出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1192 デュマ・フィス『椿姫』とその翻訳史

続けて、新潮社『世界文学全集』30に収録の『サフオ』『死の勝利』を取り上げたが、もう一作も同様で、それはデュマ・フィス、高橋邦太郎訳『椿姫』である。 (『世界文学全集』30) たまたまこの巻には「世界文学月報」がそのまま残っていて、『近代出版史探…

古本夜話1191 三島由紀夫とダンヌンツィオ『死の勝利』『聖セバスチャンの殉教』

前回のドーデ『サフオ』とダンヌンツィオ『死の勝利』が、大正の初めに新潮社の「近代名著文庫」として翻訳され、昭和円本時代にいずれも『世界文学全集』30に収録されたことを既述しておいた。(「近代名著文庫」) (『世界文学全集』30) 佐藤義亮の『出版お…

古本夜話1190 ドオデエ、武林無想庵訳『サフオ』

このようなことを書くと、奇異に思われるかもしれないが、小学生の頃、私はドーデのファンであった。それは本探索1173でふれなかったけれど、昭和三十年代には各種の児童向けの世界文学全集が出されていて、そこにドーデの作品も含まれ、『風車小屋だより』…

古本夜話1189 ヴィゼッテリイとゾラの英訳

前回の井上勇も『制作』の翻訳に際し、「ヴイゼツテリイ監督のもとに出版された英訳」も参照したと「覚書」に記していた。前々回の山本昌一は『ヨーロッパの翻訳本と日本自然主義文学』の「ゾラと荷風・枯川」において、従来の所謂「ヴィゼッテリイ本」ヴィ…

古本夜話1188 第百書房、井上勇訳『制作』、高島政衛

ゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」の大正時代の譲受出版に関して、ずっとトレースしてきたので、ここでもう一冊付け加えておこう。 それは本探索1179でも挙げておいた井上勇訳『制作』で、大正十一年に聚英閣から刊行されているが、この前後巻2冊は未見で…

古本夜話1187 三星社の水上齊訳『全訳ボワ゛リー夫人』に至るまで

本探索1184の『ボワ゛リー夫人』がようやく出てきたので、ここで書いておく。黒川創の『国境』において、夏目漱石の仲介で明治三十四年に『満洲日々新聞』に連載されたフロオベルの『ボワ゛リー夫人』は植民地の新聞だったこともあり、ほとんど知られていな…

古本夜話1186 ゴンクール『売笑婦エリザ』、アラン・コルバン『娼婦』、『ナナ』

本探索1173のドーデ『巴里の三十年』 において、フローベールの家での晩餐会にはゴンクールの『令嬢エリザ』も供されていた。ゴンクール兄弟に関しては『近代出版史探索Ⅴ』825、826で取り上げているが、この作品は弟のジュールの死後、一八七七年に兄のエド…

古本夜話1185 テーヌ『英文学史』と『文学史の方法』

ずっとゾラにふれてきたので、彼に大きな影響を与えたとされ、本探索1177で金森修も挙げていたテーヌ『英文学史』も取り上げておこう。 テーヌの『英文学史』は一八六三年にアシェット書店から三巻で出版され、六四年に一巻が加えられ、六九年に五巻に分かれ…

古本夜話1184 水上斎訳『酒場』と木村幹訳『居酒屋』『夢』

成光館版「ルーゴン=マッカール叢書」は本探索1179『死の解放』、同1180『芽の出る頃』の他に、もう一冊あり、それは水上斎訳『酒場』で、昭和三年十一月の再版とされている。「改訂」と付されているが、それは大正十一年の天佑社版の譲受出版を意味している…

古本夜話1183 伊佐襄『正しい英語の知識』とユスポフ『ラスプーチン暗殺秘録』

前回の伊佐襄と高橋襄治に関してもネット検索したところ、後者はヒットしなかったけれど、前者には『ラスプーチン暗殺秘録』や『正しい英語の知識』という訳書、著書があるとわかった。そこでこれらも早速入手することになった。 先に『正しい英語の知識』を…

古本夜話1182 伊佐襄訳『ジェルミナール』と高島襄治訳『ゼルミナール』

昭和に入ると、ゾラの『ジェルミナール』は伊佐襄訳『ジェルミナール』(『新興文学全集』15,平凡社、昭和五年)、高島㐮治訳『ゼルミナール』(改造社、同九年)として刊行されている。 (伊佐襄訳『ジェルミナール』、本の友社復刻)(『ゼルミナール』)…

出版状況クロニクル160(2021年8月1日~8月31日)

21年7月の書籍雑誌推定販売金額は820億円で、前年比11.7%減。 書籍は426億円で、同4.6%減。 雑誌は394億円で、同18.2%減。 雑誌の内訳は月刊誌が328億円で、同19.0%減、週刊誌は65億円で、同14.3%減。 返品率は書籍が41.4%、雑誌は43.9%で、月刊誌は43.3%、…