出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話868 パピニ『基督の生涯』

前回の原稿を書いてから、所用があり、静岡に出かけ、たまたま あべの古書店に寄ったところ、大木篤夫訳のパピニ『基督の生涯』後篇を見つけ、購入してきた。 それは大正十三年八月発行の初版だった。大木が『緑地 ありや』において、「東中野の家でパピーニ…

古本夜話867 大木惇夫と『世界大衆文学全集』

前回の大木惇夫の『緑地 ありや』の中に、やはり見逃せない出版史に関する証言があり、それにもふれておきたい。 大木は同僚だった本連載676の岡田三郎の勧めで、ロープシン作、青野季吉訳『われ青馬を見たり』を読み、その文体の新鮮さに驚き、文学に新…

古本夜話866 大木惇夫『緑地 ありや』と『豊旗雲』

詩人の大木篤夫=惇夫も大正時代に博文館に在籍していて、彼は戦後になって自伝ともいうべき『緑地 ありや』(講談社、昭和三十二年)を著わし、その時代を回想している。これは娘の宮田毬栄の評伝『忘れられた詩人の伝記』(中央公論社)のベースになってい…

古本夜話865 大日本雄弁会講談社編『新支那写真大観』

前回の博文館の『新青年』の特別増刊『輝く皇軍』ではないけれど、昭和十二年の支那事変の始まりを受け、それに関連する多くの出版物が刊行された。しかもそれらの戦記物は大小出版社を問わず、膨大な数量に及んでいるはずだ。しかし本連載で繰り返し既述し…

古本夜話864 水谷準、『新青年』、特別増刊『輝く皇軍』

本連載でも『新青年』編集長に関して、同94の森下雨村、87の横溝正史、95の延原謙、477の乾信一郎のことなどに言及してきているが、水谷準=納戸三千男はまだふれていなかった。それに本連載844の木々高太郎『人生の阿呆』も水谷によって見出さ…

古本夜話863 改造社『新日本文学全集』と『川端康成集』

鎌倉文庫のことなどから、少しばかり戦後に足を踏み入れてしまったけれど、ここで再び戦前へと戻らなければならない。それに鎌倉文庫の中心人物といえる川端康成の一冊があるからだ。その一冊とは『新日本文学全集』第二巻の『川端康成集』で、昭和十五年九…

古本夜話862 織田作之助『西鶴新論』と修文館

前回、『世界文学』の表紙目次にある織田作之助「ジュリアン・ソレル」にふれられなかったので、続けて織田に関しての一編を挿入しておきたい。 織田は大阪の下町に生きる人々を描いた『夫婦善哉』、及び豊田四郎監督、森繁久彌と淡島千景共演の同名映画によ…

古本夜話861 『世界文学』、世界文学社、柴野方彦

やはり本連載854などの『人間』と同じく、戦後の文芸雑誌としての『世界文学』がある。しかもこれはまったくの偶然だが、入手しているのは一冊だけだけれど、『人間』と同様の昭和二十一年十月号で、表紙には「6」とある。これは第6号を意味していると思…

古本夜話860 占領下の『婦人文庫』

これも鎌倉文庫が発行していた『婦人文庫』が一冊出てきたので、やはりここで書いておこう。それは昭和二十一年十一月刊行の第七号である。 木村徳三は『文芸編集者その跫音』において、『人間』創刊後の鎌倉文庫の昭和二十一年状況と雑誌創刊に関して、次の…

古本夜話859 高梨茂と中央公論社『荷風全集』

もう一編『断腸亭日乗』に関して続けてみる。昭和二十二年で扶桑書房主人についての言及は消え、昭和二十三年六月からは中央公論社の高梨氏の名前が頻出するようになる。そしてそれは昭和三十年以降は少なくなるにしても、荷風の死の三十四年まで絶えること…

古本夜話858 扶桑書房と永井荷風『勲章』

本連載856で、横光利一の戦後の遺作ともいうべき『夜の靴』を取り上げたので、永井荷風の戦後の出版にもふれておきたい。それは昭和二十二年に扶桑書房から刊行の小説・随筆集『勲章』が手元にあるからだ。 (『勲章』) 戦後を迎えて、荷風は扶桑書房か…

出版状況クロニクル128(2018年12月1日~12月31日)

18年11月の書籍雑誌推定販売金額は1004億円で、前年比6.1%減。 書籍は507億円で、同1.5%減。雑誌は496億円で、同10.4%減。 雑誌の内訳は月刊誌が411億円で、同9.9%減、週刊誌は85億円で、同12.6%減。 返品率は書籍が40.3%、雑誌が42.3%。しかも月刊誌は41.9%…