出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話765 里見弴『愛と智と』

前回、『実業之日本社七十年史』における、昭和十年代半ばからの文芸書出版の隆盛の記述を引き、作家と書名を挙げておいた。だが名前だけで、書名にふれていない作家もあった。その一人が里見弴で、彼は昭和十六年に小説『愛と智と』を刊行している。 戦前の…

古本夜話764 実業之日本社と保田与重郎『美の擁護』

前回、本間久雄は保田与重郎に日本の美学を見出し、それゆえに東京堂に『戴冠詩人の御一人者』の出版を推奨したのではないかとの推測を述べておいた。そのことをタイトルが物語るように、保田は昭和十六年に『美の擁護』というエッセイ集を上梓している。 そ…

古本夜話763 東京堂、本間久雄、『日本文学全史』

前回ふれた芝書店の内情はともかく、保田与重郎にしても中村光夫にしても、印税はまとに得られなかったけれど、いずれも芝書店から最初の著書を出し、ともに第一回池谷信三郎賞を受賞したことによって、それなりのデビューを飾ったといっていいだろう。 さら…

古本夜話762 芝書店、ヴェルレエヌ『叡智』、中村光夫

あらためて『保田与重郎選集』(講談社、昭和四十六年)の第二巻を読み、彼の著書『日本の橋』が昭和十一年に芝書店から出され、その改版が十四年に東京堂から刊行されたことを教えられた。後者は棟方志功装幀の帙入小型本で、『東京堂の八十五年』に書影を…

古本夜話761 斎藤瀏『獄中の記』と『東京堂月報』

前回、保田与重郎の『戴冠詩人の御一人者』が昭和十三年に東京堂から刊行されていることを既述しておいた。 それを探していた際に、同じく東京堂刊行の斎藤瀏『獄中の記』と『防人の歌』が出てきた。前者は昭和十五年十二月発行、十六年五月四十九刷とあり、…

古本夜話760 保田与重郎『後鳥羽院』と思潮社

前回はふれなかったが、「新ぐろりあ叢書」には保田与重郎の『エルテルは何故死んだか』も含まれていた。その「新ぐろりあ叢書」と併走するように出された一冊、それも同じく装幀を棟方志功とする、保田与重郎の『後鳥羽院』も取り上げておきたい。それは昭…

古本夜話759 伊藤長蔵、「新ぐろりあ叢書」、田中克己『楊貴妃とクレオパトラ』

本連載757の田遊びではないけれど、早川孝太郎が昭和十七年に、『農と祭』をぐろりあ・そさえてから刊行している。手元にあるのは四六判の裸本で、表紙や箱装は見られないが、口絵写真に武田久吉による二葉の「道祖神祭りの御幣」が掲載されていることか…

古本夜話758 南江二郎『原始民俗仮面考』とレヴィ=ストロース『仮面の道』

本連載756や前回と同じ地平社書房の「民俗芸術叢書」がもう一冊出てきたので、これも付け加えておきたい。それは南江二郎『原始民俗仮面考』で、やはり以前に浜松の時代舎で購入したのだが、これが「民俗芸術叢書」の一冊だと思っていなかったのである。…

【出版状況クロニクル118】付記2

間接的に、議論の応酬もまったくなく、出版業界の言論の自由を圧殺する事態が生じた。 それゆえに、本クロニクルの継続の優先を選択したことを報告しておく。

古本夜話757 柳田国男『民謡の今と昔』と新井恒易『農と田遊びの研究』

前回、柳田国男の『民謡の今と昔』の内容にふれなかったので、それをここで書いておきたい。柳田は明治以降の民謡の主たる発祥は村の小さな子守娘の「口すさび」、すなわち子守唄にあったと推察している。それに影響を与えたのは、労働と祭が融合した田植唄…

【出版状況クロニクル118】付記

明らかに本クロニクルに対する3月6日付の大阪屋栗田の「ニュースリリース」に関して、それへの批判と懸念の問い合わせが相次いでいる。 これには出版業界の言論をめぐる重大な問題も含まれるし、また出版状況の流動性を見極める必要もあるので、次回のクロニ…

出版状況クロニクル118(2018年2月1日~2月28日)

18年1月の書籍雑誌の推定販売金額は929億円で、前年比3.5%減。 書籍は517億円で、同1.9%増。 雑誌は412億円で、同9.5%減。 書籍は4ヵ月ぶりのプラス、雑誌は5ヵ月連続の2ケタマイナスを免れたことになる。 その内訳は月刊誌が321億円で、同9.1%減、週刊誌は9…