出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1020 筧克彦『神ながらの道』

前回、岩野泡鳴が筧克彦の古神道に関する著作、沼津の御用邸での御前進講『神ながらの道』を参考にして、大正三年に『古神道大義』を書き上げ、翌年に敬文館から刊行したことにふれておいた。これは『泡鳴全集』の編集に当った大月隆仗の回想によるものだっ…

古本夜話1019 大月隆仗、『泡鳴全集』、国民図書株式会社

前回言及した『悪魔主義の思想と文芸』は断っておいたように、『泡鳴全集』第十六巻所収のものである。この『泡鳴全集』全十八巻は昭和十年から翌年にかけて、国民図書株式会社から刊行されている。これもどうして『泡鳴全集』が国民図書から出版されたのか…

古本夜話1018 岩野泡鳴『悪魔主義の思想と文芸』

春山行夫が『ジョイス中心の文学運動』の「はしがき」において、同書のタイトルはシモンズの『表象派の文学運動 』の岩野泡鳴訳に基づくと述べ、さらに次のように書いている。 また僕は詩人であり小説家であり批評家であつた岩野泡鳴の《悪魔主義の思想と文…

古本夜話1017 アーサー・シモンズ、岩野泡鳴訳『表象派の文学運動』

シモンズの岩野泡鳴訳『表象派の文学運動 』がもたらした大きな影響を最初に知ったのは、河上徹太郎の『日本のアウトサイダー 』(新潮文庫)の「岩野泡鳴」の章においてだった。そこで河上は泡鳴訳の独特の文体と語彙によって、ボードレールやヴェルレーヌ…

古本夜話1016 春山行夫『ジョイス中心の文学運動』とアーサー・シモンズ

第一書房の『ユリシイズ』の翻訳出版にあって、春山行夫の介在した痕跡は感じられない。「訳者の序」において、謝辞を掲げているのは第一書房の長谷川巳之吉の他に、次のような人々である。『ユリシイズ』の初訳がこれらの人々の「不断の御助力と激励」によ…

古本夜話1015『ユリシーズ』の翻訳とシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』の初訳は断るまでもないが、近代日本翻訳史における事件であった。これは本連載1006などでふれているように、昭和六年十二月に伊藤整、永松定、辻野久憲を共訳者として、第一書房から刊行された『ユリシイズ』前編…

古本夜話1014 宍戸儀一、アーサー・シモンズ『象徴主義の文学』、『批評』

本連載1008で既述しておいたように、伊藤整の「詩人伝」(『伊藤整全集』第6巻所収、新潮社)は、昭和二十九年に四十九歳で亡くなった宍戸儀一を中心とする昭和初期の詩人たちをめぐる回想と見なしていいだろう。 それゆえに、そのイントロダクションも…

古本夜話1013『英文世界名著全集』とスティーヴンソン

これはかなり長きにわたって、留意しているのだが、出版社に関してまったくといっていいほど手がかりがつかめない全集がある。それは『英文世界名著全集』で、前回研究社の「英米文学評伝叢書」に言及したので、やはり続けてふれておきたい。 (第九回配本、…

古本夜話1012 研究社「英米文学評伝叢書」

前回、研究社に関してふれる機会を得たので、ここで続けて研究社の「英米文学評伝叢書」を取り上げておきたい。 すでに十年以上前になるのだが、浜松の時代舎に研究社の「英米文学評伝叢書」が二十冊近く積まれていた。これだけまとまって売られているのを見…

古本夜話1011 研究社『藤村読本』と小酒井五一郎

もう一冊、島崎藤村の渡仏と関連し、しかも飯倉時代の大正十四年に研究社から出された『藤村読本』第一巻がある。これは『研究社八十五年の歩み』を確認すると、十五年までに全六巻が刊行されている。 私が所持する一冊は裸本で、函やカバーは不明だけれど、…

古本夜話1010 島崎藤村『仏蘭西だより(上巻・平和の日)』とニジンスキー

前回の島崎藤村『飯倉だより』の中に、「巴里」という短いエッセイの収録があった。それはパリの花と春を語ったもので、大正三年からのフランス滞在時の回想に他ならない。 藤村は大正二年四月に船で渡仏し、五月にパリに到着する。そして八月から『東京朝日…

出版状況クロニクル143(2020年3月1日~3月31日)

20年2月の書籍雑誌推定販売金額は1162億円で、前年比4.0%減。 書籍は713億円で、同3.2%減。 雑誌は448億円で、同5.2%減。 その内訳は月刊誌が370億円で、同4.6%減、週刊誌は78億円で、同8.2%減。 返品率は書籍が31.8%、雑誌は41.5%で、月刊誌は41.2%、週刊…