出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1286 聚英閣「新人会叢書」と若山健治訳『無政府主義論』

本探索1283で聚英閣のチェネェ『劇場革命』を取り上げたが、この版元に関しては同1236のタイトルで示しているように、聚英閣と並べて言及してきたこともあり、ここでやはり聚英閣のほうにもふれておこう。 それはこの出版社も左翼文献と無縁であるどころか、…

古本夜話1285 カウツキー、小池四郎訳『五ヶ年計画立往生』

左翼文献は『近代出版史探索Ⅵ』1141の『大日本思想全集』の先進社からも刊行され、入手しているのは昭和六年のカール・カウツキー、小池四郎訳『五ヶ年計画立往生』で、サブタイトルは「サウィエート・ロシアの革命的実験は成功したか?」とある。(『大日本…

古本夜話1284 大森義太郎『唯物弁証法読本』と永田広志『唯物弁証法講話』

本探索1279で、プロレタリア文学や社会運動の隆盛に伴う多種多様な左翼文献の翻訳出版を指摘しておいた。それは『近代出版史探索Ⅱ』213に典型的な左翼系小出版社だけでなく、大手出版社にも及んでいて、時代のトレンドとして売れ行きもよかったのである。 そ…

古本夜話1283 川添利基訳『劇場革命』、中村雅男訳『デッド・エンド』、テアトロ社

前回日本プロレタリア演劇同盟(略称プロット)発行の機関誌『プロレタリア演劇』を挙げておいたが、残念ながらこの雑誌は復刻されていない。それでも『日本近代文学大事典』第五巻「新聞・雑誌」には三段に及ぶ解題があり、昭和五年に創刊、六年に『プロッ…

古本夜話1282 『プロレタリア文化』、波多野一郎、寺島一夫

もう一冊、近代文学館の「複刻 日本の雑誌」(講談社)にプロレタリア関係がある。それは『プロレタリア文化』で、これも『日本近代文学大事典』第五巻「新聞・雑誌」に解題が見出せる。その解題を繰ってみると、その前後に思いがけずにプロレタリアがタイト…

古本夜話1281 円本としての「囲碁大衆講座」

やはり前回の典昭堂で、平凡社の「囲碁大衆講座」第九輯を見つけた。これも昭和六年の出版で、前回の『世界裸体美術全集』と併走するように刊行されていたのである。平凡社の 拙稿「平凡社と円本時代」(『古本探究』)所収)では実用的な講座物と見なし、円…

古本夜話1280 平凡社『世界裸体美術全集』

前回、ハウゼンスタイン『芸術と唯物史観』は原著の内容とタイトルから考えれば、『芸術と裸体』としたほうがふさわしいのではないかと述べておいた。 (『芸術と唯物史観』) ところが『芸術と唯物史観』との関連は不明だが、昭和六年になって平凡社から『…

古本夜話1279 ハウゼンスタイン『芸術と唯物史観』と阪本勝

本探索でプロレタリア文学や社会運動の隆盛に伴う、いくつものリトルマガジンの創刊をみてきたが、それらは多くが従来の出版社によるものではない。そのことは翻訳に関しても同様であり、想像する以上に多種多様な訳書が刊行されたと思われる、そうした典型…

古本夜話1278 希望閣、野々宮三夫『世界プロレタリア年表』、市川義雄

昭和に入ってのプロレタリア文学全盛の時代にはそれらの分野に類する多くの文献が刊行されていたはずで、野々宮三夫『世界プロレタリア年表』も、その一冊に挙げられるだろう。同書は菊判函入、上製一九四ページとして、昭和七年に希望閣から出されている。 …

古本夜話1277 岩波書店と『思想』創刊号

前回の改造社『社会科学』創刊号は浜松の典昭堂で見つけたものだが、そこには岩波書店の『思想』創刊号もあり、ともに入手してきたのである。創刊号こそ前者が大正十四年、後者が同十年と異なるものの、判型、表紙レイアウトもほぼ同じで、創刊定価のほうも…

古本夜話1276 改造社と『社会科学』創刊号

手元に大正十四年六月と日付入りの『社会科学』創刊号があって、これは前々回の『我等』と異なり、近代文学館の「複刻日本の雑誌」の一冊ではなく、実物を入手している。(『社会科学』) (『我等』創刊号) この『社会科学』は『日本近代文学大事典』第五巻…

出版状況クロニクル169(2022年5月1日~5月31日)

22年4月の書籍雑誌推定販売金額は992億円で、前年比7.5%減。 書籍は547億円で、同5.9%減。 雑誌は445億円で、同9.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が382億円で、同9.0%減、週刊誌は63億円で、同12.2%減。 返品率は書籍が28.5%、雑誌は40.2%で、月刊誌は39.3%、週刊…