出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話910 刀江書院、小田内通敏『田舎と都会』、関根喜太郎

刀江書院から昭和十一年に小田内通敏の『田舎と都会』が刊行されている。その区付けには普及版とあるので、「はしがき」を確認してみると、昭和九年に元版が出されたようだ。しかもそれは「最初日本児童文庫の一篇として書かれたものであるが、今回刀江書院…

古本夜話909 ヴォルフ『民族文化史』、間崎万里、尾高豊作

前回のヴント『民族心理学』というタイトルにちなんでなのか、昭和九年に刀江書院からヴォルフの『民族文化史』という一冊が出されている。翻訳者は慶應大学教授で西洋史研究者の間崎万里である。彼は同書の巻末広告に見られるように、すでにシャール・リシ…

古本夜話908 ヴント『民族心理より見たる政治的社会』

前回の比屋根安定によれば、タイラー『原始文化』の所説はヴントの『民族心理学』へと継承されたこともあって、比屋根は後者も誠信書房から翻訳している。ただこれは全十九巻からなる『民族心理学』を要約した『民族心理学要論』の翻訳であるようだ。 (誠信…

古本夜話907  タイラー『原始文化』

前々回、画期的な写真集である熊谷元一『会地村』に関し、柳田国男からの言及がなかったことにふれたが、それは民俗、民族学の翻訳書も同様だと思われる。 (朝日新聞社版) 本連載755の棚瀬襄治『民族宗教の研究』や同758の南江二郎『原始民俗仮面考…

古本夜話906 熊谷元一と板垣鷹穂『古典精神と造形文化』

前回の『会地村』の出版に関して、熊谷元一は写真については板垣鷹穂、編集において本連載580の星野辰男を始めとする朝日新聞社出版局の人々に謝辞をしたためている。 だがそれだけでは『会地村』の成立と出版に至詳細な事情を把握できなかったといってい…

古本夜話905 熊谷元一『会地村』

前回の福田清人の『日輪兵舎』の奥付裏の新刊・重版案内に熊谷元一『会地村』を見出し、この長野県の「一農村の写真記録」もまた、大陸開拓の時代とパラレルに刊行された事実にあらためて気づいた。 (『会地村』、朝日新聞社版) といっても戦前版の『会地…

古本夜話904 「開拓文学叢書」と福田清人『日輪兵舎』

前回の「大陸叢書」と同時代に、やはり朝日新聞社から「開拓文学叢書」が出されている。それは「大陸叢書」と異なり、和田伝『大日向村』、福田清人『日輪兵舎』、丸山義二『庄内平野』の三冊だけで終わってしまったようだ。私にしても福田の『日輪兵舎』は…

古本夜話903 朝日新聞社「大陸叢書」とヤングハズバンド『ゴビよりヒマラヤへ』

本連載893の改造社の「大陸文学叢書」とシリーズ名が重なるものも出されている。それは本連載719などの今西錦司一統も読んでいたにちがいないシリーズで、昭和十四年から十七年にかけて、朝日新聞社から刊行された「大陸叢書」であり、『朝日新聞社図…

古本夜話902 「東洋民族史叢書」と岩永博『インド民族史』

前回の『印度支那』に続き、もうひとつ、同時代に出されたアジアを対象としたシリーズがあるので、これも書いておきたい。それは本連載831などの今日の問題社から刊行の「東洋民族史叢書」で、次のような構成となっている。 1 内藤智秀 『西アジア民族史…

古本夜話901 『世界地理政治大系』と室賀信夫『印度支那』

白揚社に関しては本連載115や229でふれているが、ここから昭和十六年に『世界地理政治大系』全十五巻が刊行され、そこには続けてふれてきた『印度支那』の一巻が収録されている。 監修者は地理学者で京都帝大教授の小牧実繁である。その「監修の辞」を…

古本夜話900 日下頼尚『邦人を待つ仏印の宝庫』

前回の久生十蘭『魔都』における安南のボーキサイト発掘権に関してだが、その数年後にそれに照応するような格好の一冊が出されている。その一冊とは東亜殖産理事の日下頼尚『邦人を待つ仏印の宝庫』で、昭和十六年に発行者を楠間亀楠とする文明社から刊行さ…

出版状況クロニクル132(2019年4月1日~4月30日)

19年3月の書籍雑誌推定販売金額は1521億円で、前年比6.4%減。 書籍は955億円で、同6.0%減。 雑誌は565億円で、同7.0%減。その内訳は月刊誌が476億円で、同6.2%減、週刊誌は89億円で、同11.3%減。 返品率は書籍が26.7%、雑誌は40.7%で、月刊誌は40.7%、週刊誌…