出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1253 日本評論社『日本プロレタリア傑作選集』と徳永直『能率委員会』

本探索1248の山内封介『レーニン』と一緒に、やはり浜松の時代舎で、徳永直の『能率委員会』を入手している。これは昭和五年に日本評論社から刊行された『日本プロレタリア傑作選集』の一冊で、文庫版を一回り大きくした判型の並製である。奥付には定価三十…

古本夜話1252 新潮社『蘆花全集』と『順礼紀行』

本探索1247でふれた数次に及ぶトルストイブームはともかく、その立役者ともいえる徳富蘆花の明治時代におけるベストセラー作家としての人気に関しては、私などの昭和の戦後世代にとって、実感を伴うことは難しい。それに現在でも岩波文庫で読めるにしても、…

古本夜話1251 新潮社『トルストイ研究』

本探索1247で、新潮社の雑誌『トルストイ研究』を挙げたが、幸いなことにこの第一号は近代文学館編集によって講談社が昭和五十七年に刊行した「複刻 日本の雑誌」の一冊に含まれ、近年それを入手しているので、ここで取り上げておこう。 (『トルストイ研究…

古本夜話1250 吉田一穂『海の人形』と金井信生堂

『金星堂の百年』が出されたことは近代出版史や文学史にとって幸いだったが、全出版目録が収録されていないのは残念の一言に尽きる。それは金星堂の戦前の出版物の収集が困難であることを象徴していよう。紅野敏郎にしても『大正期の文芸叢書』(雄松堂出版…

古本夜話1249 池田みち子『無縁佛』

『金星堂の百年』において、「編集部員は文学青年、文学少女」という見出しで、本探索1238の松山敏だけでなく、当時の他の編集者についてもふれられ、次のように記されていた。 のちに作家となり戦後は「肉体派の風俗作家」などと呼ばれた池田みち子も、常勤…

古本夜話1248 山内封介『レーニン』、金星堂、近代出版社

前回の近代出版社に関して、もう一編書いておきたい。 その前に山内封介というロシア文学者にふれてみる。彼はやはり前回挙げた新潮社の「トルストイ叢書」の『贋造手形』、及びゴンチャロフ『オブローモフ』の訳者だが、昭和に入ってからは新潮社の訳者とし…

古本夜話1247 近代出版社と相馬御風、相馬泰三訳『復活』

もう一編、新潮社と演劇絡みの話を続けたい。佐藤義亮は「出版おもひ出話」において、大正三年に島村抱月が松井須磨子と芸術座を立ち上げ、帝国劇場でトルストイの『復活』を旗揚げ興業した際のエピソードを記している。 それによれば、『復活』の舞台稽古が…

古本夜話1246「現代脚本叢書」、花房柳外、『演劇新潮』

新潮社の「現代脚本叢書」は『近代出版史探索Ⅱ』205で、金子洋文の『投げ棄てられた指輪』を取り上げておいた。その際にはこの「叢書」のラインナップを示さなかったこと、及び谷崎潤一郎の『法成寺物語』を入手したこともあり、もう一度ふれてみる。その前…

古本夜話1245「新進作家叢書」と志賀直哉『大津順吉』

前回の『代表的名作選集』と「新進作家叢書」のラインナップをあらためて通覧し、大正時代における新潮社のこのふたつのシリーズが、大正文学の確立と広範な普及において大きな役割を果たし、影響を与えたことを実感した。だから続けて「新進作家叢書」にも…

古本夜話1244『代表的名作選集』と里見弴『善心悪心』

例によって浜松の時代舎で、もう一冊、里見弴の『善心悪心』を見つけ、購入してきた。これは前回の「感想小品叢書」に先駆ける新潮社の『代表的名作選集』の35として、大正九年に刊行されたものである。(『善心悪心』、新潮社)(「感想小品叢書」) 新潮社…

古本夜話1243「感想小品叢書」、里見弴『白酔亭漫記』、大杉栄

新潮社の「感想小品叢書」に関しては『近代出版史探索』176で、菊池寛『わが文芸陣』と中村武羅夫『文壇随筆』にふれておいたが、その後、里見弴『白酔亭漫記』も入手している。(『わが文芸陣』)(『白酔亭漫記』) その巻末リストには「文壇諸家の主張と…

出版状況クロニクル166(2022年2月1日~2月28日)

22年1月の書籍雑誌推定販売金額は853億円で、前年比4.8%減。 書籍は510億円で、同0.9増。 雑誌は343億円で、同12.3%減。 雑誌の内訳は月刊誌が275億円で、同14.4%減、週刊誌は67億円で、同2.3%減。 返品率は書籍が30.2%、雑誌は43.3%で、月刊誌は43.8%、週刊…