出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話827 豊島与志雄訳『レ・ミゼラブル』と新潮社『世界文学全集』

辰野隆は『仏蘭西文学』の中で、フランス文学の重要な訳業として、豊島与志雄によるヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』を挙げているが、これがフランス語原書からの初めての大長編小説の翻訳だったからである。 まず『レ・ミゼラブル』は大正七年から八年…

古本夜話826 ゴンクウル『ジェルミニィ・ラセルトゥウ』

前回ふれたように、戦後を迎えての『ゴンクウルの日記』の翻訳刊行に伴い、ゴンクウル・ルネサンスというほどではないにしても、小説の『ジェルミニイ・ラセルトゥ』と『娼婦エリザ』が様々な版元から出されるに至った。前者は同タイトルで前田晃訳、平凡社…

古本夜話825 大西克和訳『ゴンクウルの日記』と鎌倉文庫

辰野隆は『仏蘭西文学』の中で、『ルナアル日記』とともに、『ゴンクウルの日記』を挙げ、フランス近代文学における「骨の髄まで文学者であつた人間のドキュマンとして、罕に見る宝庫」だと述べている。 (『ゴンクウルの日記』) だが『ルナアル日記』と異…

古本夜話824 青山出版社と岸田国士『生活と文化』

前回や本連載786の岸田国士『生活と文化』も出てきたので、これも取り上げておきたい。それは昭和十六年十二月に青山出版社から刊行されていること、また内容は先の『力としての文化』と重なり、大政翼賛会と文化の新体制に関する文章から構成されている…

古本夜話823 岸田国士訳『ルナアル日記』と『にんじん』

これまで昭和十年代におけるフランス文学翻訳ブームといったトレンドにふれてきたが、その中の一人がルナアルでもあった。それは本連載808のブールジェほどではないにしても、私たち戦後世代にとっては馴染みが薄い。『にんじん』の作者であることは承知…

古本夜話822 秦豊吉『伯林・東京』と岡倉書房

本連載819のピチグリリ『貞操帯』に序を寄せた丸木砂土が本名の秦豊吉で、昭和八年に岡倉書房から『伯林・東京』というエッセイ集を出している。冒頭にはまず「秦生」名による「小序」が置かれ、それは丸木名による艶笑随筆的なものとまったく異なる秦の…

古本夜話821 谷口武訳『現代仏蘭西二十八人集』とコント

前回のカルコの『モンマルトル・カルティエラタン』において、これを映画とすれば、カルコ主演で、共演が詩人でコント作家のピエール・マコルランだと既述しておいた。この「コント」に関して教えられたのは、柳沢孝子の「コントというジャンル」(『文学』…

古本夜話820 永田逸郎、フランシス・カルコ『モンマルトル・カルティエラタン』、春秋書房

昭和十年前後のフランス文学翻訳ブームは、これまで取り上げてきた全集に値する文学者たちばかりでなく、マイナーポエットにまで及んでいる。それは前回のピチグリリではないけれど、その典型を昭和八年に刊行されたフランシス・カルコの『モンマルトル・カ…

古本夜話819 ピチグリリ『貞操帯』と和田顕太郎

もう一冊、建設社の単行本を取り上げておく。それは前々回、書名を挙げなかったけれど、ピチグリリ作、和田顕太郎訳『貞操帯』である。これは昭和六年の刊行なので、建設社の創業の翌年の出版物に位置づけられる。 和田顕太郎は本連載791の『バルザック全…

古本夜話818 原久一郎訳『大トルストイ全集』と中央公論社

前回の建設社、及び河出書房や白水社のフランス文学全集類と競うように、昭和十一年から十四年にかけて、中央公論社から『大トルストイ全集』全二十二巻が刊行されている。しかもこれは原久一郎の個人訳によるもので、入手しているのは昭和十四年五月の第二…

出版状況クロニクル124(2018年8月1日~8月31日)

18年7月の書籍雑誌推定販売金額は919億円で、前年比3.4%減。 書籍は439億円で、同6.0%減。雑誌は480億円で、同0.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌が384億円で、同0.6%増、週刊誌は96億円で、同6.2%減。 月刊誌が前年を上回ったのは16年12月期以来のことだが、それ…