出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1151 岩波書店「独逸文学叢書」、藤代禎輔、ルードヴィヒ『世襲山林監督』

前回の三笠書房『ホフマン全集』が時期尚早ゆえに二冊で中絶してしまったことにふれた。それより十年ほど前になるけれど、岩波書店でも「独逸文学叢書」が企画され、こちらは十四冊出されたが、やはり後が続かなかったと思われる。 その3にあたるルードヴィ…

古本夜話1150 三笠書房『ホフマン全集』と『黄金の壺』

茅野蕭々の『独逸浪漫主義』は昭和十年代において、最もまとまったドイツロマン派に関する紹介と研究を兼ねた一冊だったと思われる。しかも丁寧な索引も付され、作家と作品をたどる便宜もはかられている。 (『独逸浪漫主義』) 例えば、小説のところで、ノ…

古本夜話1149 茅野蕭々『独逸浪漫主義』

前回の 近藤春雄『ナチスの青年運動』のような時宜にかなったナチズム書ばかりでなく、昭和十年代には多くのドイツ文学、思想書も出版されていたはずだが、それらの全貌は明らかにされていない。フランス文学に関しては『近代出版史探索Ⅴ』で多く言及してい…

古本夜話1148 近藤春雄『ナチスの青年運動』

『三省堂書店百年史』は昭和十年代の書店に関しては多くの写真を掲載して、支那事変以後の売場の変遷、また「名著目録(昭和五年―十五年)」示して、「名著の供給を絶やさなかった」事実を伝えてようとしているが、自社出版物についてはほとんど語っていない…

古本夜話1147 啓文社、河原万吉『趣味の古書通話』、水原堯榮『女性と高野山』『邪教立川流の研究』

河原万吉の本がもう一冊出てきたこともあり、前回の彼の宗教と絡めて、もう一編書いてみよう。 それは『趣味の古書通話』で、昭和十二年、発行者を生地優吾とする、本郷区元町の啓文社からの刊行である。河原の「序」によれば、同書は古書に関する四冊目の著…

古本夜話1146 河原万吉訳、スエデンボルグ『天界と地獄』

前回の河原万吉がゾラ『居酒屋』の訳者であることを既述したが、その他にも思いがけない翻訳が見出される。それは拙稿「スウェーデンボルグ『天界と地獄』と静思社」(『古本屋散策』所収)、やはり『近代出版史探索Ⅱ』247の鈴木大拙訳『天界と地獄』と異な…

古本夜話1145 四六書院「通叢書」と河原万吉『猥談奇考』

前回、『三省堂書店百年史』に何の説明もないけれど、四六書院「通叢書」の河原万吉『古書通』の書影が掲載されていることを既述しておいた。 (『古書通』) (『西洋音楽通』) この「通叢書」は昭和四年十二月に、現代人における趣味の欠乏が問題なので、「…

古本夜話1144 四六書院、小松清『西洋音楽通』、三省堂『レコード音楽全集』

前回、大正時代に上方屋出版部の楽譜本や歌本がまさに飛ぶように売れていたことにふれたが、昭和に入ると、それらも含めた音楽書や雑誌の分野も活発になっていったと推測される。それは『近代出版史探索Ⅱ』339のアルスの「音楽大講座」や春秋社の『世界音楽…

古本夜話1143 金星堂と上方屋『ヴアヰオリン独習』

前回の『日本精神文化大系』に合わせるように、昭和十年に金星堂から『現代随筆全集』が出版されている。これは『全集叢書総覧新訂版』によれば、全十二巻とある。例によって浜松の時代舎で、その第一巻「学藝篇」を見つけ、購入してきた。B6判函入の一冊で…

古本夜話1142 金星堂と『日本精神文化大系』

前回の先進社『大日本思想全集』の解題と明細は『世界名著大事典』第六巻の「全集・双書目録」に見出したけれど、金星堂の『日本精神文化大系』は含まれていなかった。残念ながら『金星堂の百年』(平成三十年)においても何の言及もなく、タイトルすらも挙…

出版状況クロニクル156(2021年4月1日~4月30日)

21年3月の書籍雑誌推定販売金額は1529億円で、前年比6.5%増。 書籍は970億円で、同5.9%増。 雑誌は559億円で、同7.7%増。 20年12月から4ヵ月トリプル増で、かつてないプラスが続いている。 雑誌の内訳は月刊誌が478億円で、同10%増、週刊誌は81億円で、同4.1…