2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧
続けて澁澤龍彥『高丘親王航海記』が戦前の南方論を背景とする高丘伝説を継承していることにふれたが、その南方論に関して、どうしても取り上げておかなければならない作品がある。それは昭和九年の東京を舞台としているけれど、物語の主要な人物とコード、…
これまで本連載で言及してきた大東亜共栄圏や南進論などに関する大半が立項収録されている事典があり、それは前回の高丘親王も例外ではなく、次のように見出される。 真如法親王 金枝玉葉の御身を似つて今から千百年の昔、仏道の奥義を求められて御渡印の途…
本連載895などの周達観の『真臘風土記』を参考文献のひとつとして書かれた幻想綺譚があり、それは澁澤龍彥の遺作となった『高丘親王航海記』(文藝春秋)に他ならない。この作品は昭和六十年から六十二年にかけて『文学界』に掲載されて、同年の十月に単…
本連載894のアンリ・ムオ『タイ、カンボヂア、ラオス諸王国遍歴記』の訳者の大岩誠は、昭和十九年にもカンボジア関連書を翻訳している。それはグイ・ポレ、エヴリーヌ・マスペロ著『カムボヂァ民俗誌』で、個人訳ではなく、浅見篤との共訳である。大岩の…
ピエール・ロティの『アンコール詣で』は佐藤輝夫訳で、昭和十六年に白水社から刊行されている。訳者の「はしがき」には、「これが訳されて、今日南方問題の喧しい折柄、少しでも曾てのクメール文化の一端を日本の読者に知って貰うことが出来たら」との主旨…
本連載890のドラポルトの『アンコール踏査行』や同891のグロリエの『アンコオル遺蹟』に先駆けて、アンコールを訪れ、それを報告しているフランス人がいる。その人物はアンリ・ムオで、両書ばかりか、藤原貞朗の『オリエンタリストの憂鬱』でも挙げら…
前回のマルロオの『人間の条件』も、それをサブタイトルに付し、『上海の嵐』として、昭和十三年に改造社から刊行されている。ただそれは「大陸文学叢書」の一冊で、その明細は次のようなものだ。 1 ホバート 須川博子訳 『揚子江』 2 蕭軍 小田嶽夫訳 『第…
前々回の藤原貞朗の『オリエンタリストの憂鬱』第五章は「アンコール考古学の発展とその舞台裏(1)」と題され、サブタイトルに「考古学史の中のマルロー事件」が付されている。その「事件の概要」の記述もあるので、それを簡略にトレースしてみる。 一九二…
前回、ドラポルトによるアンコール・ワットに関する描写を引いておいたが、他あらぬその写真を箱の装丁に用いた一冊がある。それはヂヨルヂユ・グロスリエの、やはり三宅一郎訳『アンコオル遺蹟』で、昭和十八年に新紀元社から刊行されている。 このグロスリ…
少しばかり飛んでしまったが、本連載704などで証言されているように、大東亜戦争下において、アンコール関連の著作や翻訳の刊行も見ていた。それにはまず三宅一郎訳によるドラポルトの『カンボヂャ紀行』(青磁社、昭和十九年)が挙げられるが、『アンコ…
19年2月の書籍雑誌推定販売金額は1221億円で、前年比3.2%減。 書籍は737億円で、同4.6%減。 雑誌は473億円で、同0.9%減。その内訳は月刊誌が389億円で、同0.3%減、週刊誌は84億円で、同3.6%減。 雑誌のマイナスが小幅なのは、前年同月が16.3%という激減の影…