2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧
昭和十年代には児童書の分野においても、フランス文学の新訳が試みられていた。それはエクトル・マロの『家なき児』で、しかもその訳者は鈴木三重吉である。実はそのことをまったく知らず、それは浜松の時代舎で、童話春秋社から昭和十六年に出されたA5判上…
本連載829で、生田長江訳『死の勝利』が易風社から刊行予定だったという佐藤義亮の証言を引いておいた。 その易風社の本を一冊だけ持っていて、それは永井荷風の『歓楽』で、明治四十二年に刊行されている。ただこの四六判の一冊は初版本だけれども、ほと…
前回、生田長江が『文学入門』で挙げた紅葉、一葉、樗牛の三人の全集はいずれも博文館から出されていて、明治後半が博文館の時代だったことを告げている。 本連載271で『一葉全集』、前回は『樗牛全集』を取り上げたこともあり、今回は『紅葉全集』にふれ…
前回はふれられなかったけれど、谷沢永一は「生田長江」(『大正期の文芸評論』所収、中公文庫)において、生田の『文学入門』は「通俗的読者相手の請負仕事」で、「年少子弟に寄せる砂をかむような処世上の教訓に終わっている」と批判している。 しかし生田…
前回、新潮社が大正時代に入って、本格的な外国文学の翻訳出版を企画し、「近代名著文庫」を創刊したことを既述しておいた。佐藤義亮は「出版おもひ出話」(『新潮社四十年』所収)で、次のように述べている。 (「近代名著文庫」、『サフオ』) 新潮社が翻…
続けて新潮社の『世界文学全集』などに言及してきたが、それは大正時代の「近代名著文庫」に起源が求められる。だが「近代名著文庫」は『日本近代文学大事典』に明細が掲載されていないので、『新潮社四十年』からリストアップしてみる。 1 ダンヌンツイオ …
やはり昭和十年代半ばに「ノーベル賞文学叢書」が刊行されている。これはマルタン・デュ・ガールの『ジャン・バロアの生涯』しか入手していないし、その巻末に三冊の既刊が記載されているのを見ているだけだが、最終的に全十八巻で完結したようだ。 (『ジャ…
昭和十年代半ばに、新潮社も新たな外国文学シリーズを立ち上げている。それは『世界新名作選集』で、まずそのラインナップを挙げてみる。 1 ヘルマン・ヘッセ 『放浪と懐郷』(高橋健二訳) 2 ドリュ・ラ・ロッシェル 『夢見るブルジョア娘』(堀口大學訳) …
河盛好蔵は『新潮社七十年』において、創業者の佐藤義亮の企画編集による『世界文学全集』の成功が、大出版社としての基礎を固めたと述べている。これは昭和二年から七年にかけての第一期全三十八巻、第二期全十九巻に及ぶ六年間にわたる出版であった。この…
ずっと辰野隆にふれたからには、その盟友である山田珠樹を取り上げないわけにはいかないだろう。山田と結婚し、同じくフランス文学者の山田[ジャク]をもうけた森茉莉の証言によれば、二人の関係はホモソーシャルな秘密結社のようだったとされる。 しかも山…
18年8月の書籍雑誌推定販売金額は926億円で、前年比5.2%減。 書籍は480億円で、同3.3%増。雑誌は446億円で、同12.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌が364億円で、同13.1%減、週刊誌は82億円で、同11.7%減。 返品率は書籍が40.2%、雑誌が45.1%で、月刊誌は45.7%、週…