出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1535 第一書房、鈴木善太郎、モルナアル『お互に愛したら』

第一書房に関しては『近代出版史探索』116を始めとして断片的にふれてきているが、これから少し続けて言及してみたい。 創業六年目の昭和五年に第一書房はPR誌『伴侶』を創刊し、そこに「第一書房と昭和四年――高速度内幕話――」が掲載され、「単行本の成績」…

古本夜話1534 中村不折『芸術解剖学』と泰西名画家伝『ティチアン』

中央美術社と日本美術学院などに関しては拙稿「田口掬汀と中央美術社」(『古本探究Ⅲ』所収)の他に、『近代出版史探索』163や『同Ⅱ』243などでも言及してきたが、やはりその後入手した本も二冊あるので、ここで取り上げておきたい。 その一冊は拙稿でも書名…

古本夜話1533 講談社『佐々木邦全集』と細木原青起の挿絵

日本漫画会は円本漫画シリーズとジョイントしていただけでなく、その他の全集などともコラボレーションしていた。それは『近代出版史探索Ⅲ』484の『現代ユウモア全集』において、岡本一平、近藤浩一路、田中比左良、細木原青起、水島爾保布、池部鈞、麻生豊…

小田光雄 逝去のお知らせ

小田光雄は、2024年6月8日、病気のため永眠しました。享年73。葬儀は近親者のみにて執り行いました。戦後社会論をライフワークとした小田光雄の出発点は『〈郊外〉の誕生と死』であり、その延長線上で、出版・古書・図書館など多岐にわたる分野を論じ、多く…

古本夜話1532 建設社「漫画講座」、日本漫画会、加藤悦郎

これは昭和初期円本時代ではなく、昭和九年に刊行されているが、やはり一連の漫画シリーズと見なせるので、続けて書いておくべきだろう。 それは建設社の「漫画講座」第四巻で、例によって浜松の時代舎で入手した一冊であり、日本漫画会編と銘打たれている。…

古本夜話1531 中央美術社『現代漫画大観』、『日本巡り』、田口鏡次郎

『漫画六家撰』の版元である中央美術社に関しては拙稿「田口掬汀と中央美術社」(『古本探究Ⅲ』所収)において、もうひとつの漫画円本企画『現代漫画大観』 を挙げ、このうちの二冊に言及している。だが最近もう一冊入手したこと、及び前回の『裸の世相と女…

古本夜話1530 中央美術社「漫画六家撰」、下川凹天『裸の世相と女』、金子文子

これも浜松の時代舎で入手したのだが、下川凹天の『裸の世相と女』が手元にある。同書は昭和四年に中央美術社から「漫画六家撰」シリーズの一冊として刊行されているので、はやり円本時代の企画のひとつに数えられるだろう。それゆえに、この「漫画六家撰リ…

古本夜話1529 平凡社『川柳漫画全集』と『寸鉄双紙(明和の巻)』

百科事典や大部の辞典類が続いてしまったが、昭和円本時代には漫画シリーズもすでに企画出版されていたことにもふれておこう。 出版における戦後のコミックの隆盛の中にいると、それが当たり前のように錯覚するけれど、昭和三十年代まではまた「ポンチ絵」と…

古本夜話1528 三省堂『日本百科大辞典』

かつて拙稿「三省堂『ウェブスター氏新刊大辞書和訳字彙』と教科書流通ルート」(『古本屋散策』所収)において、三省堂の『日本百科大辞典』はそれとは別の物語になると記したことがあった。だが本探索で平凡社の『大百科事典』を取り上げたし、『近代出版…