17年10月の書籍雑誌の推定販売金額は993億円で、前年比7.9%減。
書籍は473億円で、同5.2%減。
雑誌は520億円で、同10.3%減と2ヵ月連続の2ケタマイナス。
その内訳は月刊誌が406億円で、同12.6%減、週刊誌は114億円で、同1.3%減。
週刊誌のマイナスは17年で最小だが、月刊誌はコミックス、ムックの大幅な落ちこみによっている。
それらも作用し、17年の雑誌のマイナスは初めての2ケタ減が予測される。
最悪は16年の6.6%マイナスだったけれど、それどころではない雑誌状況を迎えようとしている。
返品率は書籍が41.0%、雑誌は44.5%と、双方がまたしても40%を超えてしまった。
10月は台風の影響もあり、他の物販やサービス業も大半が前年を下回っているので、書店の返品率は11月も高いはずで、雑誌の販売額マイナスはそのまま18年も続いていくだろう。
そして18年も続けて2ケタマイナスとなるのではないか。
出版状況は崩壊から解体過程へと向かいつつある。
1.日販の『出版物販売額の実態2017』が出され、その「販売ルート別出版物販売額2016」が『出版ニュース」(11/下)に掲載されている。それを示す。
販売ルート | 推定販売額 (百万円) | 構成比 (%) | 前年比 (%) |
1. 書店 | 1,089,442 | 63.3 | 94.0 |
2. CVS | 185,923 | 10.8 | 97.7 |
3. インターネット | 183,050 | 10.6 | 106.0 |
4. その他取次経由 | 78,941 | 4.6 | 97.0 |
5. 出版社直販 | 184,757 | 10.7 | 96.6 |
合計 | 1,722,113 | 100.0 | 95.9 |
これは本クロニクル103でもふれておいたが、日販のこのデータは15年から生協、駅売店、スタンドルートが「その他取次経由」に一本化され、さらに新たに「出版社直販」が加えられている。それらの合計が1兆7221億円で、前年比4.1%減となる。
そのことによって、16年の出版科学研究所の推定販売金額は1兆4709億円なので、2512億円上回る数字となるけれど、5の「出版社直販」を外すと、取次ルート推定販売金額に近くなる。
しかし3は紙媒体だけで、電子書籍は含まれていないこと、それから5の場合、アマゾンと出版社の直取引を考えると、これらの今後の正確な追跡は難しくなるのではないだろうか。
もちろん出版科学研究所の取次出荷から返品を引いた推定販売金額、本クロニクル110の『出版年鑑』やニッテンの実売金額に基づくデータにしても、書店も含めたドラスチックな出版物市場の変容の中で、第一次資料としての判断が問われるところにさしかかっているように思われる。
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2.丸善ジュンク堂の工藤恭孝社長と岡充孝副社長が辞任し、取締役も退任し、それぞれ会長、副会長となる。同じく取締役の文教堂GHDの嶋崎富士雄社長も退任、後任の社長はDNP常務執行役員の中川清貴取締役が就任し、丸善CHIホールディングス社長を兼ねる。
丸善ジュンク堂営業本部のもとで店舗運営を担う淳久堂書店も工藤社長と岡副社長が退任し、こちらも中川社長へ移行。
任期途中の退任であり、二人はDNPから解任されたと見られる。
本クロニクルでも繰り返し丸善ジュンク堂のバブル大型店出店に関する採算上への疑問や、同109で工藤社長の敗北にも似た告白にもふれてきているが、この1年の売上の落ちこみも相乗し、DNPにとっても、もはや限界を超えてしまったのであろう。
全国90店舗に及ぶ大型店の展開にしても、2014年から赤字続きだったとされる。
淳久堂書店を介在させるその出店のメカニズムが再考され、必然的に店舗リストラが始まるのは必至だ。それはいうまでもなく返品となって、取次と出版社に押し寄せてくるだろう。
出店は10月の「横浜みなとみらい店」が最後となろう。
3.CCCのFCで、栃木県を中心としてTSUTAYAを展開するビッグワングループが、創業140周年記念式典を開催。
同グループは1887年に肥料店を創業、1960年からガソリンスタンドを始め、CCCのFCには87年に加わっている。
同式典は『文化通信』(10/30)に詳しく報道されているが、その記事を引く。
「87年にCCCとフランチャイズ契約を結んで複合書店の出店を開始した。
現在はTSUTAYA26店舗、大型複合店の「bigone books」4店舗など、書店32店舗を展開するほか、グループでブックオフ11店舗、「かつや」「道とん堀」「いきなり!!ステーキ」カフェなどの外食店を経営している。」
そして大村一夫社長の次のような発言も紹介されている。
「さらに、『業態の変化が著しい』と述べ、これからはスマートフォンではできない飲食と『人と人との出会い』に関わるビジネスに向かう必要があるとし、レンタルとの複合だったTSUTAYAから、書籍を中心とする蔦屋書店への転換を図ると表明。」
その「新たな成長のスタート」として、12月には佐野市にスターバックスを併設した813坪のTSUTAYA大型複合店も開店する。
ビッグワングループの記念式典は『新文化』(11/9)にも報道されていることからすれば、プロパガンダのために広くリリースされていたのだろう。CCCのFCとしては異例のことで、しかもそのFC業態が公開されたのも初めてのように思われる。
しかもTSUTAYAなどの書店が32店、ブックオフ11店というのも驚きで、ビッグワングループがCCCとブックオフの一定のエリアを独占する地域FCの代表的企業、もしくは様々な業態からなる地域FC企業だと推測される。これまで出版業界で知られていなかったが、このような地域FC企業がCCC=TSUTAYAのコアということになる。
記念講演はCCCの増田宗昭社長、祝辞と挨拶は日販の吉川英作副社長、ブックオフの堀内康隆社長、TSUTAYAの大西一雄社長、乾杯発声はMPDの奥村景二社長で、これらのメンバーがFC企業の式典で勢揃いしたのも初めてだろう。それでいて、出版社からの挨拶はなく、その姿も伝えていないのも異例である。
この事実はビッグワンの式典がCCC=TSUTAYA、日販、MPDのプロパガンダに他ならないことを告げている。そのかたわらで、前回の本クロニクルでふれたように、TSUTAYAの50店に及ぶ閉店が続き、ブックオフも連続赤字で、今期の第2四半期決算も赤字となり、それはブックワンのTSUTAYAやブックオフにも影響が及んでいよう。
そのためのテコ入れとしての関係者総出演の式典と見なせるが、「TSUTAYAから書籍を中心とした蔦屋書店への転換」はCCCの絵に描いたFCスローガンに他ならず、不可能に近く、経営の戦略として間違っているというしかない。TSUTAYA佐野店はどうなるのか、注目しよう。
4.ポール・メイソン『ポストキャピタリズム』(佐々とも訳、東洋経済新報社)を読み終えた。テーマは「新自由主義―ゾンビシステムの崩壊」である。
メイソンは新自由主義に伴って起きた1980年代の「金融化」=financialization に注視する。それは企業社会が金融市場へ向かったことを意味し、まず銀行は従来の顧客から離れ、高リスクな投資業務へ向かう。銀行の従来の顧客だった企業もクレジットカード、様々なローン、モーゲージなどの金融市場に取りこまれていく。
金を貸すことや借りることにまつわる単純な利子の金融が、複雑な金融となって市場を生み出し、投資家に収入をもたらし、その世界に身を置く人たちが1%の超富裕層を形成していく。
そうした生産から金融への転換は、労働者の敗北と分断化をもたらし、社会の無秩序化を招き、08年のリーマンショックへと結びついていった。
これはラフな要約なので、詳細は本書を読まれたい。
偶然ながら、この11月に読んだので、この「金融化」のコンセプトを2と3の大型店出店に当てはめてみる。
2010年代に入って、丸善ジュンク堂やTSUTAYAなどの大型店は、予算達成が困難で、自転車操業的出店へと移行していった。それは「金融化」と呼ぶにふさわしく、大型店初期在庫は長期の支払い猶予が設定されるので、それらは取次による「金融化」支援とも見なすことができる。
すなわちそれは初期在庫の返品による、書店の資金繰りに当てられるからである。それに加えて、かつては一社現金決済がほとんどであったことに対し、書店側の「金融化」も複雑になっている。
例えばA社の新規出店に当たって、出店契約はB社、店舗運営はC社、出版物在庫はD社、DVDなどは消耗品としてE社が受け持ち、棚やレジなどはリースといったように、様々な「金融化」が複雑に絡み合い、それにFC契約と再販委託制が重ねられている。しかもFCではタブーとされる、FCによるFCもかなりあると推測される。
しかしそれらの流通と金融を担っているのは取次に他ならず、取次はこの複雑化した書店市場に対し、ほとんどなすべき手立ても持てずにいる。しかも流通販売の要で有る雑誌の凋落に直面し、そのビジネスモデルすらも揺らいでいる。それとパラレルに丸善ジュンク堂にしてもCCC= TSUTAYAにしても、店舗リストラに向かうだろうし、その際に出版業界のリーマンショックのような事態が起きることも考えられる。
また「金融化」だが、これは出版社にしても同様で、週刊誌、月刊誌は除くにしても、ムック、文庫、新書などは、取次の支払い条件に則った「金融化」出版と化していることも事実だし、それが高返品率として現れているのである。読者や書店のことは二の次になっている。
だからいってみれば、生産、流通、販売をめぐる出版市場のすべてが「金融化」の中にあり、それが臨界点を迎えていると判断できよう。
5.北海道函館市の加藤栄好堂が自己破産。
創業は1934年で、函館市美原と北斗市、亀田郡七館街に3店舗を展開していた。 負債は3億8000万円。
この書店は知らなかったので、1996年の『ブックストア全ガイド』(アルメディア)を確認してみると、当時は本店が30坪であり、その後出店を続け、リストラなどを経て、今回の事態に至ったと推測される。取次は日販。
6.日本で最初の児童書専門店である名古屋のメルヘンハウスが、来年の3月で閉店。
本クロニクル99で、絵本市場が拡大していることをレポートしたが、45年にわたる児童書専門店には、それが及んでいなかったことを示していよう。
「出版人に聞く」シリーズ11『名古屋とちくさ正文館』の中で、古田一晴が近くにあるメルヘンハウスとのコラボを語っていたが、それも今年で最後となってしまうのである。
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7.同じく名古屋の風媒社の創業者稲垣喜代志が亡くなった。享年84歳だった。
稲垣と最後に会ったのは5年ほど前で、転んでけがをした後だったこともあり、「出版人に聞く」シリーズに出てくれないかと頼みづらく、そのままになってしまった。
稲垣は日本読書新聞を経て手、1963年に名古屋で風媒社を立ち上げ、所謂地方出版の先達で、しかもNR出版会の最初からのメンバーだった。
名古屋にあって、風媒社という出版社が存在したことは、有形無形に大きな文化的意味があったはずで、それが継承されていくことを願わずにはいられない。
なお『出版ニュース』(11/下)の「出版」欄に、インパクト出版会の深田卓による長文の追悼も掲載されていることを付記しておく。
8.桐原書店は株式の51%を図書印刷に譲渡し、図書印刷のグループ会社となる。
同じく図書印刷の子会社で、主として小中学校の検定教科書を手がける学校図書との事業シナジーをめざす。
桐原書店に関しては、『出版状況クロニクル4』で、15年にTACに全事業譲渡締結とその後の中止を既述しておいた。
2013年に英国のピアソングループから分離独立し、高校の英語や国語教科書、参考書出版に加え、デジタル教材、ベンチャー企業との提携、フィリピン語学支援会社買収などの新事業進出もあり、図書印刷の傘下に入ったことになろう。だが学校図書が先行していたことは知らずにいた。
他の教科書をメインとする出版社がリストラでもめている話を耳にしているが、かつては安泰とされた教科書会社にしても、出版危機は押し寄せているのである。
9.日本ABC協会による2017年上半期の雑誌販売部数が出されたので、週刊誌、月刊誌、合計のトータル数字を示す。
17年上半期 | 前年同期比(%) | 読み放題UU | 16年下期比 | |
週刊誌(34) | 3,775,809 | ▲12.1 | 2,809,940 | 29.4 |
月刊誌(117) | 9,460,213 | ▲1.5 | 5,678,015 | 26.6 |
合計(151) | 13,236,022 | ▲4.8 | 8,487,955 | 27.5 |
17年上半期のほうは出版社39社、週刊誌34誌、月刊誌117誌で合計1323万部だが、「読み放題UU」は93誌で848万部だから、実質的に紙を上回っており、その成長率から考えれば、来年は逆転してしまうことが確実である。
それに対し、デジタル版は94誌で、合計部数は14万部、16年下半期比4.9%減となっている。
[スマホで雑誌を読むことが主流となる時代に入ってきている。その一方で、デジタル雑誌はすでに下降していることが明らかである。この雑誌、読み放題UU、デジタル版の販売推移は同様なプロセスをたどっていくであろう。
しかしこれはいうまでもないことだが、このデータは雑誌市場の一端であり、ムックとコミックは除外されている。定期誌よりもさらに深刻な状況に追いやられているのは、返品率から明らかにように、ムックと見なせよう。
ムックこそは4でふれた「金融化」雑誌に他ならないからで、本クロニクル97で指摘しておいたように、長きにわたるバブル刊行も限界に達していよう]
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10.インターネットで海賊版コミックを読むことができるリーチサイト(誘導サイト)の「はるか夢の址」をめぐる著作権違反事件で、運営者やサーバー運営者たち9人が逮捕された。
この「はるか夢の址」は2008年に開設され、3200人の会員が毎月1万9500件の海賊版リンクを投稿する巨大サイトで、閲覧者数は月に1400万人に及ぶ。
ダウンロードされたコミックは毎月300万点で、『NARUTO』『ワンピース』『ドラゴンボール』などの人気コミックも含まれ、出版社の被害は2011年以降で、4124億円に上るとされる。
これは『朝日新聞』(10/31、11/1)の記事によるが、続報が出ていないので、その後のことがわからない。他紙ではどうなっているのか。
「はるか夢の址」はよく知られたサイトで、今年の7月に関係先が家宅捜索され、すでに閉鎖されたが、50万件以上の作品のリンクが投稿されていたという。だがサイト運営者は金銭的利益は得ておらず、リーチサイトが著作権を侵害したのか、多数のリンク投稿者も著作権違反となるのか、この事件はどのような方向に展開されていくのだろうか。
「はるか夢の址」と同様のサイトは海外にも多くあるとされているので、それらも含め、詳細なレポートが望まれる。
11.イオングループのコンビニであるミニストップ2200店は、来年1月から18歳未満販売禁止の成人向け雑誌の販売を中止すると発表。
さらにイオングループ下にある300店余の未来屋書店なども同様で、それらはミニストップを含めて7000店のすべてに及ぶとされる。
これも本クロニクル106でふれているが、2020年の東京オリンピックを意識してのイオンのパフォーマンスのように映る。また実際に他のコンビニでも、首都圏を中心にして多くが撤去されるとも伝えられている。
しかし出版業界にカストリ雑誌から始まるアダルト誌を置いてみれば、編集者、漫画家、作家にしても、次世代の人材の宝庫だったし、それが出版業界を下支えしてきたのである。
それはこの8月に出された池田俊秀『エロ本水滸伝』(人間社文庫)にお明らかで、1980年代以後の雑誌カルチャーにしても、エロ本業界を抜きにして語れないはずだ。
それからこれは購入して気づいたのだが、人間社は名古屋の出版社で、6のメルヘンハウスやちくさ正文館の近くにある。この出版社も7の風媒社の影響を受けているはずで、奇しくも今回は明暗の暗のほうによってしまったけれど、名古屋の4つの出版社や書店を挙げたことになる。
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12.『日経MJ』(11/24)が「宝島社のすご腕付録姉さん」なる一面特集を組み、付録づくりに日々奔走する「目利き」の桜田圭子マーケティング課課長の行動を追っている。
これは9のABC調査に基づくであろう、今年上半期宝島社の女性ファッション誌が1位から4位までを独占したこと、及び40代女性向けファッション誌『GLOW』(8月号)が1週間で50万部を完売したことを受けての特集である。それはアメリカの高級スーパー「ディーン&デルーカ」のロゴ付き保冷バッグの付録によっている。
「付録姉さん」は付録のアイディアをもとめ、雑貨屋、カー用品、地方の大手ショッピングセンター、空港の雑貨店など、週に300~500店をめぐるという。
「姉さん、あっしもお伴させて頂きます」というわけにはいかないけれど、雑誌本体ではなく、付録が売れ行きを担っているのも、現在の出版業界を象徴している。
前回の本クロニクルで、日記と手帳の人気にふれ、何も印刷されていない日記や手帳が好調なのは、誠に皮肉なことだと既述しておいたが、付録人気も同様だと見なすしかない。
ただ付録は日本の雑誌の原点ともいえるので、その歴史をテーマとした『おまけとふろく大図鑑』(「別冊太陽」、平凡社)にならって、宝島社の付録史を一冊にまとめて残してほしい。映画『フリークス』のDVDの付録がついた雑誌を買いそびれてしまったこともあるので。
13.祥伝社の女性誌『Zipper』が休刊。
1993年に月刊誌として創刊され、「カワイイ」というタームを広めた原宿ファッションをメインとし、古着も含め、10代後半の女性の熱烈な支持を得ていた。だが2015年からは季刊となっていた。
12の付録は「癒し」系が主流だというので、もはや「カワイイ」はトレンドから外れてしまい、それも休刊の一つの理由となったのだろうか。
エフェメラのようなトレンドは、月刊誌や季刊誌が寄り添っていくのが難しい時代となっているのが実感として感じられる。
これからは流行の消費サイクルがさらに短くなり、雑誌というよりも付録がそれを反映していくのかもしれない。
14.講談社の『小説現代』が来年の10月号で休刊。20年3月号でリニューアル創刊する予定。
1963年の創刊だから、半世紀以上にわたって刊行されてきたことになる。
1978年に創刊15周年を迎えて、『小説現代新人賞全作品』(全4巻)が出されている。その「刊行にあたって」に、次のような言が見える。創刊直後に「小説現代新人賞」を設け、年2回、作家志望者に広く門戸を開けて新人発掘に勉め、新しい時代の感覚や風俗に応えた。斬新で、かつ才能豊かな新人作家を生み出し、中間小説界随一の登龍門として、「新人賞は小説時代」と評価されるまでに成長してきました。
私などの世代はまさに『小説現代』とともに成長したこともあり、66年に第6回小説現代新人賞を受けた五木寛之の「さらば、モスクワ愚連隊」をリアルタイムで読んでいる。それに偏愛する藤本泉もこの新人賞を受賞している。
「中間小説」という言葉も懐かしいし、実際に『小説現代』編集長も務めた大村彦次郎による「中間小説とその時代」というサブタイトルの『文壇栄華物語』(筑摩書房)が出されている。
だが『小説現代』とともに、中間小説の時代も完全に終わったのである。
15.龍生書林の古書目録『りゅうせい』66(最終号)が届き、「今年で廃業」との言が記されていた。
A5判334ページに及ぶ目録は稀覯本を含めて、近代文学書が満載で、龍生書林が近代文学書にかけては第一人者だったことをあらためて教えてくれる。
写真版以外の「複数冊割引」も示され、2冊は2割引、3冊は3割引、4冊は4割、5冊は5割引となっている。
残念ながら、私は初版本や著名本などに門外漢であるので、注文できなかったが、近代文学書収集者や読者には、垂涎の一冊が見つかるのではないかと思う。まだ1ヵ月残されているし、目録を入手してほしい。
古書業界でも龍生書林の廃業はショックだったようで、親しい古本屋によると、書店に例えれば、紀伊國屋書店が廃業したようなものだと語っていた。
14の中間小説ではないけれど、古書業界においても、近代文学が終わってしまったといえるのかもしれない。
16.ブックオフは通販サイトのブックオフオンラインを、アマゾンのマーケットプレイスに出店。
ブックオフオンラインは2007年開設で、会員数は350万人、在庫点数は500万点、年間買取点数は3000万点、同販売点数は1640万点とされる。
このブックオフオンラインのマーケットプレイスへの参入と、アマゾンの手数料の値上がりによって、1円販売本のサイトは劣勢で赤字が確実となり、マーケットプレイスからの撤退が続くだろうと予測されている。
新刊書も同様だが、古本も専門書から1円本に至るまで、かつてない激動の只中にさらされている。これは近代、すなわち明治の和本から洋本への過渡期に重なっているようにも見える。
だが基本的に異なっているのは、その時代に古本業界を後戸のようにして、出版社・取次・書店という近代流通システムが立ち上がっていたことに対し、現在は逆にそれが崩壊から解体へと向かっていることだろう。
17. 今月の論創社HP「本を読む」㉒は「自販機本の時代」です。