面からの言及を見ていないので、ここでふれておきたい。それ…

古本夜話690 ポール・ケラス、八幡関太郎訳『仏陀の福音』

前回のシカゴ万国宗教大会に関連して、もう一編書いてみる。大会の書記官長を務めたのがポール・ケーラスで、それをきっかけにして釈宗演は親交を結ぶようになり、釈は鈴木貞太郎=大拙をケーラスのもとに送ることになったのである。大拙は明治三十年に渡米…

古本夜話689 釈宗演、シカゴ万国宗教大会、佐藤哲郎『大アジア思想活劇』

本連載670で釈宗演が今北洪川の弟子にして、鎌倉円覚寺で、夏目漱石や杉村楚人冠の参禅に寄り添ったことを既述した。釈については『日本近代文学大事典』に立項が見えるので、まずそれを示す。 釈 宗演 しゃくそうえん 安政六・一二・一八~大正八・一一…

古本夜話688 ウォーレス『馬来諸島』と窪田文雄『南洋の天地』

前回、『南方年鑑』を取り上げたこともあり、ここで南洋協会に関してもふれておきたい。 この南洋協会から昭和十七年にA・R・ ウォーレスの『馬来諸島』が刊行されている。彼は『岩波西洋人名辞典』に立項が見出せるので、まずはそれを示す。 ウォーレス Wal…

古本夜話687 東邦社『南方年鑑』

戦前の地理学に関連して、三編ほど古今書院にふれてきたが、もう少し南進論絡みを続けてみたい。大東亜戦争下における南進論を象徴するような一冊がある。それは『南方年鑑』で昭和十八年版として、日本橋区本町の東邦社から刊行されている。年度版だが、こ…

古本夜話686 北原白秋『橡』、「多磨叢書」、靖文社

前回の「アララギ叢書」と併走するようにして、同じく歌集を中心とし、出版社も重なる「多磨叢書」が刊行されていた。古今書院と「アララギ叢書」にふれる機会を得たこともあり、これも続けて取り上げておきたい。この叢書を知ったのは、昭和十八年に靖文社…

古本夜話685 村田利明『早瀬』と川瀬清『アララギ叢書解題』

やはり前々回の古今書院の橋本福松の立項の中に、詩歌物も出版したという記述があった。その詩歌物を二冊ばかり入手していて、それらはいずれも歌集で、斎藤茂吉『寒雲』(昭和十五年)、村田利明『早瀬』(同十六年)である。 後者の巻末には斎藤茂吉、土屋…

出版状況クロニクル111(2017年7月1日〜7月31日)

17年6月の書籍雑誌の推定販売金額は1103億円で、前年比3.8%減。 書籍は541億円で、同0.2%減、雑誌は562億円で、同7.0%減。 雑誌の内訳は月刊誌が459億円で、同6.3%減、週刊誌は102億円で、同9.6%減。 返品率は書籍が41.6%、雑誌は44.8%で、月刊誌は45…