出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1440 小早川遊竿編『釣りの四季』

前回の志村秀太郎『畸人佐藤垢石』によれば、『つり人』の創刊が契機となって、佐藤の名声は上がり、マスコミの売れっ子になっていったようで、それは戦後の釣りブームの一端を教えてくれる。大正の『釣の趣味』や昭和戦前の『水之趣味』は、あくまで一定の…

古本夜話1439 佐藤垢石、竹内順三郎『渓流の釣り』

アテネ書房の復刻には見えていなかったので、前回は佐藤垢石、竹内順三郎共著『渓流の釣り』を取り上げなかった。だが同書は箱入菊半裁判上製三八五ページの一冊で、昭和十年に麹町区丸ノ内の啓成社から刊行され、発行兼印刷者はその代表者の布津純一となっ…

古本夜話1438 大橋青湖と『釣の趣味』

前回アテネ書房の「『日本の釣』集成」に言及したのは久しぶりであり、それに関連して三編ほど続けてみたい。 (「『日本の釣』集成」) 大正は趣味の時代であり、釣もそのひとつに数えられるし、そのことを象徴するように、『釣の趣味』という雑誌も創刊さ…

古本夜話1437 上田尚と洋々社『釣魚大全』

前回の文化生活研究会の著書や実用書は昭和を迎えると、円本企画へとも結実していったのである。それを体現したのは『釣の呼吸』や『釣り方図解』の上田尚に他ならない。 私はかつて「川漁師とアテネ書房の「『日本の釣』集成」(『古本探究』所収)を書き、…

古本夜話1436 森本厚吉と文化生活研究会出版目録

前々回の石垣綾子『わが愛、わがアメリカ』における彼女の自由学園をめぐる回想を読むと、あらためて大正時代において、新たなる学校や雑誌、思想や文化が立ち上がってきたことが臨場感をもって浮かび上がってくる。彼女はその時代の只中を通過してきたのだ。…

古本夜話1435 坂井米夫『ヴァガボンド・襄』

前回のジャック・白井に関連して、もう一編書いておきたい。 『日本アナキズム運動人名事典』の「白井・ジャック」の立項における参考文献として、坂井米夫『ヴァガボンド通信』(改造社、昭和十四年)が挙げられていた、それは著者にしても書名にしても、石…

古本夜話1434 石垣綾子、ジャック・白井、青柳優

前回の石垣綾子『回想のスメドレー』ではないけれど、石垣の「回想」によって、記憶に残された人たちがいる。彼らはジャック・白井と青柳優で、前者は『日本アナキズム運動人名事典』、後者は『日本近代文学大事典』に立項されているので、まったく無名の人…

古本夜話1433 スメドレー『女一人大地を行く』、白川次郎、尾崎秀実

アグネス・スメドレーは一九二八年にデンマークに赴き、その海辺で数ヶ月を過ごし、『大地の娘』(原題Daughter of Earth)という自伝的作品を書き上げた。それが次のように始められているのはそのことによっている。 私の前にはデンマークの海がひろがって…

古本夜話1432 ゴルゴ13、外浦吾郎原作、さいとうたかを「毛沢東の遺言」

前回、アグネス・スメトレーの高杉一郎訳『中国の歌ごえ』がもたらした広範な分野への影響にふれたが、それは著者や訳者も思いもかけなかったであろうコミックへも及んでいるのである。 昭和五十六年にさいとう・たかをはゴルゴ13を主人公とする「毛沢東の遺…

古本夜話1431 アグネス・スメドレー『中国の歌ごえ』と高杉一郎『大地の娘』

高杉一郎の翻訳はフィリッパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』(岩波書店)などの児童文学も含め、多岐にわたっているが、アグネス・スメドレーの『中国の歌ごえ』(みすず書房、昭和三十二年初版、同四十七年改版)は記念碑的な翻訳のようにも思える。 アメリ…

古本夜話1430 淡徳三郎訳『フランス大革命』と改造社『露和辞典』

かつてクロポトキンの『フランス大革命』を淡徳三郎訳で読んだことがあった。それは昭和四十六年の新人物往来社版で、戦前の改造文庫版、戦後の青木文庫版の改訳であり、とてもリーダナブルだったことが記憶に残っている。それは今でも変わっていないと思わ…

出版状況クロニクル184(2023年8月1日~8月31日)

23年7月の書籍雑誌推定販売金額は738億円で、前年比0.9%減。 書籍は388億円で、同2.2%減。 雑誌は350億円で、同0.5%増。 雑誌の内訳は月刊誌が293億円で、同3.2%増、週刊誌は56億円で、同11.7%減。 返品率は書籍が41.0%、雑誌が42.9%で、月刊誌は42.0%、週刊…