出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1041 朝日新聞社『朝日住宅図案集』

戸川秋骨の『自然・気まぐれ・紀行』の記述からすれば、彼が住んでいた郊外は中野あたりだと推測していた。だが神谷敏夫『最新日本著作者辞典』を確認してみると、東京市外井荻とあった。そこで「郊外生活」を営み、「文化住宅」に住んでいたとされるが、彼…

古本夜話1040 戸川秋骨『自然・気まぐれ・紀行』、郊外社、薔薇閑『煙草礼讃』

本連載1037の戸川秋骨の随筆集『文鳥』は『近代出版史探索』99で取り上げているが、もう一冊手元にあって、それはまさに昭和六年に第一書房から刊行された『自然・気まぐれ・紀行』である。フランス装アンカット版で、「序のつもり」である「遜辞傲語」…

古本夜話1039 外語研究社「英文訳註叢書」と『宝島』

これは本連載1013「『英文世界名著全集』とスティーヴンソン」に続いて書くつもりだったのだが、本が出てこなくて、見送ってしまったのである。しかし二回にわたって英文学者の戸川秋骨や田部隆次、重治兄弟を取り上げてきたので、ここにその一編を挿入…

古本夜話1038 田部重治『峠と高原』、黒百合社、山上雷鳥『アルプス伝説集』

前回、『小泉八雲全集』刊行会代表兼訳者の英文学者田部隆次に、初めてふれたけれど、私が以前から知っていたのはその弟で、やはり英文学者の田部重治のほうだった。それは隆次と異なり、重治は『日本近代文学大事典』に立項があるように「山に親しみ全国各…

古本夜話1037 田部隆次、『小泉八雲全集』、戸川明三訳『神国日本』

これは前回ふれなかったが、福田清人は東京帝大国文科を卒業後、昭和四年から六年にかけて、第一書房に勤め、戦後になって、それを「長谷川さんと第一書房の思い出」(『第一書房長谷川巳之吉』所収)で回想している。 それによれば、当時は「宵闇せまれば悩…

古本夜話1036 協和書院「青年作家叢書」と福田清人「文学仲間」

前回の永松定の単行本『万有引力』は所持していないけれど、やはり同じ昭和十二年に協和書院から出された大澤衛『日本文化と英文学』が手元にある。大澤は後にトマス・ハーディの翻訳や研究で知られることになる英文学者で、同書はタイトルからも推測できる…

古本夜話1035 永松定『万有引力』

ジョイスの『ユリシイズ』の共訳者の永松定は「現代の芸術と批判叢書」のハアバアト・ゴルマン『ジョイスの文学』も翻訳している。永松の名前は高見順の『昭和文学盛衰史』(文春文庫)などに散見できるけれど、彼に関する言及はほとんど目にしていない。た…

古本夜話1034 三浦逸雄と『伊太利語辞典』

ダンテの『神曲』が続いたこともあり、もう一人の『神曲』の翻訳者にもふれないわけにはいかないだろう。しかもそれは本連載1016で『ユリシイズ』翻訳において謝辞を掲げられていた人物で、しかも第一書房の『セルパン』編集長の三浦逸雄によるものだか…

古本夜話1033 中山昌樹『ダンテ神曲物語』

前回はふれられなかったが、北川冬彦は『現代訳 神曲地獄篇』のために参照した先行翻訳として、次の三冊を挙げている。 山川丙三郎 「地獄」 (岩波版) 中山昌樹 「地獄篇」 (洛陽堂版) 生田長江 「地獄篇」 (新潮社版) (山川丙三郎訳) この際だから…

古本夜話1032 北川冬彦『現代訳 神曲地獄篇』

続けて詩人の北川冬彦の一冊にも言及しておきたい。ただそれは戦後の翻訳であり、昭和二十八年に創元社から刊行されたダンテの『現代訳 神曲地獄篇』である。 この一文を書くために、あらためて中央公論社版『日本の詩歌』25所収の北川の『三半規管喪失』(…

出版状況クロニクル145(2020年5月1日~5月31日)

20年4月の書籍雑誌推定販売金額は978億円で、前年比11.7%減。 書籍は476億円で、同21.0%減。 雑誌は501億円で、同0.6%減。 その内訳は月刊誌が422億円で、同1.8%増、週刊誌は78億円で、同11.6%減。 返品率は書籍が32.5%、雑誌は39.9%で、月刊誌は39.4%、週…