出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話817 建設社と『ジイド全集』

前回、昭和十年代に入って招来した、第一書房と白水社を中心とするジイドの時代にふれたが、両社に先駆け、いずれも昭和九年に『ジイド全集』が建設社と金星堂から刊行されている。金星堂版は後述するつもりなので、ここでは建設社版を取り上げておきたい。…

古本夜話816 ジイドの時代と『ソヴエト旅行記』

やはり白水社のアンドレ・ジイドの『贋金つくり』(山内義雄訳)を入手している。これは昭和十年二月初版発行、十四年八月十三版と奥付に示され、順調に版を重ねているとわかる。『白水社80年のあゆみ』を繰ってみると、前々回も記述しておいたように、昭和…

古本夜話815 ポオル・モオラン『レヰスとイレエン』と伏字

前回の堀口大學訳『ドルヂェル伯の舞踏会』の「同じ訳者によりて」一覧に示したように、ポオル・モオランの『夜ひらく』『夜とざす』『恋の欧羅巴』の三冊は挙げられていたけれど、私が浜松の時代舎で入手している『レヰスとイレソン』の記載はなかった。こ…

古本夜話814 ラディゲ『ドルヂェル伯の舞踏会』と堀口大学

前回、長谷川郁夫の『堀口大學』における堀口、長谷川巳之吉の第一書房と東京、京都帝大仏文科の対立にふれたが、出版社の場合、そのような構図はあったにしても、フランス文学翻訳者は限られているし、売れる企画は耐えず追求されなければならない。 前々回…

古本夜話813 ヴァレリイ、堀口大学訳『文学論』と斎藤書店

前々回、堀口大学と第一書房によるポール・ヴァレリイの翻訳『詩論・文学』と『文学雑考』を挙げておいたが、これは戦後の昭和二十一年四月に斎藤書店から、合本『文学論』として復刻されている。第一書房の二冊は所持していないけれど、こちらは手元にある…

古本夜話812 河盛好蔵と白水社『キュリー夫人伝』

河盛好蔵の『河岸の古本屋』(毎日新聞社)所収の「著者略年譜」によれば、前回のヴァレリー『詩学叙説』の他に、昭和十三年にはジイド『コンゴ紀行』とエーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』 を翻訳刊行している。後者は川口篤、杉捷夫、本田喜代治との共訳で…

古本夜話811 ヴァレリー『詩学序説』と河盛好蔵

前回の林達夫『文芸復興』の戦前版が巻末広告に掲載されている一冊を入手している。それは昭和十三年に小山書店から刊行されたポール・ヴァレリーの河盛好蔵訳『詩学叙説』で、菊判一一四ページ、函入の堅牢にして瀟洒な本といっていいだろう。巻末広告には…

古本夜話810 フランス『舞姫タイス』と林達夫『文芸復興』

前回の全集の中にもあったアナトール・フランスの『舞姫タイス』は次のような物語である。 (『舞姫タイス』、白水社) この長編小説は四世紀のアレクサンドリアが栄えた時代を背景としている。原始キリスト教の苦行僧たちの若き指導者パフニュスは世俗生活…

古本夜話809 『アナトオル・フランス長篇小説全集』と『小さなピエール』

やはり昭和十年代後半に白水社から、『アナトオル・フランス長篇小説全集』が刊行されている。これは昭和十四年からの、同じく『アナトオル・フランス短篇小説全集』が全七巻の完結に続く企画で、全十七巻予定だったが、十冊が出されただけで中絶し、全巻の…

古本夜話808 太宰施門『ブゥルジェ前後』と髙桐書院

本連載799の辰野隆『仏蘭西文学』と同様に、太宰施門の『ブゥルジェ前後』も、戦前からの企画が戦後になって実際に刊行に至ったと考えられる。「序」の日付は昭和二十一年三月、発行は八月で、版元は発行者を馬場新二とする髙桐書院、住所は京都市中京区…

古本夜話807 金尾文淵堂と徳富健次郎・愛『日本から日本へ』

吉江孤雁や国木田独歩の著書を出した如山堂や隆文館が、金尾文淵堂や文録堂と並んで、春陽堂以後の「美本組」だったという小川菊松の『出版興亡五十年』の証言を、本連載801で紹介しておいた。私は小川菊松のいうところの「美本組」出版社にはあまり関心…

出版状況クロニクル123(2018年7月1日~7月31日)

18年6月の書籍雑誌推定販売金額は1029億円で、前年比6.7%減。 書籍は530億円で、同2.1%減。雑誌は499億円で、同11.2%減。 雑誌の内訳は月刊誌が406億円で、同11.5%減、週刊誌は92億円で、同9.6%減。 返品率は書籍が41.4%、雑誌が44.5%。 6月の大阪北部地震に…