出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル36(2011年4月1日〜4月30日)

出版状況クロニクル36(2011年4月1日〜4月30日)

日本ショッピングセンター協会によれば、3月売上高は前年同月比12.2%減で、そのうちの東北地方は30.8%減、関東地方は21.9%減となっている。

全国で3000近くに及ぶその過半数が郊外ショッピングセンターであり、90年代の大店法緩和以後、急速に増加し、とりわけそれは東北地方がきわめて激しく、従来の商店街の衰退に拍車をかけていたのは周知の事実だ。そして郊外ショッピングセンターに象徴されるスプロール都市の失敗から、ようやくコンパクトシティへの摸索が始まりつつあった時に、大震災に見舞われたことになる。

それらの郊外ショッピングセンターの詳細な被害は伝えられていないが、すべてに書店が入っていることはいうまでもなく、前述の数字のような厳しいマイナス状況にある。大震災前/大震災後のひとつの重要な事柄として、郊外ショッピングセンターもその意味と存在をあらためて問われることになるだろう。


1.出版科学研究所による3月期の雑誌、書籍推定販売金額が出された。雑誌は981億円、前年同月比6.4%減、その内訳は月刊誌が同4.3%減、週刊誌が同14.1%減。書籍は1115億円、同1.3%減。総販売金額は2096億円、同3.7%減。

[週刊誌における『週刊少年ジャンプ』の休刊などを除いて、3・11の東日本大震災の影響はまだこの3月期の数字にはっきり表われていない。それは返品率も同様で、雑誌や書籍も前年同月に比べ、若干下回り、前者は32.4%、後者は28.8%となっている。

しかし4月以降の数字は大震災の影響が否応なく反映されてくるだろう。それは紙とインク不足による雑誌や書籍の刊行の減少と返品率の上昇がパラレルに進んでいく。刊行点数の減少は説明するまでもないが、返品率についてコメントすれば、書店は計画停電や節電ゆえに営業時間の短縮を余儀なくされ、そのことによって売上の減少を避けられない。そして資金繰りのためには在庫を圧縮することになろう。これはたちまち返品率の上昇を招き、取次、わけても出版社へとはね返ってくる。5月から8月にかけて、電力事情の推移も絡むが、返品率は高止まりし、大震災の津波のようなものとして、出版社へ押し寄せてくるとも考えられる。出版社はそれを自明の前提として、これからの対応を熟慮すべきだろう]

2.東日本大震災に対応するために書協、雑協、日本出版クラブの3団体によって、出版社を中心とする大震災出版対策本部が立ち上げられている。その4月初旬の調査によれば、岩手、宮城、福島県の被災害書店は200店に及ぶとされる。

[被災書店のレポートはそれぞれの書店や地域別に伝えられているが、その全体の被害総額などはまだ明らかになっていない。しかし東日本大震災阪神大震災とは桁ちがいの規模で被害をもたらしたように、書店も想像を絶する災厄に襲われたことはいうまでもない。

大震災出版対策本部に日書連や取協も加えた5団体によって出版対策本部協議会も設置され、さらに印刷や製紙の関係連合会、出版文化産業振興財団、読書推進運動協議会も加入したので、こちらは出版社、取次、書店、関連団体も含んだ横断的なものと見なすことができる。

そしてこの両者を代表すると考えていい対策本部広報委員会がホームページでの情報発信、復興支援基金の創設、図書寄贈プロジェクトによる販売や読書環境の復活プランを発表したが、それは窮地におかれている被災書店に届くようなビジョンであるのだろうか]

3.『文化通信』(4/25)が、盛岡の東山堂の玉山哲へのインタビューを掲載している。玉山は岩手県書店商業組合理事長、岩手教科図書社長でもある。被災書店の最も生々しい声を聞く思いがする。それを要約する。

*東山堂は楽器店舗の釜石店、音楽教室4か所すべてが流失し、被害総額は1億円を超えると予測される。社員も住宅や夫人を失っている。他の書店も店主の死亡や店舗ごとの流失に見舞われている。

*本店売上も向かいのデパートのガス爆発により、半月営業できず、ガソリン不足のために外商不能と売掛金回収が滞り、キャッシュフローに影響があり、こちらも相当の損失になると推測。

*4月に入っての営業再開後は児童書、コミック、雑誌が売れたが、取次の物流が止まったり、新学期に入ったことで縮小している。この1年間で3億円の売上減になるだろう。

*昨年の岩手県の書店出版物販売額は150億円と推定されるが、震災の影響は計りしれないほど大きく、今年は20億円から30億円のマイナスもありうる。

*沿岸部の今後に対しては町そのものがなくなってしまったとこともあり、まったく見通しが立たない。宮城県気仙沼市の場合、7店舗あった書店は全滅してしまった。漁業は国を挙げて支えるだろうが、書店などの商業者は元に戻れないだろうし、再開も難しい。そのために八戸から茨城県の沿岸被災地に無書店地域も生まれてくる。

*その他にも学校校舎の崩壊とそれがもたらす書店への教科書も含んだ影響、教科書の電子書籍化への懸念、取次各社の保険制度の変更問題なども語られているが、最後に彼のそのままの言葉を引用する。

「出版業界も困っていることは困っている。できるだけ速い対応をお願いしたい。返品入帳にしても、物がない、家がない、人間もいない状況もある。伝票操作で済むところは済ませてほしい。有事の対応、これまでの常識を超えた判断、物事の処理をお願いしたい。」

[玉山が語っている最後の言葉にどのように応えたらいいのだろうか。彼の最も気懸りは在庫が流失し、返品もできなくなってしまったにもかかわらず、これから取次に対しての支払いが生じてくることだと思われるからだ。

具体的にひとつの例を挙げてみる。それは在庫1000万円の雑誌と書籍を持つ書店が地震津波によって、店も商品もすべて失われてしまった。この時点で書店の在庫のバランスシートを考えてみよう。

在庫の1000万円のうちの500万円はすでに支払済みで、残りの500万円分が未払いだとする。その未払い分は常備、長期、延勘、新刊などである。しかし被災書店では返品伝票も含んですべてが失われてしまったと考えられるので、現物もなく明細もわからない。しかし取次には売掛金として500万円が残されている。従来の取引制度からすれば、この未払い分も書店は払う義務があるが、「これまでの常識を超えた判断」を導入し、一時的な支払猶予ではなく、すべてを徳政令として処理する。

そしてこの取次の被災書店に対する売掛金全体を見極め、それらを出版業界関連の寄付や義捐金、出版社による常備などの請求放棄などによって相殺する。

このような被災書店再生のプロセスを範として、危機の只中にある出版業界全体の再生の道を模索すること、それは私だけの妄想にすぎないのだろうか]

4.3の返品問題に関して、日書連と取協連名で、出版社に対して、次のような要望が3月24日付で出された。

現地被災地では、国・政府による懸命な救助・救援が行われております。その影響で、一般物資の搬入や車両そのものが、立ち入り禁止となっております。出版物輸送についても、16日からの隔日配送を実施し、運送会社様のご努力と出版社様のご理解、ご協力のもと22日より通常通りの配送が可能となりましたこと、感謝申し上げます。しかしながら、このような状況の中、配送が出来ない被災地域を含む全国の書店様では、既に販売期間を超過した商品、またこれから返品期限切れとなる商品が発生することが予測されます。現段階でお願いすることではないかと存じますが、被災地域の羅災書店様の遺失・汚損・破損商品に対する格別のご配慮と、配送の遅延による今後発生が予測される返品期限切れの延長など、何卒格別のご配慮を賜りますようお願い申し上げる次第です。

それに続いて4月4日付で、取協から出版社に対して、「地震による被災書店様在庫返品の特別処理と輸送遅延による返品受付期限の延長のお願い」も届いている。

これは阪神大震災の特別処理を参考にしたもので、その対象は「東北地方太平洋沖地震被災店舗」とされている。
そして「特別処理対象商品」と「全損による回収不能品」の返品基準が記されているので、多少長くなってしまうが、そのふたつを以下に示す。

特別処理対象商品について

(1)水濡れ、汚損、破損の程度が著しい商品、一部減失等で原形を留めていない商品については、現品及び現品から作成した返品伝票(データ)の代替としてスリップもしくはカバー等商品を特定できるもの、一覧表での返品入帳をご了承願います。

(2)買切品、期間切商品についても特別に入帳をお願い致します。

(3)火災による焼失、津波等による消失、及び店舗倒壊等により現品回収が困難な遺失商品については、取次各社が管理する個店在庫情報、送品・返品・POS実績等から取次各社と罹災書店様の責任において特定した商品明細をもって返品入帳をご了承願います。

(4)現物が存在するもの、現物の代わりにスリップが存在するものについては、当該の金額についての入帳処理をお願い致します。

全損による回収不能品について

(1)被害状況がわかるものを提供致します。(罹災証明・写真など)

(2)在庫の特定は、取次(送品・返品・売上)および書店(棚卸・在庫)データを使用して作成した在庫リストに基づき確定致します。

(3)【書籍】常備商品は対象書店の送品実績に基づき書店ごとに確定させます。

(4)上記(1)より(3)の資料に基づき特定された金額についての入帳処理をお願い致します。

これらに対して、雑協は「特別処理」の(1)を認め、その場合の写真による確認を、書協は同じく(1)について、基本は現物返品ではあるが、困難なものには写真確認や裏づけデータなどを求める回答を出し、雑協と書協のいずれもが取次と出版社が双方で負担すべきだとの見解を出している。

[先の大震災出版対策本部のプロジェクトやプランにしても、取協、雑協、書協の返品処理対応にしても、これもまたほとんどリアリティが感じられないと思うのは私だけだろうか。

まして における最もリアルな被災書店の言葉を聞いた後では、これらのすべてが否応なく空疎なものに見える。そしてそれらが東日本大震災に関する政府の対応と酷似していることに気づく。「東日本大震災は未曾有の大震災であり、書店業界の被害額も阪神淡路大震災時の10倍20倍とも言われております」(取協)と記してあるにもかかわらず、現実的には阪神淡路大震災の返品処理から一歩も出ていないように思える。返品処理にあたっても「10倍20倍」の想像力が必要とされているのに、それがまったく発揮されていないことを証明している。そしてあらためてそのような想像力の欠如こそが出版業界の失われた十数年の最も大きな問題であったと考えざるをえない]

5.総合月刊誌の5月号がいずれも東日本大震災特集を組んでいる。

『文藝春秋』は「東日本大震災日本人の再出発」、『中央公論』は「3.11と日本の命運」、『世界』は「生きよう!」として、それぞれの自誌の執筆者たちを中心とする総花的特集である。

文藝春秋 中央公論 世界

[しかし に示されたような東北地方の書店の壊滅的な被災を知った後で、これらの特集を読むと、違和感を覚えざるをえない。
そこには「編集だより」(『文藝春秋』)、「編集後記」(『中央公論』)、「読者へ」(『世界』)といった出版社からの発信まで含めても、現在の出版業界において、最も苦境にある東北の書店に対する何のいたわりや激励の言葉すら発信されていないのはどうしてなのだろうか。

これらの総合月刊誌にしても、今日まで存続してきたのはひとえに書店が売る努力をしてきたからで、そのような事実すらも出版社や総合月刊誌の編集現場は念頭にないのだろうか。

日本の出版業界はマス雑誌を中心にして構築されてきた。そして出版社・取次・書店という強固な近代出版流通システムが全国的に整備されていったのだが、そこには出版社や編集者の、販売現場たる書店への絶えざる注視とフォローがあった。出版業界の失われた十数年とはこのような関係すらも切断してしまったのかもしれない]

6.CCCやブックオフの被害状況にもふれておくべきだろう。CCCのTSUTAYA1400店のうち、震災や津波の被害を受けたのは709店で、ほぼ営業を再開しているが、閉店のままの21店のうち、7店は津波の被害を受け、8店は倒壊し、3店が修繕、1店は原発避難地域にあるようだ。

[これは と同じ『文化通信』(4/25)のCCC、MPD、日販の「東日本大震災被災者支援こころプロジェクト」に関する記事から抽出したものだが、この数字からすると、TSUTAYAフランチャイズ店が東北地方に集中していた事実が浮かび上がってくる。とすれば、東日本大震災TSUTAYAフランチャイズ店のみならず、CCC、MPD、日販をも直撃したことになる。それはどのように顕在化していくであろうか。

その一方で、CCCは増田宗昭によるMBOが成立し、筆頭株主はMMホールディングスに移動し、上場廃止となる。こちらもまったく予期していなかった東日本大震災と連動している。これもTSUTAYAFC店、MPD、日販へどのような影響を及ぼしていくのだろうか]

7.ブックオフの佐藤弘志社長が『日経MJ』(4/13)の「パスファインダー」欄で、東日本大震災の影響などについて語っている。

それによれば、直営店とフランチャイズ店で50店以上が閉店し、宮城、福島県などのFC加盟6社が被災した。そのために仙台で4月12日オープン予定だったブックオフスーパーバザー仙台さくら野店の開業を延期せざるをえなかった。

また震災後の首都圏売上は3割減ったが、旗艦店を中心に徐々に回復しつつある。BSBと都市型ブックオフは池袋や秋葉原でもそれぞれ1億円以上の利益を計上しているので、これからも積極的に出店する。

[出版業界の危機と売上の減少はブックオフにも投影され、衣料やスポーツ用品も含んだ大型複合店舗のBSBの出店と開発がその将来を左右することになるだろう。

しかしTSUTAYAと同様に、問題となるのは大震災後におけるFC店の動向で、これを機にして両社のフランチャイズ商法は曲がり角を迎えたように思われる。

なおブックオフ創業者の坂本孝は銀座で高級焼鳥店を始め、またしても上場とフランチャイズ化を狙っているかのようである]

8.『出版ニュース』(4/上)に八木書店/第二出版販売の八木壯一が「バーゲンブックの新しい流れ」という一文を寄せ、日本におけるバーゲンブック小史と現在の状況を報告している。

八木の定義によれば、「バーゲンブック」は出版社の意思によって価格拘束を外した書籍をさし、具体的には出版社から卸業者に売られた新本で、特価本、自由価格本、アウトレット本とよばれているものである。だから読者や消費者から仕入れ、販売する「古本」や「新古書(新古本)」とは異なり、こちらを「第三次流通」とすれば、「バーゲンブック」は「第二次流通」と見なすことができる。
このバーゲンブックは三省堂神保町本店、東京堂紀伊國屋梅田店、有隣堂ジュンク堂池袋本店、旭屋本店などが常設コーナーを設け、第二出版販売も全国の新刊書店などでバーゲンブックフェアを常時開催し、どこもそれなりに盛況のようだ。

[再販制のなかった明治後半から昭和戦前にかけてのバーゲンブックの歴史を語っていくときりがないので省略したが、関心のある読者は八木の戦後も含んだ「バーゲンブック小史」を見てほしい。

それこそ東日本大震災後にあって、紙とインク不足は深刻になりつつあり、この影響は夏頃から本格的に出てくるだろう。だからバーゲンブックの定義を時限再販まで含め、これまで以上に既刊在庫をどのように売るべきか、出版業界は真剣に考えなければならない時期へと確実に入っている]

9.『出版月報』(3月号)が「いま注目の“出版社発”マルチメディア商品」特集を組み、09年から10年にかけての主なものをリストアップしているので、まずそれを示す。

■主なマルチメディア扱い商品
出版社名タイトルジャンル
NHK出版シリコン型付き!かわいいお菓子ブッククッキング
角川マーケティング発行
角川グループパブリッシング発売
はらじゅく畑のヘルシー食堂 5WAYシリコンスチーマーつきクッキング
幻冬舎シリコンスチーマー付栄養たっぷり楽ちん!クッキングレシピクッキング
GINGERビューティ小顔の作法美容系
幻冬舎エデュケーションどうぶつしょうぎ玩具
ジーオーティー吉沢明歩COMPLETE BOXアダルトグッズBOX
佳山三花COMPLETE BOXアダルトグッズBOX
シネマファストはくだけダイエット美容系
DVDはくだけダイエット美容系& DVD
集英社D&G2010―2011 FALL/WINTER COLLECTIONブランドグッズ
小学館おうちで毎日焼きドーナツクッキング
はじめてでもちゃんと作れるルクエごはんスペシャルセットクッキング
AKB48オフィシャルカレンダーBOX2011「PRESENNT〜神様からの贈り物〜」カレンダー
新人物往来社×トーハンRYOMA GRAPHICS歴史グッズ
人文社×トーハンミウラ折り東京23区バス路線図地図
大江戸地図帳 時代小説副読本地図
世界文化社Paris発、パウンド型で50のケーククッキング
COCKTAIL PARTY!クッキング
Paris発、マドレーヌ・サレ&シュクレクッキング
ダイヤモンド社×トーハン遺言書特別パッケージ遺言書キット
宝島社禁煙・減煙キット 電子タバコ付き電子たばこ
マイケル・ジャクソン ヒストリーDVD BOXDVD
くるりユーミン シャツを洗えばCD
Cher 15th ANNIVERSARY BOXブランドグッズ
トムとジェリー プレミアムDVD BOXDVD
LESPORTSAC 2010 spring&summer(style1,2,3)ブランドグッズ
MY LITTLE LOVER×kitson ハーモニーCD
電子たばこヘルシーコンセント充電タイプ電子たばこ
ウルトラマンしょうぎ玩具
スッキリ美顔ローラー美容系
テルミンで音を奏でよう玩具
KODA KUMI 10th Anniversary BEST LIVE DVD BOXDVD
ハリーポッターと賢者の石 DVD BOXDVD
ハリーポッターと秘密の部屋 DVD BOXDVD
体の中から元気になれる パピヨットレシピクッキング
宝島社×トーハン親子のたいやきくん お楽しみBOOKクッキング
竹書房コロコロ美顔エス美容系
辰巳出版最強小役カウンターカンタくん3パチンコ・パチスロ
徳間書店×トーハンヘアアレンジBOOK ROCONAILS デザインのTRUE付き美容系
日本ヴォーグ社×トーハンかぎ針あみのかんたんキット手芸
ぴあトムとジェリーDVD名作集 日本語吹き替え版DVD
白夜書房究極攻略カウンター勝ち勝ちくん2.1(スケルトン、グリーン、レッド、パープル、マリン)パチンコ・パチスロ
マガジンハウスDVD ザ・トレーシー・メソッド(1〜3)DVD
DVD ザ・シェーン・タイチーDVD
DVD 草刈メソッドDVD
メディアパルダイエットフープエクササイズwith DVD美容系&DVD
メディアファクトリー昆虫物語 みなしごハッチスペシャルセレクションDVDDVD
メディカ出版さくさく 人工呼吸ケアトレーニングDSゲーム
ルピシアトレーニングTea Party お茶にしましょ食品


宝島社、小学館世界文化社主婦と生活社幻冬舎の商品に関しては写真も掲載されていて、大半が初めて目にするもので、これらの市場規模は100億円に及んでいるという。

[取次において、書籍、雑誌、コミックス、ムック意外のものを「マルチメディア商品」と総称していたが、表にあるようなグッズに近い商品の間口を広げたのは宝島社で、座視付録もその開発とパラレルであったことがよくわかる。

これらを眺めていると、ヴィレッジヴァンガード化する出版業界というイメージが浮かんでくる。

この商品市場の成長はまだ始まったばかりで、まだまだ伸びると確信すると特集は結ばれている]

10.オーストラリアの書店最大手のレッドグループが経営破綻。

同社はオーストラリア、ニュージーランドで「ボーダーズ」や「アンガス・アンド・ロバートソン」など260店を展開するオセアニア地域最大の書店で、09年売上高は6億8500万豪ドル(600億円)だった。

負債は1億6980万豪ドルで、38店舗を閉じ、従業員2300人のうち347人を解雇。電子書籍問題というよりも、海外インターネット通販と豪ドル高による競合が最大の原因とされている。ネット価格はリアル書店の半額になっていたためだ。

本クロニクル34でもアメリカの大手書店チェーン第2位のボーダーズの倒産を伝えたばかりだが、オーストラリアでもそれが起きてしまったことになる。アメリカの第1位のバーンズアンドノーブルもお赤字続きで、予断を許さない状況にある。

日本もそれこそ東日本大震災による連鎖倒産を回避する方向性を見出さなければ、かなり多くの書店が同じような立場へと追いやられてしまうだろう。出版業界はとにかく後がないことを切実に自覚すべきだ]

11.『ぴあ首都圏版』が7月で休刊。72年創刊で、80年代は50万部を超えていたが、ネット時代を迎え、最近は10万部を割りこんでいた。

[アナログ情報誌としての『ぴあ』も40年を経て、ついに廃刊になったと考えていいだろう。街があり、映画館や劇場があり、雑誌があり、映画、演劇、音楽会が上映、上演、開催されていた時代が終わってしまったといえるかもしれない。

ぴあは映画に関して、テレビ向け動画配信のアクトビラと連携し、映画情報サイト「ぴあ映画生活」を通じ、ビデオ・オン・デマンド情報を提供していくようだ]

12.吉村昭の『三陸海岸大津波』(文春文庫)が急遽5万部重版したと伝えられるとほぼ同時に、その吉村の闘病と死を描いた津村節子の「紅梅」が『文学界』5月号に掲載された。

前者の04年の「あとがき」には「今も三陸海岸を旅すると、所々に見える防潮堤とともに、多くの死者の声がきこえるような気がする」とあった。

三陸海岸大津波 文学界 5月号

[東日本大震災と『三陸海岸大津波』の重版に、「紅梅」の掲載が重なってしまったことは偶然のようには思われない。もちろん津村の意図はそこになく、「紅梅」の執筆は大震災以前であるし、それに『三陸海岸大津波』への何の言及もない。私にしても「紅梅」を大震災に引きつけて読んだわけではない。ただ吉村の死にひとつの戦後文学の終わりを感じたこと、それが大震災のもたらす何ものかの終わりとつながっているような思いにとらわれたのである。

「紅梅」は私小説と見なしてよく、吉村夫妻の戦後の作家としての生活が否応なく書きこまれ、それが同人誌とともにあったこと、戦後の文学と出版業界の隆盛とパラレルで、吉村が独自に記録文学や歴史小説に進み、また津村も同じように独自に夫とは異なる文学の道を切り開いていった事実が浮かび上がってくる。

だが「紅梅」に書きこまれているそれらの同伴者たちの多くの死、そして最後に描かれた吉村の死によって、そのような時代も終わってしまったことを告げている気がする。

そういえば、吉村が描いた三陸海岸大津波の昭和8年に亡くなった詩人がいる。それは「雨ニモマケズ/風ニモマケズ」に始まる詩を手帳に残して死んだ宮沢賢治だった]

13.論創社の「出版人に聞く」シリーズだが、4 として元リブロ/ジュンク堂の中村文孝の『リブロが本屋であったころ』が「本を売ることもひとつの想像力である」の帯文で、5月下旬に刊行される。

続いて本クロニクル35でも既述したシリーズ5 として、能勢仁の『本の世界に生きて五十年』の編集もほぼ終えたので、こちらもほどなく出版できるだろう。

またシリーズ6 として、筑摩書房の菊池明郎の『営業と経営から見た筑摩書房』、シリーズ7 として福島の古書ふみくらの佐藤周一の『震災に負けない古本屋』も、すでにインタビューを終えているので、夏までに刊行予定のつもりでいる。

これから毎月インタビューを続け、刊行の目安がたった段階で発表していくので、ご期待ください。


《既刊の「出版人に聞く」シリーズ》

「今泉棚」とリブロの時代 盛岡さわや書店奮戦記 再販制/グーグル問題と流対協

◆バックナンバー
出版状況クロニクル35(2011年3月1日〜3月31日)
出版状況クロニクル34(2011年2月1日〜2月28日)
出版状況クロニクル33(2011年1月1日〜1月31日)
出版状況クロニクル32(2010年12月1日〜12月31日)
出版状況クロニクル31(2010年11月1日〜11月30日)
出版状況クロニクル30(2010年10月1日〜10月31日)
出版状況クロニクル29(2010年9月1日〜9月30日)
出版状況クロニクル28(2010年8月1日〜8月31日)
出版状況クロニクル27(2010年7月1日〜7月31日)
出版状況クロニクル26(2010年6月1日〜6月30日)
出版状況クロニクル25(2010年5月1日〜5月31日)
出版状況クロニクル24(2010年3月26日〜4月30日)
出版状況クロニクル23(2010年2月26日〜3月25日)