22年3月の書籍雑誌推定販売金額は1438億円で、前年比6.0%減。
書籍は944億円で、同2.7%減。
雑誌は494億円で、同11.7%減。
雑誌の内訳は月刊誌が419億円で、同12.4%減、週刊誌は75億円で、同7.5%減。
返品率は書籍が23.8%、雑誌は39.3%で、月刊誌は38.9%、週刊誌は41.4%。
雑誌のマイナスは10ヵ月連続で、週刊誌も同様であり、月刊誌のほうは9ヵ月連続だが、返品率に至っては書籍と異なり、まったく改善が見られず、ほぼ40%を超えたままで推移している。
書店売上も21年秋以降、きびしい状況下にあり、さらにこのような書店売上が続けば、どのような事態が生じていくのだろうか。
1.『出版月報』(3月号)が特集「文庫本市場レポート2021」を組んでいる。
その「文庫本マーケットの推移」を示す。
年 | 新刊点数 | 推定販売部数 | 推定販売金額 | 返品率 | |||
点 | 増減率 | 万冊 | 増減率 | 億円 | 増減率 | ||
1999 | 5,461 | 2.3% | 23,649 | ▲4.3% | 1,355 | ▲1.0% | 43.4% |
2000 | 6,095 | 11.6% | 23,165 | ▲2.0% | 1,327 | ▲2.1% | 43.4% |
2001 | 6,241 | 2.4% | 22,045 | ▲4.8% | 1,270 | ▲4.3% | 41.8% |
2002 | 6,155 | ▲1.4% | 21,991 | ▲0.2% | 1,293 | 1.8% | 40.4% |
2003 | 6,373 | 3.5% | 21,711 | ▲1.3% | 1,281 | ▲0.9% | 40.3% |
2004 | 6,741 | 5.8% | 22,135 | 2.0% | 1,313 | 2.5% | 39.3% |
2005 | 6,776 | 0.5% | 22,200 | 0.3% | 1,339 | 2.0% | 40.3% |
2006 | 7,025 | 3.7% | 23,798 | 7.2% | 1,416 | 5.8% | 39.1% |
2007 | 7,320 | 4.2% | 22,727 | ▲4.5% | 1,371 | ▲3.2% | 40.5% |
2008 | 7,809 | 6.7% | 22,341 | ▲1.7% | 1,359 | ▲0.9% | 41.9% |
2009 | 8,143 | 4.3% | 21,559 | ▲3.5% | 1,322 | ▲2.7% | 42.3% |
2010 | 7,869 | ▲3.4% | 21,210 | ▲1.6% | 1,309 | ▲1.0% | 40.0% |
2011 | 8,010 | 1.8% | 21,229 | 0.1% | 1,319 | 0.8% | 37.5% |
2012 | 8,452 | 5.5% | 21,231 | 0.0% | 1,326 | 0.5% | 38.1% |
2013 | 8,487 | 0.4% | 20,459 | ▲3.6% | 1,293 | ▲2.5% | 38.5% |
2014 | 8,618 | 1.5% | 18,901 | ▲7.6% | 1,213 | ▲6.2% | 39.0% |
2015 | 8,514 | ▲1.2% | 17,572 | ▲7.0% | 1,140 | ▲6.0% | 39.8% |
2016 | 8,318 | ▲2.3% | 16,302 | ▲7.2% | 1,069 | ▲6.2% | 39.9% |
2017 | 8,136 | ▲2.2% | 15,419 | ▲5.4% | 1,015 | ▲5.1% | 39.7% |
2018 | 7,919 | ▲2.7% | 14,206 | ▲7.9% | 946 | ▲6.8% | 40.0% |
2019 | 7,355 | ▲7.1% | 13,346 | ▲6.1% | 901 | ▲4.8% | 38.6% |
2020 | 6,907 | ▲6.1% | 12,541 | ▲6.0% | 867 | ▲3.8% | 35.3% |
2021 | 6,639 | ▲3.9% | 11,885 | ▲5.2% | 831 | ▲4.2% | 34.3% |
新刊点数は7年連続、販売部数と金額はいずれも9年連続のマイナスで、返品率は多少改善されているように見えるが、新刊と発行部数の減少によっているのだろう。
2000年に比べて、すでに販売部数は半減しているし、販売金額にしても、来年は800億円を下回り、こちらも半減に向かっている。雑誌と同じ道をたどっているのである。
本クロニクルで繰り返し記述してきたように、書店売上は雑誌、文庫、コミックによって支えられてきた。その雑誌と文庫が凋落し、コロナ禍において神風のごときベストセラーが続いたが、その反動で、コミックもマイナスになっている。
つまり、雑誌、文庫、コミックの3分野がマイナスという事態が書店を直撃しているし、それは取次のポスレジ売上調査データに明らかだ。
書店の破産や閉店が増えていくことが予想される。
2.焼津谷島屋が民事再生を申請。
同社は1935年創業で、書店4店、雑貨店の「スワンキーマーケット」16店を展開していた。負債は16億円。
浜松の谷島屋が資本、人的関係はないが、書店事業を継承すると表明。
まさに1を書き終えたところに、このニュースが伝わってきたので、続けて取り上げた次第だ。この浜松の谷島屋による支援スキームは静岡、磐田谷島屋に続く三度目のもので、教科書販売などの地域への影響を考慮してとの表明だが、日販による根回しがベースになっているのだろう。
例によって問題の先送りスキームに他ならない。マルクスではないけれど、「三度目の正直」「仏の顔も三度」という使い古されたタームを思い浮かべてしまう。
しかし20店で売上高15億円、負債16億円という状態では、雑貨店はもちろんのこと、書店事業も赤字だったと見なすしかない。
本クロニクルの観測としては、学参期の4月、5月以降の書店状況が問題だと考えていたが、焼津谷島屋の場合、大きな売上が確実に予測できる学参期すらも越えられなかったことになろう。
3.日販GHDの小売事業を担うNICリテールズは、ホビーやメディア商材のリユース業のエーツーと、駿河屋ブランドの店舗開発と運営支援のための合弁会社「駿河屋BASE」を設立。
設立に先がけ、2020年からNICリテールズ傘下のグループ書店と駿河屋を複合した店舗展開をする一方で、日販はエーツーの複合メディアリサイクルストア「ブックマーケット」の新刊文庫やコミックの取次となっていた。
NICリテールズと駿河屋は「駿河屋BASE」を通じて、「持続可能な書店」のパッケージを開発し、26年度までに70店の店舗開発を計画している。
NICリテールズ傘下のグループ書店はリブロプラス、ブラス、いまじん白揚、積文館書店、Y・space、クロス・ポイントで235店。
NICリテールズ傘下書店内の駿河屋は見ていないけれど、静岡絡みでいうと、戸田書店本店の道を隔てた真向かいにあり、かつては戸田書店との関係も囁かれていた。しかし戸田書店は閉店へと追いやられたが、駿河屋のほうは健在である。
その印象からすると、駿河屋は確かにホビーやメディア商材の総合的リユース業で、DVDに関しては限定版セットも売られていて、明らかにメーカーの在庫処分販売のように思われた。半値以下だったので、私もかなり買い求めている。
だが日販の新たなリユース事業ということであれば、日販とCCC=TSUTAYA、ブックオフの関係はどうなっていくのだろうか。
4.日販は日販GHDの中三・エス・ティから文具仕入機能、書店販売事業を吸収分割により承継し、合わせて文具雑貨商品部を新設し、本部体制として文具雑貨の営業、流通機能を強化する。
奥村景二社長は今年を「日販のマーケティング元年」と位置づけ、「文具雑貨の書店マーケットのさらなる拡張を目指す」と表明。
同時に新設となったのは、マーケティングを通じ事業活動を推進する体制としてのマーケティング本部、生活者起点の新たな価値創造を実現する体制としてのプラットフォーム創造事業本部である。
皮肉なことに、その文具雑貨商品本部がスタートした矢先に、焼津谷島屋の民事再生が申請されたことになる。
しかも焼津谷島屋の民事再生は書店よりも雑貨店の「スワンキーマーケット」の多店舗展開が主たる要因とされているし、粗利益は高くても、出版物と異なり、委託商品ではないことも重なっていよう。
結局のところ、閉店を上回る出店が続けば、文具、雑貨在庫のローリングも可能だが、出店できなくなれば、たちまち不良在庫が積み重なってしまう。
近年のTSUTAYAの大量閉店でも同じことが起きていたであろうし、その問題と3の「駿河屋BASE」も無関係ではないと推測される。
5.CCCの21年書籍雑誌販売金額は1376億円、前年比4%減。
新規店、新規加盟店はフタバ図書など38店舗。
本クロニクル164で、CCCの20年書籍雑誌販売金額が過去最高の1427億円、店舗数は1060店で、1店当たりの月商にも言及しておいた。
今回の発表で、新規店数などは明らかだが、現実の店舗数は出されていない。最近でも相変わらず閉店は続いているし、どのように操作しても、20年の過去最高を上回ることはもはやないだろう。
レンタル複合店とFCシステムをコアとするCCC=TSUTAYAのビジネスモデルの再生は不可能だろうし、文具、雑貨売場併設にしても、難しいことは焼津谷島屋の例を見たばかりだ。
それよりもここで気になることを書いておきたい。これは本クロニクル163で、近隣にあるTSUTAYAの昨年の閉店を既述しておいた。それは300坪ほどの店舗だったが、何とその後のテナントはゲオの2nd STREETであり、この5月に開店するという。
物件がサブリースシステムによるのかは不明だけれど、取次的にいえば、日販帖合の書店がトーハンと連携するゲオの子会社へと移行したことになる。かつてであれば考えられなかったように思えるし、どのようなメカニズムが働いているのかわからないにしても、これは日販の「駿河屋BASE」と異なるトーハンのリユース事業を象徴しているのかもしれない。
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6.ノセ事務所より「2020年出版社の実績」が届いた。
それを示す。
出版社 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 | |
1 | 集英社 | 201,014 | 152,904 | 133,341 | 116,497 | 117,521 |
2 | 講談社 | 144,999 | 135,835 | 120,484 | 117,957 | 117,288 |
3 | KADOKAWA | 119,821 | 84,049 | ー | 113,183 | 112,231 |
4 | 小学館 | 91,316 | 97,747 | 97,052 | 94,562 | 97,309 |
5 | 日経PB | 37,000 | 37,000 | 38,000 | 38,000 | 38,130 |
6 | 東京書籍 | 32,467 | 23,381 | 23,663 | 22,784 | 27,411 |
7 | 宝島社 | 32,409 | 29,477 | 26,279 | 34,019 | 29,303 |
8 | 文藝春秋 | 20,405 | 21,915 | 21,915 | 21,698 | 23,887 |
9 | 光文社 | 16,850 | 20,356 | 20,356 | 21,724 | 22,141 |
10 | 新潮社 | 20,000 | 20,200 | 20,000 | 20,000 | 20,500 |
このデータは1447社が対象となっているが、便宜的に16年からの上位10社だけを挙げている。20年度は8位に学研プラス、9位にぎょうせいが入り、新潮社は11位、光文社は12位となっている。
総じて大手出版社を始めとして、売上、利益ともに回復しつつあり、取次や書店と異なる状況を迎えているとわかる。
それは電子コミック、版権収入、アマゾンやTRCとの取引などの様々な要因が含まれているのだろうが、この「出版社の実績」からはつかめない。
ただこのデータと紀伊國屋の出版社売上額とデータを照らし合わせると、さらなる細部も浮かび上がってくるので、これからもこのふたつのデータを手離さないようにしたい。
7.講談社、小学館、集英社と丸紅、丸紅フォレストリンクスの5社が新会社「パブテックス」を設立。
「AI等を活用した出版物の発行、配本最適化ソリューション事業」とICタグ装着に基づく「RFIDソリューション事業」を手がける。
「パブテックス」出資比率は丸紅34.8%、他の4社は16.3%で、代表取締役は丸紅の永井直彦、取締役会長は小学館の相賀信宏専務。
この計画は本クロニクル157ですでに伝えているが、ようやく1年後に正式発表となった。
「AI等を活用した出版物の発行、配本最適化ソリューション事業」は来年4月、「RFIDソリューション事業」は同じく7月に始動とされるが、果たしてどうなるのか。
売上のマイナスがさらに深刻になっている現在の書店市場において、前者はともかく、後者のICタグ装着のコストを負担することが困難であることは自明であろう。
書店状況が先を読めなくなっている中での、新会社による「ソリューション事業」が、現実的なのかを見極めた上でのプロジェクトだと判断することはできない。
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8.学研HDは完全子会社の学研プラス、学研教育みらい、学研メディカル秀潤社、学研出版サービスの4社を統合合併する。
学研HD3ヵ年計画に挙げられた「オンラインとオフラインの顧客体験を融合深化させ、顧客への提供価値拡大を図る」に際し、中核会社の再編が不可欠で、今回の4社合併が決定となった。
6で学研プラスの業績を示しておいたし、折しも南條達也社長が『新文化』(3/31)で、「出版コンテンツ・ビジネスの成長戦略」を語っている。同じく学研HDの介護事業にしても、トーハンとのコラボレーションも進み、いずれも好調なようだ。
新会社は学研教室などの運営、学校向け事業、出版事業なども包括するかたちでの戦略的合併ということになるのだろう。
20世紀末に学研は創業者の古岡一族体制下にあって、疲弊を極めていたが、新たな経営陣へと移行していくことで、完全にリバイバルしたといえよう。
それは一方の学参の雄だった旺文社と対照的である。
9.藤久HDは日本ヴォーグ社の完全会社化を決定。
日本ヴォーグ社の22年売上高は30億7500万円、前年比2.3%減、営業益3000万円、同53.9%減。
藤久は男性には馴染みが薄いかもしれないが、手芸専門店のナショナルチャーンで、1990年代からのロードサイドビジネスの雄である。
「クラフトハートーカイ」をベースとする生地、手芸用品、編物用毛糸、衣料品、服飾品を販売し、小中学生の備品作りなどには欠かせない郊外店とされていた。
日本ヴォーグ社との業務提携は昨年からのようだが、日本ヴォーグ社にしてみれば、商品の企画や手芸教室などの提携の他に、減少する書店の代わりとしての販売の協業が主たる目的だと考えられる。
各分野の実用書にしても、売り方だけでなく、流通や販売も否応なく変わっていかざるをえないことを示していよう。
10.紀伊國屋書店は初めての公共図書館融合型店舗の概要を発表。
熊本県荒尾市の「あらおシティモール店」に隣接し、同社が指定管理者として運営する荒尾市立図書館である。
規模は1000坪、蔵書は10万5000冊、それに電子書籍7000点を有する本格的なデジタルライブラリーを備え、座席数は250席。「あらおシティモール店」をL字型で囲む設計となっている。
11.TRCと富士山マガジンサービスは電子雑誌読み放題サービス「TRC—DLマガジン」を開始。
TRCの電子図書館サービス「LibrariE&TRC—DL」を導入している図書館がオプションで利用できる。
105タイトル、バックナンバーを含む1020冊の電子雑誌を搭載し、38自治体の公共図書館に導入され、利用者は無料で閲覧可能。
中村文孝との対談『私たちが図書館について知っている二、三の事柄』で、図書館に関しては戦後の歴史、GHQとの関係、子ども図書館、TRCの誕生、公共図書館と出版業界、書店への影響など様々に論じているので、ここではついに出現した公共図書館融合型店舗と「TRC—DLマガジン」の事実を挙げるだけにとどめておく。
『私たちが図書館について知っている二、三の事柄』は早ければ、5月下旬に発売となるかもしれない。
12.『キネマ旬報』(4/上)が「映画本大賞2021」を発表している。
1位は樋口尚文編集『大島渚全映画秘蔵資料集成』(国書刊行会)、2位は遠山純生『アメリカ映画史再構築』(作品社)、3位は伊藤彰彦『最後の角川春樹』(毎日新聞出版)。
今回は3位の『最後の角川春樹』を読んでいた。だがそれは映画ではなく、1980年代の出版史の確認のためだった。
同書はこれまでの角川春樹の自著、インタビューなども含め総集編といえよう。しかし角川の現在の出版状況認識と書店フォローに対しては、疑問があるし、1987年の俵万智『とれたての短歌です』に続く、書籍買切制への移行提案をどうして持続させなかったのかも語っていないのである。
ひとつだけ教えられたのは青樹社の編集者が那須英三という人物だったことだ。彼が森村誠一だけでなく、藤沢周平も見出したのかもしれない。『三一新書の時代』(出版人に聞く)16でふれているように、ちょうど三一書房の井家上隆幸が片岡義男と併走していたように。
それらはともかく、私の1位は佐伯俊道『終生娯楽派の戯言』(『シナリオ別冊』上下、日本シナリオ作家協会)である。同書は22年に入っての刊行なので、21年の対象に選ばれていないのかもしれないが、雑誌としての出版なので、品切になれば、重版されないと思われる。それゆえにここで書いておく。
13.『群像』(4月号)読了。
前回の本クロニクルで、雑誌のほうが私から遠ざかっていくようだと記したが、この『群像』は雑誌のほうが私に近づいてくるような思いに捉われた。
吉増剛造、郷原佳以「デッドレターの先に・・・」、尾崎真理子「『万延元年のフットボール』のなかの『夜明け前』2」、藤井光「翻訳と『裏切り』をめぐって」は、こちらに引きつければ、近代文学史、読書史、出版史、翻訳史に関する重層的な森を形成しているかのようで、大いなる刺激と教示を受けた。
このような対談や論考の出現は、同じく『群像』連載中の安藤礼二「空海」などの近年の仕事と交錯しているようにも思われた。
14.『週刊読書人』(4/22)で、千葉雅也と小泉義之が「現代思想の輝きとアクチュアリティ」という対談をしている。
この対談は千葉の売れ行き好調な『現代思想入門』(講談社現代新書)をめぐってのものだが、二人とも現代思想のふれあいに関して、書店のことを語っているのである。
1990年代に千葉は宇都宮の高校生、小泉は宇都宮大学の教師で、千葉は「宇都宮のオリオン通りにかつてあったアムスというデパートは、地下にリブロがあり、そこでいろんな本に出会ったんです」。小泉は「リブロは見識のある本屋で、大変お世話になりましたね」と語っている。小泉は松野孝一郎『プロトバイオロジー 生物学の物理的基礎』(東京図書)という書名まで上げている。
90年代のリブロ池袋店はいうまでもないが、地方のリブロにしても、バブルだったとしても、現代思想に寄り添っていたのである。
たまたまレベッカ・ソルニット『私のいない部屋』(東辻賢治郎訳、左右社)を読んでいたのだが、その「謝辞」にサンフランシスコの独立系書店のモーズ書店、グリーンアップル書店、グリーンアーケード書店の名前が書きこまれていた。
だが日本でリブロの時代は終わってしまったし、本当に独立系書店は出現しつつあるのだろうか。
15.『世界』臨時増刊が「ウクライナ侵略戦争—世界秩序の危機」を一冊特集している。
ロシア、旧ソ連研究者5人員よる座談会「この戦争は、どこから来て、どこへいくのか」を始めとして、教えられ啓発されることが多い。
しかしトータルな印象をいえば、これからの21世紀の国際秩序は欧米とロシア、中国をめぐる「主権」のイメージのズレが拡大するばかりで、さらに無秩序になっていくのではないかという基調低音が感じられた。
まさに文明の果てのグローバリゼーションとポストモダニティの世界の果てに待ち受けていたのが、ロシアによるウクライナ侵略戦争に他ならなかったことは21世紀の逆説といえるのかもしれない。世界の消費社会化は平和が不可欠だからだ。ところが、20世紀が「戦争と革命」の時代であったことに対し、21世紀は「新たな戦争」の時代となっていくのだろうか。
この特集は早いうちに売切状況になったようで、残っていた書店をようやく見つけ、入手した次第だ。
師岡カリーマ・エルサムニーが冒頭の「それでも向き合うために」で、アルジャーラのアラビア語放送の終日の戦争報道にふれているが、「特集」の続刊を期待したい。
なお『FACTA』5月号がウクライナの動画配信に関して、「プーチンの足元を掬った『フェドロフ』」、31歳のデジタル変革担当大臣を取り上げていて、ウクライナのSNSプロパガンダの内実を伝えている。
16.論創社HP「本を読む」〈75〉は「かわぐちかいじ『死風街』」です。
ronso.co.jp
『近代出版史探索Ⅵ』は4月に見本はできていたが、配本は連休明けの5月半ばとなってしまった。
おそらく続けて『私たちが図書館について知っている二、三の事柄』が出ることになろう。