出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話889 岩田豊雄、『近代劇全集』、『悲劇喜劇』

前回の『娘と私』を読んでいて、あらためて獅子文六となる前の岩田豊雄が渡仏して、演劇に魅せられ、帰国後には岸田国士たちと新劇研究所を創設したり、円本の翻訳に携わっていたことを知った。それらのことは『娘と私』の中に、次のように具体的に述べられ…

古本夜話888 岩田豊雄『海軍』と獅子文六『娘と私』

火野葦平の『陸軍』に先駆けて、昭和十七年の『朝日新聞』に岩田豊雄の『海軍』が連載され、十八年二月に単行本として刊行されている。岩田はいうまでもなく、獅子文六の本名である。『朝日新聞出版局50年史』によれば、火野が公職追放されたことに対し、岩…

古本夜話887 火野葦平『麦と兵隊』から『陸軍』へ

大東亜戦争下の昭和十八年五月から十九年四月にかけて、『朝日新聞』に火野葦平の小説『陸軍』が連載された。それが単行本として刊行されたのは昭和二十年八月のことで、『朝日新聞出版局50年史』は次のように述べている。 『陸軍』(B6判・六八八ページ・五…

古本夜話886 『現代海洋文学全集』とグッドリッヂ『デリラ』

前回の海洋文化社の「海洋文学名作叢書」と同様に、本連載487で改造社の『現代海洋文学全集』にもふれておいた。しかしその際には『現代海洋文学全集』に関して未見であった。だがその後、それを二冊入手しているので、続けて書いておきたい。 書誌研究懇…

古本夜話885 齋藤忠『海戦』と海洋文化社

本連載487で、昭和十七年に海洋文化社から「海洋文学名作叢書」の一冊として刊行されたコンラッドの『陰影線』を取り上げておいた。 海洋文化社と発行者の中村正利に関しての詳細はつかめていないけれども、やはり昭和十七年刊行の齋藤忠『海戦』を入手し…

古本夜話884 高見順とバイコフ『ざわめく密林』

そういえば高見順も徴用され、南進していたことを思い出し、『高見順日記』(勁草書房、全九巻)を読んでみた。すると第一巻にバリ島やジャワの「渡南遊記」、タイの「徴用日記」、第二巻/上に「ビルマ従軍」が収録され、それらは昭和十六年から十八年にか…

古本夜話883 徳川義親、朝倉純孝『馬来語四週間』と大学書林

これも古本屋の均一台から拾ってきたものだが、大学書林の徳川義親、朝倉純孝『馬来語四週間』、本連載517の今岡十一郎『洪牙利語四週間』、同279の日本出版社の久田原正夫『タイ語の研究』を入手している。これらは大東亜共栄圏幻想の拡大に伴うよう…

古本夜話882 正木不如丘『法医学教室』

前回、アルスの『フロイド精神分析大系』の第九巻『洒落の精神分析』の訳者が正木不如丘であることを既述しておいた。この原タイトルは Der Witz und seine Beziechung zum Unbewussten とされているので、人文書院版『フロイト著作集』では、「機知―その無…

古本夜話881 フロイト、吉岡永美訳『トーテムとタブー』と啓明社

前回の長谷川誠也『文芸と心理分析』の刊行が、やはり春陽堂の『フロイド精神分析学全集』全十巻と併走していたことを既述しておいた。それは本連載82などでふれておいたように、長谷川、大槻憲二、対馬完治、矢部八重吉を訳者とするものだった。ただ当初…

古本夜話880 長谷川誠也『文芸と心理分析』

長谷川誠也といえば、明治三十年からゾラなどを紹介し、日本の自然主義文学を開拓していった文芸評論家とされ、『長谷川天渓文芸評論集』(岩波文庫)や『島村抱月・長谷川天渓・片上天弦・相馬御風集』(『明治文学全集』43、筑摩書房)が編まれている。ま…

古本夜話879 日本エスペラント学会、小坂狷二『エスペラント捷径』、彩雲閣

前回の土岐善麿の『外遊心境』にエスペラント語の訳文が収録されていることもあり、ここで日本エスペラント学会の出版物にもふれておきたい。それはこれも例によってだが、浜松の時代舎で、小坂狷二の『エスペラント捷径』なる「独習用・教師用」テキストを…

出版状況クロニクル130(2019年2月1日~2月28日)

19年1月の書籍雑誌推定販売金額は871億円で、前年比6.3%減。 書籍は492億円で、同4.8%減。 雑誌は378億円で、同8.2%減。その内訳は月刊誌が297億円で、同7.6%減、週刊誌は81億円で、同10.2%減。 18年12月の、2年1ヵ月ぶりのプラスである同1.8%増の反動の…