出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話727 平凡社『東洋歴史大辞典』

平凡社の『東洋歴史大辞典』は『平凡社六十年史』を確認してみると、昭和十二年三月から十四年八月にかけて、全九巻が刊行されている。その刊行とパラレルに、昭和十二年七月には支那事変、完結の十四年五月にはノモンハン事件が起きている。まさに日本とア…

古本夜話726 冨山房「支那歴史地理叢書」と内田吟風『古代の蒙古』

前回のドーソン、田中萃一郎訳『蒙古史』と同様に、本連載724で柳田泉も挙げていなかったけれど、やはり昭和十五年に冨山房から内田吟風の『古代の蒙古』が刊行されている。それは「支那歴史地理叢書」の第五篇としてで、「同叢書」は巻末広告によれば、…

古本夜話725 ドーソン、田中萃一郎訳『蒙古史』とドゥルーズ/ガタリ『千のプラトー』

前回、成吉思汗に関する基礎文献に言及したけれど、どうしてなのか、柳田泉も挙げていなかったモンゴル書があるので、それにもふれてみたい。それはドーソンの『蒙古史』上下で、明治四十二年に田中萃一郎訳として刊行され、前回の那珂通世『成吉思汗実録』…

古本夜話724 柳田泉『成吉思汗平話 壮年のテムヂン』

柳田泉が昭和十七年に大観堂から、『成吉思汗平話 壮年のテムヂン』なる一冊を上梓している。前々回の尾崎士郎『成吉思汗』の刊行は同十五年だから、時代背景はもちろんのことだが、おそらく尾崎の作品に刺激を受け、共感を得て書かれたのではないだろうか。…

古本夜話723 小谷部全一郎『増補改版成吉思汗は源義経也』

前回の尾崎士郎『成吉思汗』において、尾崎が小谷部全一郎の『成吉思汗は源義経也』の一節を引いていることを既述しておいた。その小谷部全一郎の著書が手元にあるので、これも書いておこう。(外函) その前に書誌的なことを述べておけば、『成吉思汗は源義…

古本夜話722 尾崎士郎『成吉思汗』

前回、戦後に井上靖や司馬遼太郎が西域小説を書いていたことにふれたが、それは彼らだけでなく、大東亜戦争下においてはいくつもの作品が発表されたと考えられる。その典型としての尾崎士郎『成吉思汗』が手元にある。これも例によって、浜松の時代舎で購入…

古本夜話721 フレミング『ダッタン通信』とスミグノフ『コンロン紀行』

昭和三十年代末の『ヘディン中央アジア探検紀行全集』全十一巻に続いて、四十年代に入り、同じ白水社から『西域探検紀行全集』全十六巻が刊行された。後者は監修を深田久弥、本連載716の江上波夫、協力を長沢和俊とするもので、推薦文というべき「刊行に…

古本夜話720 大日本回教協会、照文閣『回教民族運動史』、川原久仁於

前回、善隣協会の名前を挙げたが、本連載577の回教圏研究所もここに属していたのである。この回教圏研究所とは異なるかたちで、東京モスクが開堂された昭和十三年に、続いて大日本回教協会も設立され、これは前首相、陸軍大将林銑十郎を会長とし、評議員…

古本夜話719 蒙古善隣協会と西北研究所

前々回の小川晴暘の『大同の石仏』に、蒙古旅行に関して善隣協会や京都の東方文化研究所への謝意があることにふれた。だが前回の『蒙古高原横断記』においては、その探検が小川に先駆ける昭和六年と十年だったので、蒙古の張家口から出発しているにもかかわ…

古本夜話718 江上波夫と東亜考古学会蒙古調査班『蒙古高原横断記』

本連載357の『瓜哇の古代芸術』や前回の『大同の石仏』ではないけれど、昭和十年代から、「東亜」に関する図版写真入りの報告書や研究などが多く出されていくようになる。そのような一冊が、これも本連載706の日光書院から、昭和十六年に刊行されてい…

古本夜話717 小川晴暘『大同の石仏』と「アルス文化叢書」

前回の「ナチス叢書」と同時期に、やはりアルスから「アルス文化叢書」が出されている。これはB6判、多くのアート刷写真の収録が特色のシリーズで、定価が「ナチス叢書」」の六十銭に対して、一円二十銭なのはそれゆえだ。実際に手元にある『大同の石仏』も…

出版状況クロニクル114(2017年10月1日~10月31日)

17年9月の書籍雑誌の推定販売金額は1284億円で、前年比6.5%減。 書籍は720億円で、同0.5%増となり、4ヵ月ぶりに前年を上回った。 文庫本の大物新刊の刊行などによる底上げとされるが、書店実売の書籍は1%減。 雑誌は564億円で、同14.2%減。その内訳は月刊誌…