2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧
『雨雀自伝』の中で、彼がロシア文学によって教育され、生活の意義への問いを喚起されたと告白している。それは明治末期のことで、ドストエフスキーの英訳に読みふけり、二葉亭四迷訳のゴーリキーやアンドレイエフを愛読していたとされる。 前回の演劇のトレ…
続けてふれてきた国際文化研究所や『若きソウエート・ロシヤ』などからわかるように、戦前において、秋田雨雀は社会主義や演劇運動のキーパーソンの一人であった。この際だから、そこに至る雨雀の前史を見ておこう。『雨雀自伝』(新評論社、昭和二十八年)…
高杉一郎は前回の『スターリン体験』の国際文化研究所外国語夏期大学のところで、秋田雨雀所長の『若きソウエート・ロシヤ』の書影を挙げている。これは昭和四年に叢文閣から刊行された一冊だが、やはり同年の再版が手元にある。 この『若きソウエート・ロシ…
エロシェンと神近市子をたどり、かなり迂回してしまったが、高杉一郎に戻る。彼は『スターリン体験』(岩波書店「同時代ライブラリー」、平成二年)において、「国際文化研究所の外国語夏期大学」という一章を設け、駿河台の文化学院で、昭和四年七月十五日…
前回の峠に関してはただちに本探索1306の中里介山『大菩薩峠』が思い浮かぶけれど、ここでは戦後の時代劇と時代小説にまつわる話を書いておこう。もはや半世紀前のことになってしまうのだが。 ひとつは村上元三原作、市川雷蔵主演、池広一夫監督『ひとり狼』…
前回の「日本新八景」における山岳、渓谷、瀑布、河川、湖沼、平原、海岸の選定が、美しい景観への再認識と景勝地への旅行を促進させたことにふれておいた。そしてそれは出版界にとっても同様で、これも前回の「湖沼」だけでなく、多くの旅行ガイドも兼ねた…
『みづゑ』の「水彩画家大下藤次郎」に収録された水彩画を見ていると、彼が湖を好んで描いていることに気づく。具体的には湖のタイトルを付しているものだけでも「木崎湖」「本栖湖」「猪苗代湖」「久々子湖」「松原湖の秋」「宍道湖の黄昏」などが挙げられ…
本探索1365の島崎藤村の「水彩画集」ではないけれど、そのモデルの丸山晩霞のみならず、水彩画の先駆者である大下藤次郎や三宅克己も、明治三十年代に欧米旅行に出かけている。 それは大正時代を迎えると、第一次世界大戦後の円高の影響も受けてか、画家たち…
徳田秋声の『縮図』は昭和十六年六月から『都新聞』で連載が始まったが、九月までの八十日で中断し、秋声は十八年十一月十八日に七十三歳で亡くなり、未完のままになってしまった。 (『縮図』) だがその一周忌がすみ、帝都の空襲が激しくなる中で、小山書…
中里介山の『大菩薩峠』を連載した『都新聞』にもふれてみたい。それは浜松の時代舎で、都新聞出版部から刊行された金井紫雲を編集者とする『花と鳥』を入手し、都新聞社が出版も手がけていたことを知ったからである。 『花と鳥』は四六判函入、上製五〇五ペ…
23年2月の書籍雑誌推定販売金額は997億円で、前年比7.6%減。 書籍は634億円で、同6.3%減。 雑誌は363億円で、同9.7%減。 雑誌の内訳は月刊誌が305億円で、同8.9%減、週刊誌が58億円で、同13.4%減。 返品率は書籍が31.0%、雑誌が41.2%で、月刊誌は39.9%、週刊…