出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1398 中野重治『空想家とシナリオ』

高杉一郎は『ザメンホフの家族たち』の「中野重治」、『往きて還りし兵の記憶』の「務台理作と中野重治」「その後の中野重治」において、いずれも主として前者は戦前、後者は戦後の中野に関して言及している。ここでは戦前の中野にふれてみる。 高杉は中野が…

古本夜話1397 『文芸』編集者小川五郎と宮本百合子「杉垣」

高杉一郎は『ザメンホフの家族たち』所収の「目白時代の宮本百合子」において、『文芸』の責任編集者としてのポジションを語っている。それは昭和十年以後、海外の作家の動向から考えても、日本の文壇もファシズムと文化の問題に直面せざるをえないだろうが…

古本夜話1396 小坂狷二『エスペラント文学』と日本エスペラント学会

高杉一郎は『ザメンホフの家族たち』所収の「日中エスペラント交流史の試み」において、国際文化研究所、『国際文化』、夏期外国語大学のエスペラント学級講座の開設が三位一体のようなかたちで、多くの社会主義的、マルクス主義的エスペランティストたちが…

古本夜話1395 高村光太郎訳『回想のゴツホ』

前回、大正時代に高田博厚が高村光太郎たちと交流して彫刻を続ける一方で、叢文閣からロマン・ロランの『ベートーヱ゛ン』などを翻訳していたことにふれた。 それは高村のほうも同様で、やはり同時代に叢文閣から『続ロダンの言葉』(大正九年、『ロダンの言…

古本夜話1394 高田博厚『分水嶺』と「パリの日本人たち」

もう一編、高田博厚の『分水嶺』(岩波書店、昭和五十年)を参照し、パリの片山敏彦とアランに関して続けてみる。 高田は大正九年に東京外語伊語科を中退し、コンディヴィ『ミケランジェロ伝』(岩波書店、同十一年)を翻訳する一方で、高村光太郎たちと交流…

古本夜話1393 アラン『文学論』とシモーヌ・ヴェイユ

片山敏彦はアランの『文学語録』を翻訳し、昭和十四年に創元社から刊行している。この邦訳名「語録」は原タイトルの Propos de Littérature(1944)を反映させ、「プロポ」のアランの翻訳を意図したのであろう。だが私の所持するのは、やはり創元社版である…

古本夜話1392 片山敏彦『詩心の風光』とロマン・ロラン

前回、高杉一郎の「片山教室」体験にふれたが、私のような戦後世代にとって、片山敏彦のイメージは希薄で、翻訳はともかく、著書も一冊しか入手していない。 『日本近代文学大事典』における片山の立項は一ページ近いので、清水徹によるシンプルな『[現代日…

古本夜話1391 片山敏彦とツヴァイク『権力とたたかう良心』

前回の片山敏彦に関して続けてみる。高杉一郎『ザメンボフの家族たち』に「片山敏彦の書斎」という小文がある。 高杉は『文芸』の編集者として、昭和十二年から十九年の応召に至るまで、片山の書斎訪問を繰り返し、「片山教室」の「生徒」だったことを語って…

古本夜話1390 小尾俊人と高杉一郎

またしても飛んでしまったが、みすず書房創業者の小尾俊人は『昨日と明日の間』(幻戯書房、平成二十一年)所収の「高杉一郎先生と私」で、次のように書いている。 私が高杉先生のお仕事のお手伝いをいたしましたのは、昭和二十九(一九五四)年からのことで…

古本夜話1389 叢文閣「マルクス主義芸術理論叢書」、啓隆閣、マーツア『二〇世紀芸術論』

本探索1386の秋田雨雀『若きソウエート・ロシヤ』の版元である叢文閣に関しては『近代出版史探索Ⅱ』204、206、207、208などで言及してきたが、出版目録は出されていないこともあって、その全貌は明らかではない。有島武郎との関係はよく知られ、彼の個人誌『…

出版状況クロニクル180(2023年4月1日~4月30日)

23年3月の書籍雑誌推定販売金額は1371億円で、前年比4.7%減。 書籍は905億円で、同4.1%減。 雑誌は466億円で、同5.7%減。 雑誌の内訳は月刊誌が398億円で、同5.0%減、週刊誌が67億円で、同10.1%減。 返品率は書籍が25.6%、雑誌が39.6%で、月刊誌は38.7%、週…