20年2月の書籍雑誌推定販売金額は1162億円で、前年比4.0%減。
書籍は713億円で、同3.2%減。
雑誌は448億円で、同5.2%減。
その内訳は月刊誌が370億円で、同4.6%減、週刊誌は78億円で、同8.2%減。
返品率は書籍が31.8%、雑誌は41.5%で、月刊誌は41.2%、週刊誌は42.9%。
書店売上は書籍が2%減だが、学校の一斉休校もあり、小学ドリルなどの学参は12%増、学習漫画などの児童書は5%増で、新型コロナによるプラスということになる。
まだ2月の書籍雑誌推定販売金額に、新型コロナの影響は実質的に表われていないといえるかもしれないが、3月にはかつてないマイナスとして現実化するだろう。
それは出版業界の生産、流通、販売のさらなる未曽有の危機として表出していく。
すでにその渦中にあると考えるしかない。
1.『文化通信』(3/2)が一面特集「新型コロナ・ウィルスの影響が広がる」で、新聞、出版、広告業界のイベントや会合中止を伝えている。
出版業界では「全国トーハン会代表者総会」、5回目の「本のフェス」、丸善ジュンク堂の「丸の内BOOKCON2020」などが中止。
また『新文化』(3/5)も同じく一面特集「新型コロナ 店頭売上に影響およぶ」として、「住宅地・郊外型」の書店では比較的影響が少ないが、「大型施設や駅前型」の書店は前年比10%近くの減少で、大きなダメージを受け、ある地方書店では20%マイナスも生じているとレポートしている。
これらは3月上旬の記事であり、その後のイベントや会合中止はさらに増加し、3月の書店売上もさらに減少しているようだ。
日本百貨店協会の発表によれば、3月1日から17日の百貨店売上高は前年比40%減となり、1965年の統計開始以来、過去最大の落ち込みになるという。2月の売上高は同12.2%減。
本クロニクルはその根底的視座として、高度資本主義消費社会は平和と安全が前提だと認識してきたが、それが思いがけない新型コロナによって侵蝕されてしまったのだ。グローバリゼーション化と相俟って、リーマンショックや東日本大震災を超える経済不況に見舞われつつある。
2.株式市場も急落しているの、上場企業書店と関連小売業も見てみる。
企業 | 18年5月 高値 | 18年11月21日 終値 | 19年11月21日 終値 | 20年3月20日 終値 |
丸善CHI | 363 | 348 | 377 | 348 |
トップカルチャー | 498 | 382 | 345 | 250 |
ゲオHD | 1,846 | 1,840 | 1,326 | 1,334 |
ブックオフHD | 839 | 808 | 1,082 | 808 |
ヴィレッジV | 1,023 | 1,078 | 1,110 | 856 |
三洋堂HD | 1,008 | 974 | 829 | 814 |
ワンダーCO | 1,793 | 660 | 726 | 484 |
文教堂HD | 414 | 239 | 159 | 95 |
まんだらけ | 636 | 630 | 604 | 492 |
テイツー | ー | ー | 42 | 23 |
本クロニクル139で、同じリストを掲載したばかりだが、トップカルチャー、ワンダーCO、文教堂は株価が急落しているといっていいだろう。
しかも新型コロナによる売上減少が反映されるのはまだこれからだし、これら以外の大手チェーンに及んでいくことは確実だ。
また2月の書店閉店状況を見ても、ジュンク堂だけでなくTSUTAYA5店、ヴィレヴァン4店、文教堂2店、それから廣文館やフタバ図書の大型店も閉店している。
おそらく新型コロナによる書店売上マイナスは何よりも大型店を直撃し、どこまで高い家賃コストに耐えられるかという状況へと追いやられていくだろう。
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3.『新文化』(3/12)に、図書館に勤めている20代の匿名の女性による寄稿「図書館サービス制限に違和感」が掲載されている。
これは新型コロナによる図書館イベントやサービスの中止、とりわけ「レファレンス」と「資料の閲覧」ができなくなったことをさしている。彼女の言葉を引こう。
中止されたサービスの内容が、私には信じられないものでした。主に資料(新聞を含む)の閲覧、閲覧席の利用、利用者が調べる内容に関しての相談(レファレンス)、館内に設置されているパソコンでのインターネットの使用などです。
これは、利用者の滞在時間を短時間にすることと、対人接触を可能な限り避けることを目的としています。そうして残ったサービスは、予約資料の受取り、資料の返却、館内の検索機またはホームページを使用してのセルフ検索くらいです。
続けて彼女は「図書館の自由に関する宣言」に言及し、これらの「今回のサービスの制限」に疑問を呈している。
こうした新型コロナの影響が図書館現場において、広く実施されているのかどうか、詳らかにしないが、かなり休館に及んでいることは仄聞している。
かつてであれば、このような図書館状況は『出版ニュース』で報じられていただろうが、休刊となった現在ではそれも不可能となってしまった。
多くの出版社のデジタルコンテンツ無料公開は、業界紙でも報じられているけれど、まさに図書館に関するレファレンスも、これから難しくなっていくことを知らしめているのかもしれない。
4.戸田書店静岡本店が5月に閉店。
静岡本店はJR静岡駅北口前の複合商業ビル「葵タワー」の地下1階から2階までの3フロアで、文芸書から専門書なども含め、60万冊を揃えていた。
2002年に旧長崎屋静岡店ビルを取得して開業し、07年に再開発事業に伴い、一次退去したが、10年に「葵タワー」完成とともに再オープンしていた。
また戸田書店の富士店、富士宮店(いずれも静岡)、桐生店(群馬)、長岡店(新潟)、三川店(山形)の5店舗は丸善ジュンク堂の運営となり、丸善CHIグループの傘下に置かれることになった。
静岡呉服町通りには、かつて御三家とされた谷島屋、江崎書店、吉見書店があった。それに戸田書店も加わったわけだが、いずれも閉店という事態を迎えた。
通りにはTSUTAYAだけが残り、静岡の書店の一時代が終わったことになろう。駅ビルに谷島屋、新静岡駅ビルに丸善ジュンク堂があるにしても。
戸田書店の静岡本店は地元のデベロッパーに売却されるようだが、その背後には栗田と大阪屋、大阪屋栗田から楽天に至る取次買掛金の問題が潜んでいるだろうし、その清算はどうなるのだろうか。
それと同時に、戸田書店は2の三洋堂と並んで、1970年代後半からの郊外店出店の先駆けだった。
今日の事態は書店の郊外店の終わりを告げていよう。
5.『出版月報』(2月号)が特集「コミック市場2019」を組んでいる。
その「コミック市場全体(紙版&電子)販売金額推移維」と「コミックス・コミック誌 推定販売金額推移」を示す。
年 | 紙 | 電子 | 合計 | ||||
コミックス | コミック誌 | 小計 | コミックス | コミック誌 | 小計 | ||
2014 | 2,256 | 1,313 | 3,569 | 882 | 5 | 887 | 4,456 |
2015 | 2,102 | 1,166 | 3,268 | 1,149 | 20 | 1,169 | 4,437 |
2016 | 1,947 | 1,016 | 2,963 | 1,460 | 31 | 1,491 | 4,454 |
2017 | 1,666 | 917 | 2,583 | 1,711 | 36 | 1,747 | 4,330 |
2018 | 1,588 | 824 | 2,412 | 1,965 | 37 | 2,002 | 4,414 |
2019 | 1,665 | 722 | 2,387 | 2,593 | コミックス コミック誌統合 | 2,593 | 4,980 |
前年比(%) | 104.8 | 87.6 | 99.0 | 129.5 | 129.5 | 112.8 |
年 | コミックス | 前年比(%) | コミック誌 | 前年比(%) | コミックス コミック誌合計 | 前年比(%) | 出版総売上に 占めるコミックの シェア(%) |
1997 | 2,421 | ▲4.5% | 3,279 | ▲1.0% | 5,700 | ▲2.5% | 21.6% |
1998 | 2,473 | 2.1% | 3,207 | ▲2.2% | 5,680 | ▲0.4% | 22.3% |
1999 | 2,302 | ▲7.0% | 3,041 | ▲5.2% | 5,343 | ▲5.9% | 21.8% |
2000 | 2,372 | 3.0% | 2,861 | ▲5.9% | 5,233 | ▲2.1% | 21.8% |
2001 | 2,480 | 4.6% | 2,837 | ▲0.8% | 5,317 | 1.6% | 22.9% |
2002 | 2,482 | 0.1% | 2,748 | ▲3.1% | 5,230 | ▲1.6% | 22.6% |
2003 | 2,549 | 2.7% | 2,611 | ▲5.0% | 5,160 | ▲1.3% | 23.2% |
2004 | 2,498 | ▲2.0% | 2,549 | ▲2.4% | 5,047 | ▲2.2% | 22.5% |
2005 | 2,602 | 4.2% | 2,421 | ▲5.0% | 5,023 | ▲0.5% | 22.8% |
2006 | 2,533 | ▲2.7% | 2,277 | ▲5.9% | 4,810 | ▲4.2% | 22.4% |
2007 | 2,495 | ▲1.5% | 2,204 | ▲3.2% | 4,699 | ▲2.3% | 22.5% |
2008 | 2,372 | ▲4.9% | 2,111 | ▲4.2% | 4,483 | ▲4.6% | 22.2% |
2009 | 2,274 | ▲4.1% | 1,913 | ▲9.4% | 4,187 | ▲6.6% | 21.6% |
2010 | 2,315 | 1.8% | 1,776 | ▲7.2% | 4,091 | ▲2.3% | 21.8% |
2011 | 2,253 | ▲2.7% | 1,650 | ▲7.1% | 3,903 | ▲4.6% | 21.6% |
2012 | 2,202 | ▲2.3% | 1,564 | ▲5.2% | 3,766 | ▲3.5% | 21.6% |
2013 | 2,231 | 1.3% | 1,438 | ▲8.0% | 3,669 | ▲2.6% | 21.8% |
2014 | 2,256 | 1.1% | 1,313 | ▲8.7% | 3,569 | ▲2.7% | 22.2% |
2015 | 2,102 | ▲6.8% | 1,166 | ▲11.2% | 3,268 | ▲8.4% | 21.5% |
2016 | 1,947 | ▲7.4% | 1,016 | ▲12.9% | 2,963 | ▲9.3% | 20.1% |
2017 | 1,666 | ▲14.4% | 917 | ▲9.7% | 2,583 | ▲12.8% | 18.9% |
2018 | 1,588 | ▲4.7% | 824 | ▲10.1% | 2,412 | ▲6.6% | 18.7% |
2019 | 1,665 | 4.8% | 722 | ▲12.4% | 2,387 | ▲1.0% | 19.3% |
19年のコミック全体の販売金額は4980億円、前年比12.8%増。その内訳は紙のコミックスが1665億円、同4.8%増、電子コミックス2593億円、同29.5%増で、2年連続のプラスとなった。
電子コミックは14年の統計開始以来、過去最高の売上で、ついに紙のコミックスとコミック誌の販売金額を上回った。これは「漫画村」などの海賊版サイトの閉鎖も大きく影響しているはずだ。
紙のコミックスの増は『鬼滅の刃』(集英社)の大ヒットによるもので、12月発売の18巻は初版100万部、19年末には18巻累計で2339万部に達し、2000年2月の19巻は初版150万部、電子版を含めると累計が4000万部を突破している。
19年の書籍扱いコミックスの販売部数が2375万部であることを考えれば、大ブレイクと呼ぶしかない『鬼滅の刃』の売れ行きだ。出版業界においては、久方ぶりの明るいニュースだ。
だが留意すべきは、毎年のようにこうした大ブレイクが起きるわけではないし、コミック誌は722億円、前年比12.4%減で、14年の半分ほどの売上となっている。それはまだ続くだろうし、『鬼滅の刃』にしても、『週刊少年ジャンプ』がもたらした大ブレイクであり、紙のコミック誌の存在を抜きにしては語れないことを忘れるべきではない。
6.講談社の決算は1358億3900万円、前年比12.7%増で、2年連続の増収増益。
その内訳は「製品」643億円、同3.9%減、「広告収入」59億円、同18.4%増、「事業収入」は613億円、同38.5%増。
「事業収入」の「デジタル関連収入」は465億円、同39.2%増、「国内版権収入」は81億円、同36.5%増、「海外版権収入」は66億円、同39.5%増。
年間を通じて、電子書籍売上が好調で、版権収入も映像化による配信、商品化ビジネスが拡大、ニューメディア、デジタルメディア広告も伸長した。
それにより、営業利益は89億円、同293.8%増、当期純利益は72億円、同152.9%増となった。
講談社の2年連続の増収増益は5の電子コミック市場の伸長と連動しているし、それはコミックを柱とする他の大手出版社の決算にも表われてくるだろう。
しかしそこでも問題なのは、電子コミックの隆盛は取次や書店に対してほとんど寄与しないし、リアルな流通や販売にとってはマイナス要因でしかない。それこそ大手出版社のマス雑誌とコミックは中小書店によって支えられていたにもかかわらず、現在ではもはやそうした関係は切断されようとしている。
7.丸善CHIホールディングスの決算は売上高1762億5800万円、前年比0.5%減。
営業利益34億5400万円、同6.8%増、当期純利益は21億8900万円、同14.3%減。
その内訳は図書館サポート事業が278億円、同5.2%増、受託館数は1489館、大学・研究機関向け設備工事の文教市場販売は536億円、同5.0%減、丸善ジュンク堂などの店舗・ネット販売事業は737億円、同0.5%減、店舗数は88。
文教市場と丸善ジュンク堂などの店舗・ネット販売事業のマイナスを、図書館サポート事業の伸びが補っていることになる。
期初の受託感寸は1356館だったことからすれば、133館の増加で、公共図書館はそれほど増えていないわけだから、TRCに切り替わったところも多いと考えられる。これから公共図書館にしても、著しい増加は期待できないし、ゼロサムゲームの中で、図書館の所謂帳合変更も必至ということになるのだろうか。
なお21年の決算予想について、新型コロナ問題もあり、現時点での予想は困難で、未定としている。
【付記】
偕成社の今村正樹社長から以下の一文が寄せられたので、転載しておく。
3月の文中丸善CHIの記述について一言。小田さんは公共図書館があまり増加しない中で、TRCの受託が124館増えていることから、図書館の帳合い変更を推測されていますが、これは少々説明が必要です。まず増加した結果の計1,489館には大学223と学校図書館727が含まれ、公共図書館は539館のみです。公共図書館の3,500館以上からみれば、まだまだ一部に過ぎません。ただし受託していなくとも納品をしている館はかなり多く、しかも競合のトーハン取引の外商書店は、高齢化などの理由で商売が続けられず、納入がTRCに代わりつつあることも事実ですが。またTRCは受託については採算性を見直して不採算館の受託を返上していますので、今後も劇的な受託館数増加はないと聞いています。
8.日販とトーハンは「物流協業」において、雑誌返品業務を出版共同流通(株)蓮田センターで実施すると発表。
出版共同流通は日販、楽天、ブックネットワーク、日教販、講談社、小学館、集英社が出資し、蓮田センターは日販、楽天、日教販の雑誌返品業務を受託していた。
これにトーハン、中央社、協和出版販売の雑誌返品も受託することになる。これらはトーハンの東京ロジスティクスセンターが手がけていたが、同センターは新たな物流拠点として活用していくとされる。
日販やトーハンの物流拠点として、まだ多くの流通センターがあるけれど、東京ロジスティクスセンターの取次の新たな物流拠点としての活用は難しいだろう。
雑誌にしても、書籍にしても、この20年で物流は半減してしまったのだし、しかも下げ止まってもいないからだ。といって他業種の3PL物流への移行も困難である。
そのような視点から見れば、不動産の有効活用が模索されているはずだが、そこで「文喫」やホテル「本箱」は展開できないので、やはり高齢者施設ということになるのだろうか。
9.日販GHDは新会社の日販セグモと日販ビジネスパートナーズの設立を発表。
前者は各種イベントを運営するエンタメ事業会社で、社長は日販GHDの安井邦好執行役員、後者はグループの管理部門を手がけるシェアードサービス会社で、社長は同西堀新二執行役員。
10.CCCグループの徳間書店は平野健一社長が取締役となり、小宮英行取締役が社長に就任。
また同じく主婦の友社の社長に平野が就任する。
日販の新たな2社は、本クロニクル131で示しておいた「グループ体制の概要(予定)」に基づくもので、「エンタメ事業」と「シェアードサービス」として予告していたものだ。
日販セグモのほうは「エンタメ事業」であるがゆえに、CCCの移行に寄り添っているはずだ。とすれば、ほぼ同時期に発表されたCCCグループの徳間書店や主婦の友社の社長人事にしても、そうした動向とパラレルであるのかもしれない。
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11.デイズ・ジャパン社が破産。
『DAYS JAPAN』に関しては本クロニクル131などで、発行者の広河隆一のセクハラ問題を取り上げてきた。
同誌は19年3・4月号で「広河隆一性暴力報道を受けての検証委員会報告」と「性暴力をどう考えるか、連鎖を止めるために」を特集し、それが最終号となっていた。
ところがその後に「性暴力」損害賠償請求が積み上がり、結局のところ破産するしかなかったようだ。
そのために『DAYS JAPAN』はセクハラで休刊となり、会社自体もそのことによって破産するという不名誉な記録を出版史に残したことになろう。
ただそれとは別に、写真による原発特集などは、他では見ることも読むこともできなかったものであることは記しておく。
12.1953年創刊のアメリカの男性誌『PLAYBOY』が終刊。
創刊号はマリリン・モンローのヌードを掲載し、72年には700万部を超える部数に達し、インターナショナルな雑誌神話を確立した。それを範として、多くの男性雑誌が各国で創刊されていったことはいうまでもないだろう。
『PLAYBOY日本版』が集英社から創刊されたのは1975年であり、それは日本が消費社会化した時代のとば口においてだった。
70年代後半から80年代にかけては、その影響下に多くの男性雑誌が創刊され、雑誌の時代の輝きを放っていたことはまだ記憶に残っている。
アメリカ版を最初に見たのは高度成長期下の1960年代半ばで、その多くのグラビアと華やかさは当時の日本社会とかけ離れたもののように思えた。だがその後10年で、日本もまたアメリカ的消費社会を迎えたことになろう。
それらはともかく、終刊もコロナウィルスの感染拡大を受け、版元の決断も早められたという。
(『PLAYBOY日本版』、1975年創刊号)
13.風船舎の古書目録第15号が届いた。
特集は「異郷にて」で、536ページ、5731の出品が並び、多くの未知の手紙や写真が満載である。
風船舎の目録は音楽が中心となっていて、私はその分野に門外漢なので、あまり購入していない。そんな私にも恵送してくれるので、とても有難い。
ただ知人の言によれば、音楽関係者にとっては不可欠の古書目録であるようだし、少しでも多くの目にふれればと思い、紹介を試みている次第だ。
14.平凡社の編集者の松井純が51歳で急逝した。
『週刊読書人』(3/31)に明石健吾「追悼 松井純 二〇〇冊に及ぶ本の産婆役」が掲載され、編集書名がリストアップされている。
面識はなかったけれど、その編集書はかなり読んでいて、人文書院時代の鈴木雅雄/真島一郎編『文化解体の想像力』は拳々服膺させてもらった。奇しくも同書の編集覚書「そんなものはエグゾティスムだと非難されるかもしれない」は松井自らの手になるものだった。これで『マルセル・モース著作集』の実現は遠のいてしまったと考えるしかない。
15.今月の論創社HP「本を読む」㊿は「『マラルメ全集』と菅野昭正『ステファヌ・マラルメ』」です。
『近代出版史探索Ⅱ』は5月連休明けに刊行予定。