登記事実には記されていないこと
小田 : そう、登記事実を至上とするのであれば、他の自治会が行なった、法人化に際しての有力者から自治会名義への移譲はまったくありえないことになる。
(編注:登記の経緯については「No. 12 第一部 10 記録として残る登記の事実と、記録として残らない真実」を参照のこと。繰り返し述べているように、J寺はO寺を末寺としている)
【 O寺の土地建物登記の推移】
| 昭和 19 年 | 前の建物 東南海地震で崩壊 |
| 昭和 24 年 | O寺再建 登記なし |
| 昭和 26 年 | 土地 ~大蔵省 ⇒ 土地 ~T応寺(=O寺) |
| 昭和 28 年 | 土地 ~J寺 |
| 昭和 31 年 | 土地、建物 ~J寺 |
A : そのような登記への経緯と事情は、あなたがいっていた戦時下の企業整備や宗教団体法の改正、及び戦後のシャウプ税制による土地登記問題が絡んでいると。
そういえば、野口悠紀雄が『1940年体制』(東洋経済新報社)で、シャウプ勧告のターゲットになったのは、戦時立法である源泉徴収だと指摘していた。
小田 : そういうことで、不動産登記の事実だけで、それが正しいと言い切れるのか、きわめて疑わしい。まあ、歴史というものはそういうものだというしかない。
J寺の弁護士の「受任通知」にも、そのことは記されていた。それを示します。
ところで、問題となる出来事発生の時期が今から70年前後以前の昭和25年から31年にかけての激変の時代である上、J寺及び関係寺院も激変し、残念ながら当時の関係資料の保存状態も芳しくなく、加えて、J寺側には当時の登記手続き等に関係し、その状況を的確に伝えることができる者は見当たらない状況で、(中略)今のところ限られた僅かな公文書等の資料を基に当時のことを推測するほかありません。
A : とどのつまり、このような70年前の公用地に関する真相は、残された登記事実をたどるだけでははっきりつかめないと言っているわけだね。
これはまだ裁判ではなく、事前協議みたいなものだと考えていいのだが、こうした分野における裁判や判例はあるのかな。
小田 : こんなことをいうと、また不謹慎だとそしられるかもしれないが、「受任通知」にしても、宗教法人法第42条〈合併の効果〉などが出てくる。
それでしょうがないから、こちらもブックオフにいって、有斐閣の『小六法』を100円で買ってきた。ついでに『判例六法』もあれば購入するつもりでいたが、さすがにこちらは売っていなかった。
A : 『判例六法』まで踏みこむことはないよ。それは裁判における弁護士間でのやりとりに必要なだけだし、そこまで勉強することはない。このところ、ブックオフはしばらく行っていないけれど、『小六法』などは100円で売っているのか。
小田 : 図書館の場合、辞書と同様の禁帯出だから買うしかないわけよ。まあ、当年版はないにしても、数年前の版であれば、いくらでも売っているんじゃないかな。有斐閣、三省堂、岩波書店版など色々とあるからね。


