出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1181 中央社出版部『ゾラ著作異状なし』

前回、関口鎮雄訳『芽の出る頃』を取り上げ、私が所持しているのは大正十二年の金星堂版の上下本ではなく、昭和二年の合本の成光館版で、こちらは特価本出版社による譲受出版であることを既述しておいた。また同書が『ジェルミナール』で、訳者の関口のプロ…

古本夜話1180 関口鎮雄訳『芽の出る頃』と堺利彦訳『ジェルミナール』

前回は大正時代のゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」翻訳をリストアップしたので、金星堂の『芽の出る頃』、アルスの堺利彦訳『ジェルミナール』を挙げておいた。だがそこで言及できなかったこともあり、ここで書いておきたい。それは前回の『獣人』と同じく…

古本夜話1179 三上於菟吉訳『獣人』と坂井律訳『死の解放』

ゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」の翻訳は大正時代後半が最盛期で、国立国会図書館編『明治・大正・昭和翻訳文学目録』(風間書房)を確認してみると、次のようにリストアップできる。類似した試みを『近代出版史探索』193で行なっているけれど、私は論創…

古本夜話1178 宇高伸一訳『ナナ』と三好達治

前回、大正十一年にゾラの『ナナ』が宇高伸一全訳で、『世界文芸全集』7として刊行され、大ベストセラーとなり、新潮社が新社屋を建設するに至り、それがナナ御殿とよばれたというエピソードを記しておいた。(『世界文芸全集』) この宇高については『日本…

古本夜話1177 ゾラ『実験小説論』、『パスカル博士』、金森修『科学的思考の考古学』

ゾラが「ルーゴン=マッカール叢書」の第一巻『ルーゴン家の誕生』(伊藤桂子訳、論創社)を刊行するのは一八七一年で、その理論とされる『実験小説論』を上梓するのは八〇年で、拙訳もある「同叢書」の第九巻『ナナ』の出版後だった。日本における『実験小説…

古本夜話1176 松本恵子訳『アベ・ムウレの罪』とパラドウ

前回の『フロオベエル全集』の『聖者アントワヌの誘惑』ではないけれど、ドーデの『巴里の三十年』に見えるゾラの『ムレー司祭』も、『アベ・ムウレの罪』として、やはり改造社の「ゾラ叢書」で翻訳刊行されていた。それは昭和五年の「同叢書」第二篇として…

古本夜話1175 庄司浅水、ブックドム社、フローベル『愛書狂の話』

前回の改造社版『フロオベエル全集』第四巻には、拙稿「庄司浅水と『愛書狂』」(『古本屋散策』所収)ですでにふれている。だがそれは同巻に「愛書狂」が収録されていたことによるものだ。 (改造社版) その後、ブックドム社のフローベル著、庄司浅水訳『愛…

古本夜話1174 フロベエル、広瀬哲士訳『聖アントワアヌ』と双樹社

フローベールの家での晩餐会の席に供せられていた『聖アントワーヌの誘惑』は一八七四年=明治七年に刊行されている。 一八四五年にフローベールはイタリア旅行で、ジェノヴァのバルビ宮において、ブリューゲルの「聖アントワーヌの誘惑」を見た。そしてその…

古本夜話1173 ドーデ、萩原彌彦訳『巴里の三十年』

前回、トルストイやドステエーフスキーの日記や書簡を収録した新潮社の「人と芸術叢書」にふれたが、その第四編がドオデエの『巴里の三十年』であることを知った。この訳者が『支那思想のフランス西漸』(第一書房、昭和八年)の後藤末雄だと承知していたけ…

古本夜話1172 西宮藤朝『近代十八文豪と其の生活』

前々回の佐藤義亮の発言にみたように、大正時代を迎えると、新潮社は外国文学の翻訳出版が活発になっていく。 それらをたどる前に、その外国文学の翻訳出版に関連する恰好の一冊を拾っているので、これを紹介しておきたい。そのタイトルは『近代十八文豪と其…

出版状況クロニクル159(2021年7月1日~7月31日)

21年6月の書籍雑誌推定販売金額は996億円で、前年比0.4%減。 書籍は490億円で、同0.2%増。 雑誌は475億円で、同0.9%減。 雑誌の内訳は月刊誌が407億円で、同3.1%増、週刊誌は67億円で、同20.0%減。 返品率は書籍が39.0%、雑誌は41.2%で、月刊誌は40.2%、週刊…