出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1052 詩話会と新潮社『現代詩人全集』

生田春月の遺稿詩集『象徴の烏賊』は昭和五年六月に第一書房から刊行され、『日本近代文学大事典』には書影とともに、「懊悩する春月を知る代表的詩集」として、この一冊だけが立項されている。これは前回の『生田春月全集』第一巻にも収録があり、確かに処…

古本夜話1051 新潮社と『生田春月全集』

昭和五年十二月に新潮社から『生田春月全集』全十巻の刊行が始まった。『新潮社四十年』は「新潮社出版年史」において、「その思想的煩悶の為めに昭和五年五月海に投じて死するに際し、書を遺して、全集出版の事を託された。即ち『生田春月全集』全十巻を刊…

古本夜話1050 生田春月『真実に生きる悩み』

生田春月の感想集『真実に生きる悩み』が手元にある。これは小B6判、並製三一五ページ、大正十二年初版発行、十三年十一版の一冊で、新潮社から出されている。 その巻末広告を見ると、春月の「文壇嘱目の中心となれる一大長篇小説」として、二千有余枚の『相…

古本夜話1049 中村武羅夫『明治大正の文学者』と生田春月

中村武羅夫のことは『近代出版史探索』178などで、また春山行夫との関係については本連載1027などでも言及してきたけれど、楢崎勤の慫慂によって昭和十七、十八年の二年間『新潮』に連載し、戦後に単行本化された中村の一冊がある。それは昭和二十四年に…

古本夜話1048 柳亮『あの巴里この巴里』

前回、柳亮が ALBUM SURRÉALISTE の訳者の一人で、『追想大下正男』の「『みづゑ』編集の時代」の執筆者だったことにふれてきた。 どのような経緯があってなのかは不明だが、柳は『日本近代文学大事典』に立項が見える。それによれば、明治三十六年名古屋生…

古本夜話1047 美術出版社、大下正男、『みづゑ』

新しい文学や思想ムーブメントが起きると、それに必ず同伴する出版社と編集者がいる。モダニズム文学に関してはそれが厚生閣と春山行夫だったことを見てきたが、シュルレアリスムの場合は春鳥会、後の美術出版社と大下正男に他ならなかった。 昭和十二年の「…

古本夜話1046『シュルレアリスム簡約辞典』と瀧口修造『シュルレアリスムのために』

前回のアンドレ・ブルトン、ポール・エリュアールの『シュルレアリスム簡約辞典』において、一九三八年の時点で、ひとりだけ立項されている日本人がいる。それは瀧口修造で、その立項を引いてみる。 TAKIGO(ママ)UCHI(Shuzo)瀧口修造―[1903-1979]、シュル…

古本夜話1045 山中散生『シュルレアリスム資料と回想』とボン書店

杉浦盛雄『名古屋地方詩史 』には『青騎士』の詩人として、井口蕉花、春山行夫、佐藤一英、棚夏針手に続いて、山中散生(ちるう)も紹介され、二編の詩も掲載されている。そのうちの『パラノイヤの空間』は戦後の作品だが、第一連を引いてみる。 火は点る 橋の…

古本夜話1044 杉浦盛雄『名古屋地方詩史』、馬場伸彦『周縁のモダニズム』、井口蕉花

春山行夫は名古屋の詩誌『青騎士』を揺籃の地とし、モダニズム詩人としての始まりを告げたといっていいだろう。 実は古田一晴『名古屋とちくさ正文館』(「出版人に聞く」シリーズ14)のインタビューに際し、参考文献として杉浦盛雄『名古屋地方詩史 』(同…

古本夜話1043 春山行夫訳、レヂス・ミシヨオ『フランス現代文学の思想的対立』

少しばかり飛んでしまったけれど、春山行夫に関して続けてみる。彼は第一書房からレヂス・ミシヨオ『フランス現代文学の思想的対立』を翻訳刊行している。同署と春山について、小島輝正は『春山行夫ノート 』(蜘蛛出版社)で、次のように述べている。 春山…

古本夜話1042 桜井書店とJ・A・シモンズ『ダンテ』

ダンテといえば、本連載1032でふれたばかりだし、『近代出版史探索』71などのJ・A・シモンズの『ダンテ研究入門』(Introduction to the Study of Dante)が著名な研究書として知られている。この対になるとされるのが、やはりシモンズの『文芸復興』(…

出版状況クロニクル146(2020年6月1日~6月30日)

20年5月の書籍雑誌推定販売金額は770億円で、前年比1.9%増。 書籍は423億円で、同9.1%増。 雑誌は346億円で、同5.7%減。 その内訳は月刊誌が286億円で、同1.5%減、週刊誌は59億円で、同22.0%減。 返品率は書籍が36.5%、雑誌は46.2%で、月刊誌は46.6%、週刊誌…