出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル51(2012年7月1日〜7月31日)

出版状況クロニクル51(2012年7月1日〜7月31日)

私は日常の習慣として、午前11時頃スーパーなどに買物に出かけている。たまたまその日は用事ができて行けなかったのだが、まさに同日同時刻に高齢者の運転する車が駐車場から猛スピードで同じスーパーに突っ込み、店内にいた客たちをはね、5人の死傷者が出た。近年このような高齢者による車の事故が増えているようだ。
その死者は主婦で、夕食の買物に出かけ、そのまま帰ってこなかったことになる。でもそれは私であったかもしれないのだ。この事故が告げているのは、「街角の煙草屋までの旅」吉行淳之介)ならぬ、「町のスーパーへの旅」も何が起きるかわからないという事実に他ならない。
街角の煙草屋までの旅
その主婦と同様に、3.11の2万人近い死者たちも、地震が起きる5分前には自らの死を予想だにしていなかっただろうし、多くの被災者たちも自らの家を失い、避難するようになろうとは思いもよらなかったにちがいない。
同じころ、1982年に田畑書店から出された森薫樹の『原発の町から』を読んだ。これはサブタイトルに「東海大地震帯上の浜岡原発」と付されているように、中部電力浜岡原発をめぐる当時の問題の詳細なレポートであり、3.11以前の福島原発も、建設事情も含め、同じ状況に置かれていたと見なせるだろう。同書に引かれている原子力委員会会長や科学技術庁原子力局長の、原子炉は関東大震災の3倍にも耐える設計なので、大地震があれば、原子炉建屋に避難すればよいとの発言には唖然とするばかりだ。中電や県はこの発言に基づき、安全性を強調したという。
原発の町から
現在は停止しているが、私たちもまた3.11以前の福島の人々と同じ状況に置かれているのだ。


1.『日経MJ』(7/18)の第40回「日本の専門店調査」が出された。「書店・文具」部門を示す。なおゲオとCCCは「楽器・CD」部門にあるので、抽出し、その下に載せる。

■2011年 書店売上高ランキング
順位会社名売上高
(百万円)
伸び率
(%)
経常利益
(百万円)
店舗数
1紀伊國屋書店109,806▲2.843064
2ブックオフコーポレーション75,7163.23,8031,016
3ジュンク堂書店51,1357.0▲62450
4有隣堂50,638 ▲6.571645
5未来屋書店48,014 2.11,513222
6ヴィレッジヴァンガード37,276 6.5 3,462365
7フタバ図書37,072▲3.786065
8文教堂35,524 ▲10.850184
9トップカルチャー(蔦屋書店、峰弥書店TSUTAYA32,405 7.61,02672
10丸善書店28,117▲14634
11三洋堂ホールディングス27,629 ▲1.361886
12三省堂書店27,552▲2.57835
13リブロ(ロゴス、mio mio、よむよむ)23,472 ▲5.288
14カルチェ・イケダ(くまざわ書店22,996▲1.195
15精文館書店18,704 2.755348
16ニューコ・ワン18,02935
17キクヤ図書販売15,524▲3.929
18神奈川くまざわ書店14,2343.474
19文真堂書店13,866▲4.0125
20オー・エンターテイメント(WAY)13,588▲1.737451
21あおい書店12,911▲7.41040
22すばる11,684▲4.015031
23京王書籍販売啓文堂書店10,703 ▲1.743
24アシーネ9,676 0.593
25戸田書店9,18312.010837
26四国明屋書店6,663 −3529
27くまざわ3,6050.714
 ゲオホールディングス
(ゲオ、ジャンブルストア、セカンドストリート
258,2442.016,4641,468
 カルチュア・コンビニエンス・クラブTSUTAYA172,6071.59,8541,469

[例年の如く、利益率が高いのはブックオフヴィレヴァン、次に複合店のフタバ図書トップカルチャー、三洋堂、それにショッピングセンター内の未来屋が続き、そして最後に書籍販売をメインとする紀伊國屋ジュンク堂有隣堂が位置している。

これらの数字は要するに書籍を売れば売るほど利益が上がらないという再販制度下の書店状況をよく伝えている。それは取次の大阪屋と同じ構造であり、利益率から見れば、何のための大型書籍店なのかを問われることになる。書籍を売ることによって利益を上げるようにするためには、時限再販と自主仕入れの方向に進むしかないことは明白であろう。

ブックオフについては本クロニクルでも既述したように、増益増収であるのだが、様々に伝わってくる、新刊買い入れ不振、書籍シェアの低下、不良在庫の増加、FC出店の不調といった内情からすれば、新古本産業としてはピークアウトしているとも考えられる。それはスーパーバザーの出店が進めば、さらに加速していくのではないだろうか。

それにしてもブックオフ、ゲオ、CCCの突出した千店を超えるチェーンを見ると、出版業界の失われた十数年が、彼らの成長の時代でもあったことがよくわかる]

2.出版科学研究所による12年上半期の推定販売金額を示す。

■2012年上半期 推定総販売金額
 推定総販売金額書籍雑誌
(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)
2012年
1〜6月計
901,571▲2.4433,748▲2.0467,823▲2.9
1月119,254▲7.156,300▲8.462,954▲5.9
2月167,797▲1.286,4954.381,303▲6.4
3月213,6571.9113,9282.199,7291.7
4月141,512▲5.764,723▲6.176,789▲5.3
5月118,355▲0.652,056▲2.666,2990.9
6月140,994▲4.330,245▲6.180,749▲2.9

[上半期販売額は9016億円で、前年同期比2.4%減。内訳は書籍が4337億円で、同2.0%減。雑誌は月刊誌が3650億円で、同3.5%減。週刊誌は1028億円で、0.8%減。上半期の落ちこみは2.4%にとどまっているが、下半期は消費増税のこともあり、さらに落ちこむであろうし、3%近い落ちこみは必至と考えられる。

そのように想定すると、12年の出版物売上高は1兆7500億円であり、96年の2兆6563億円に対し、9000億円のマイナスという事態になる。これはこの何年かの1年の書籍売上高を超えるものである。そしてこれはまだ下げ止まりではないわけだから、絶望的な数字をまたしても出版業界は突きつけられることになる]

3.アルメディアによる12年上半期の書店の出店、閉店数が出されたので、こちらも掲載しておく。

■2012年上半期 出店・閉店状況(面積:坪)
◆新規店数総面積平均面積◆閉店数総面積平均面積
1月314950453,22785
2月971980943,45544
3月345,840172956,48878
4月254,299172763,98661
5月132,556197592,60853
6月111,378125786,56792
上半期合計9514,94115744726,33168
前年同期実績15125,21116739526,43774
増減▲56▲10,270▲1052▲106▲5
増減率(%)▲37.1▲40.7▲5.813.2▲0.4▲7.1

[新規店は今世紀に入って毎年必ず半期で100店を超えていたので、今年は最低ということになる。一方閉店数は10、11年を上回る447店で、出店の減少、閉店の増加によって、減少面積は1万坪を超えた。

下半期の動向だが、景気の後退もあり、こちらも出版物売上高の減少と同様に、さらに出店の減少、閉店の増加は続いていくと考えられる。そして日書連加盟店も減少し、日書連から脱退する県も増えていくことになるだろう]

4.日本図書普及の図書カード発行高が583億円で、前年比22.5%減、回収高は図書券も含め592億円で同6.5%減。

[発行高は2000年の771億円、回収高は01年の720億円がピークであったから、失われた10数年は図書カードにも反映されているとわかる。

それはまた と連動する加盟書店数の減少も原因となっている。かつて図書券加盟書店数は90年代に1万4千店近くを数えていたが、図書カード加盟店は7802店、同カード読み取り機設置店数は1万618店であり、これらも前者は322店、後者は247店の減少を見ている。

それから皮肉なことに近年ブックオフは図書カード使用ができなくなっているので、このことも回収高の減少に影響を与えているのだろう]

5.と同じく『日経MJ』(7/23)が、上場を廃止した一年後のCCCの現在を特集している。それを要約してみる。

*Tポイント会員は4093万人で、20代は67%が加入しているのに、60代は18%であることから、シニア層を呼びこむために60歳以上は旧作DVD1枚を無料レンタル、代官山蔦屋書店の旅行ガイド本コーナーの各種サービスもシニア層向けがあり、また同店の内装デザインも、リフォームを考えるシニア層の市場を狙う。

*新たな収益源を必死で探索しているのは、売上全体の7割を占めるTSUTAYAI事業のレンタル市場が減少し、ゲオの50円レンタルと競合し、レンタル価格の下落も激しいからだ。

MBO(経営人が参加する買収)に伴った銀子からの借り入れ金は1000億円で、今期末には残高を600億円まで圧縮する予定だが、そのためにはキャッシュフロー対策が必要である。

MBOの成功のハードルは高いが、その資金の出どころが投資ファンドではなく、銀行借り入れであることは救いになっている。しかしそれでも継続的フリーキャッシュフロー収益構造の確立が急務だ。

*CCCとヤフーが共同出資したポイント事業会社が10月から発足。ヤフーのポイントをTポイントに統合し、CCCはネット領域のポイント事業の足場を得ることになる。

[これは『日経MJ』の一面特集にしてはできのよい記事ではない。要するにそれはMBOから代官山蔦屋に至るCCCのコンセプトが明確ではなく、その上CCCが公式発表以外の取材にも応じていないことから生じたもののように思われる。また周辺取材はポイント事業関係だけで、MPDとの関係に踏みこんでいないことも原因だが、CCCの代官山プロジェクト以後の方向性がよく見えないことも作用しているのだろう。

当初いわれていた日販と組んでの中国への進出、代官山蔦屋書店をコンセプトにした新たなビジネスモデルの構築はどうなったのだろうか。

で記しておいたように、書籍は売れば売るほど利益が上がらない構造になっているわけだから、それにマガジンハウスのかつてのコンセプトを導入したところで、シニア層がただちにとりこめ、キャッシュフローが潤沢になるといった幻想は、書籍市場と最も無縁のものであることは指摘しておかなければならない。

『代官山×オトナTSUTAYA読本』(耷出版社)はヴァニティフェアの見本のように映る。そういえば、10年に出た『松岡正剛の書棚』中央公論新社)の松丸本舗は9月末で閉店するという。

また代官山プロジェクトに関して様々な噂も聞こえてくるが、それらは未確認なので、ここではふれない。ただ『サイゾー』8月号が「ツタヤとの”キケンな”提供がヤフーを失速させる!?」という記事を掲載していることだけは記しておこう]

代官山×オトナTSUTAYA読本 松岡正剛の書棚 サイゾー 8月号

6.本クロニクルでも何度も言及してきたが、電子書籍や書店をめぐるフォーラムなどに必ず日本出版インフラセンター(JPO)が介在している。

このJPOとは何なのか。その前運営委員会副会長の佐藤善孝が、設立され10年経った「日本出版インフラセンターの現在」なる一文を、『出版ニュース』(7/中)に寄せているので、これも要約してみる。

一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)は、平成14年に有限責任中間法人日本データセンター(JPDC)として設立。
*設立社員(株主)は書協、雑協、取協、日書連、日図協の5団体。

*設立目的は出版情報及び出版情報システムの基盤整備を図り、出版と関連産業の発展に寄与すること。

*ビジネスモデル研究委員会の発足に際し、他の研究も始めるために運営委員会を立ち上げ、講談社の野間社長が委員長となり、当初より幅広いインフラ活動をめざし、JPOと名称を変更し、今では社員(会員社)は49法人である。

*4つの部門があり、それぞれいくつかのセンター、事務局、委員会などにわかれている。それを示す。斜線右が傘下の組織である。

1 商品情報管理部門/近刊情報センター、商品基本情報センター
2 コード管理部門/書店マスタ管理センター、雑誌コード管理センター、図書管理センター
3 事業開発部門/パブリッシャーズ・フォーラム事務局、フューチャー・ブックストア・フォーラム事務局
4 研究委員会/ビジネスモデル委員会、ICタグ研究委員会、中古図書販売研究委員会、電子出版コード管理研究委員会

[これらのうちの3と4は経産省の「支援」や「指導」に基づき、助成金を得ていることからすれば、JPOの本来の目的は1、2であったはずなのに、いつの間にか経産省の「支援」や「指導」による研究会と事務所化していったことになる。その仕上げが出版デジタル機構ということになるのだろう。。

しかしわずか49法人からなるJPOが経産省と組み、「支援」や「指導」によって出版業界を動かしていくという構造は、きわめて倒錯したものではないだろうか。前述の5団体が含まれているからといって、書協に加盟している出版社は全体の1割ほどで、零細、小出版社が年間数十万円に及ぶ会費の負担が大きいので、入会していないことからすれば、JPOが出版業界の代議制に適っているとはいえないだろう。それに出版は官ではなく民に属するという事実と原則に照らし合わせても、奇妙な事態ではないだろうか。

出版はテレビや新聞と異なり、官の許可を得ることなく、誰もができる民間のメディアであることを今一度想起してほしい。

このような状況の向こう側に透けて見えるのは、教科書をめぐる電子書籍化問題であり、経産省のJPOに対する「支援」や「指導」なども、その撒き餌のように思われてならない。

それに最後にいっておけば、これらのJPOの研究委員会や事業開発部門の活動も、すべて出版業界の失われた十数年とパラレルに行なわれてきたにもかかわらず、進行する出版危機に対して、実質的に何ら有効な手立ても方針も対策も実行できていない。それは研究員会や事業開発部門の活動が、目の前にある出版危機の構造を明確に把握しておらず、ただ経産省の「支援」や「指導」に従っているからのように思えてくる。

またしても、3のフューチャー・ブックストア・フォーラム第2期の書店に関する3つの研究ワーキンググループが発表されたが、そんな経産省の「支援」や「指導」の研究のかたわらで、さらに書店は消えていくだろう]

7.楽天電子書籍端末「コボタッチ」を、先行する端末の半額7980円で発売。

宣伝コピーは「読書に革命を。新しい楽しさを。」で、「来るのかこないのか、もやもやしていた電子ブックの時代が、いよいよ日本でもスタートします」とあった。

8.7を受けて、ソニーの読書端末「リーダー」の宣伝コピーは「読書がもっと自由になるのが電子書籍の本質。だからソニーは、様々な機器から独書を楽しめるようにしました。」

9.アマゾンも9月にキンドルを発売し、電子書籍配信を開始。

[これらの背景については『週刊東洋経済』(7/14))の「アマゾン来襲に着手、楽天電子書籍投入」にレポートされている。
なお「コボタッチ」は発売1週間で10万台売れ、電子書籍も予想の4、5倍の売れ行きだと伝えられている。

その後起きた「コボタッチ」の初期設定の不具合や使い勝手の悪さの問題について、楽天の三木谷社長は日経ビジネスDigital速報の単独インタビューに応じ、kobo騒動を「細かいことで騒いでいるのは少数派ですよ」と語っている]
週刊東洋経済(7/14)

10.先に示した電子書籍をめぐる動向とパラレルに、主なものだけで、次のようなシンポジウムやセミナーが開催された。

*出版広報センター主催のシンポジウム

「電子書籍時代に出版社は必要か」(赤松健、植村八潮、岡田斗志夫、三田誠広、コーディネーター・福井健策)

*国際電子出版EXPO専門セミナー

「新しい電子出版はこうなる!〜書籍・雑誌をどう変える」(岩本敏、港千尋、梶原治樹、コーディネーター・高野明彦)
及び国際講座「人が求める書籍/出版に私たちはどう応えていくのか」(三木谷浩史、野間省伸、ビル・マッコイ、司会小城武彦)

*文字活字文化推進機構による緊急シンポジウム

「文字・活字文化の将来とデジタル教科書を考える」(川島隆太、斎藤孝、林真理子、藤原和博、コーディネーター・肥田美代子)

[これは出版業界に限ったことではないが、シンポジウムという形式は、真剣な論議にふさわしいとはとても思われない。自らの経験からいっても、限られた時間の中での発言は満足のいくものではないし、他の論者たちとのコミュニケーションも同様である。それにコーディネーターが議題にふさわしい人物なのかが疑わしい。

要するに人と様々な発言を揃えているかのようによそおっているシンポジウムなるものは、主催者側のアリバイ工作、もしくは見せかけのパフォーマンスの場合が多い。しかし繰り返し実施さえることで、それなりに論議は尽くしたという結果になるのだろう。

だがこのようなことを繰り返しているうちにも、さらに出版危機は深刻になっていっているのだ]

11.インプレスによる11年度の日本の電子書籍市場売上高が発表され、629億円で、前年比3.2%減。ケータイ向け市場が落ちこみ、480億円と16%マイナスとなったためだ。それでも市場の76%を占める。新たなプラットフォームに向け、電子書籍市場は24億円から112億円と363%増。16年には2000億円市場と予測。

[本クロニクルでも既述しているように、出版デジタル機構を代表して、植村八潮が電子出版は16年に2000億円市場になるという発言をした。その発言に何の根拠もないこと、出版業界の歴史、構造、現在の状況から見ても、机上の空論にすぎないこと、もし仮にそれが達成されたとしても、紙の分野にそれ以上のマイナスが生じ、現在のような出版業界は必要でなくなる事態を招くことを、本クロニクル4812で詳述しておいたので、もう一度読んでほしい。

それにしてもあきれてしまうのは、明らかに根拠のない数字が現実に可能な数字のように信じられてしまい、関係者もまた横並びにそれを喧伝していく電子書籍状況のいかがわしさである。

マスコミ、メーカー、販売側はともかく、出版業界は当事者であるのだから、冷静な判断が不可欠なのは自明なはずなのに、業界紙から大手出版社までが一丸となって、電子書籍狂騒曲に浮かれている。ケータイ市場とのゼロサムゲームの可能性も考えられるのに。それこそが出版危機の実態を語って余りある]

12.トーハンは三和銀行出身で財務顧問の藤井武彦が社長に就任し、ガバナンスの改善をし、新生トーハンを強調していたが、株主総会で講談社の野間省伸社長を社外監査役に再任したところ、講談社は再任を否定する事態となった。トーハンの社長人事をめぐる株主としての講談社の抗議と見られている。

株主総会では角川春樹事務所の角川春樹、幻冬舎の見城徹、ジュンク堂の岡孝充、大盛堂の船坂義雄からも新たな役員人事に関する質疑が相次いだという。

[電子書籍狂騒曲が奏でられる一方で、トーハンの社長人事をめぐる事件は根が深く、このままで終わりそうもない。質疑に立った人々は講談社と異なり、大株主ではない。それならば、他の大株主出版社は静観しているのだろうか。それとも講談社の対応を見ならうのだろうか。

また文教堂16店の日販への帖合変更が伝えられているが、これもトーハンの社長人事と関係しているのだろうか]

13.神田村の取次である樋口書店が廃業、1963年創業の専門取次で、書籍の売上が落ちこみ、出版社への支払いを含めた資金繰り悪化が原因という。

[まだ専門取次は残っているにしても、出版業界の象徴でもあった神田村という言葉はすでに終焉したと思われる]

14.教学研究社が破産、負債は6億円。同社は1946年創業で、大阪を本社とするが、学参の老舗出版社であり、03年の売上高は17億年だった。だが07年には12億円に落ちこんでいた。

[近代出版業界の歴史から見て、まず全国各地で教科書と学参の出版が立ち上がり、それに雑誌と書籍が続き、両者がクロスすることで、東京を中心とする取次システムが全国的に普及していったことになる。

それは出版すべての分野に当てはまるが、その中でも学参は小、中学生の増加によって成長してきたゆえに、近年の少子化の影響をダイレクトに受け始めたといえる。電子書籍の影響を受けやすい学参出版社の倒産は、今後も続くだろう]

15.『FACTA』8月号が「『子連れ狼』に突かれた登録制の穴」と題し、原作者小池一夫の重複譲渡問題を掲載し、次のように始めている。

「国民的人気を誇る『ゴルゴ13』、そして世界に日本マンガのユニークさを伝える先駆けとなった『子連れ狼』。数々の革命的な劇画原作で、日本のエンターテインメント史に確かな足跡を残した小池一夫氏の最後の作品は、法の抜け穴を駆使した「知能犯罪」がテーマのようだ。しかもフィクションではなく、自ら手を下す。舞台はなんと著作権法と文化庁だ――。」

ゴルゴ13 子連れ狼

[本クロニクルでも小池一夫が小池書院を設立し、その資金繰りのためと考えられる事件を既述してきたが、今回は著作権の二重、三重譲渡である。

これはかなり複雑なので、同記事のチャートなどを参照してほしい。だがこの問題はコミックにおける原作者と作画家、電子書籍化における著作権、コンテンツビジネスなどにもつながるもので、文化庁の登録制度の欠陥も含め、さらなる様々な波紋をもたらすと思われる]

16.「出版人に聞く」シリーズの図書新聞の井出彰へのインタビュー『書評紙の戦後と現在』の編集を終えた。9月中には刊行できるだろう。

《既刊の「出版人に聞く」シリーズ》

「今泉棚」とリブロの時代 盛岡さわや書店奮戦記 再販制/グーグル問題と流対協 リブロが本屋であったころ 本の世界に生きて50年 震災に負けない古書ふみくら 営業と経営から見た筑摩書房 貸本屋、古本屋、高野書店


以下次号に続く。