出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話970 六人社、「民俗選書」、橋浦泰雄『民俗採訪』

『近代出版史探索』で、六人社と『民間伝承』にふれているが、『民間伝承』が六人社から発売される昭和十五年五月号から、六人社の出版広告が掲載されるようになり、そのひとつが「民俗学文庫」で、実際には「民俗選書」として刊行されるに至る。 その「近刊…

古本夜話969 岩田準一『志摩の海女』

前々回の田中梅治『粒々辛苦・流汗一滴』の他にもう一冊、「アチック・ミューゼアム彙報」として出された著作を持っている。ただそれは原本ではなく、戦後になって復刻された岩田準一の『志摩の海女』である。これは「同彙報 第38」の『志摩の蜑女』として、…

古本夜話968 赤松啓介、栗山一夫、『民俗学』

前回の赤松啓介(栗山一夫)に関しては後に三笠書房や唯物論研究会のところで言及するつもりでいたが、彼が昭和十三年に『民俗学』(三笠書房)を上梓し、柳田民俗学を批判していることを考えれば、続けてふれておくべきだろう。 それに昭和六十年代には明石…

古本夜話967 「アチック・ミューゼアム彙報」と田中梅吉『粒々辛苦・流汗一滴』

『民間伝承』の第一号には「最初の世話人」として、柳田国男、橋浦泰雄、守随一などを含めた十四人の名前が挙がっているが、意外なのは宮本常一を始めとして、澤田四郎作、桜田勝徳が名前を連ねていることである。 佐野眞一の宮本と澁澤敬三を描く『旅する巨…

古本夜話966 萩原正徳、三元社、『旅と伝説』

昭和十年に創刊された『民間伝承』を読んでいると、雑誌の紹介欄に多くの民俗学に関連するリトルマガジンの新しい号の概要が記され、これらのトータルなコラボレーションによって、日本の民俗学も造型、展開されてきたことを実感させる。 その中に必ず『旅と…

古本夜話965 青磁社、米岡来福、桑田忠親『千利休』

伊波普猷『古琉球』を刊行した青磁社に関しては本連載393などでふれておいたように、この版元は山平太郎を発行者としていたが、出版社の戦時下の企業整備により、合併した八雲書林の鎌田敬止が編集長となり、折口信夫の『死者の書』を刊行したことを既述…

東京古書組合 トークイベントのお知らせ

この度、第29回ドゥマゴ文学賞を受賞しました。 その受賞記念として、12月7日(土)、東京古書組合主催のトークイベントが開催されます。 トークイベント要綱 ご希望の方は、下記のサイトからお申し込み下さい。 申し込み

古本夜話964 稲村賢敷『沖縄の古代部落マキョの研究』

もう一冊の沖縄書は稲村賢敷の『沖縄の古代部落マキョの研究』で、昭和四十三年に販売所を琉球文教図書株式会社として刊行されている。定価は五弗とあり、本土復帰以前の出版だったことを伝えている。 (『沖縄の古代部落マキョの研究』) 奥付の「著者略歴…

古本夜話963 眞堺名安興と『沖縄一千年史』

もう二冊ほど沖縄書があるので、続けて書いてみる。 一冊は眞堺名安興、島倉龍治著『沖縄一千年史』で、昭和二十七年の四版とあり、発行者は福岡市の親泊政博、発行所は住所を同じくする沖縄新民報社、発売所は琉球文教図書株式会社となっている。 (『沖縄…

古本夜話962 笹森儀助『南嶋探験』

柳田国男は昭和三十六年に筑摩書房から刊行された『海上の道』(岩波文庫)の中で、笹森儀助の『南島探検』に言及し、次のように述べている。 笹森儀助の『南島探験』という一書は、明治二十六年(一八九三)かに、この人が沖縄県の島々を巡歴して、還ってき…

古本夜話961 比嘉春潮、崎浜秀明編訳『沖縄の犯科帳』

本連載958で、伊波普猷『古琉球』の「後記」が比嘉春潮と角川源義の連名で書かれていることを既述しておいた。後者の角川は昭和二十年に角川書店を創業し出版業界ではよく知られているので、ここでは前者の比嘉にふれてみたい。たまたま彼と崎浜秀明編訳…

出版状況クロニクル138(2019年10月1日~10月31日)

19年9月の書籍雑誌推定販売金額は1177億円で、前年比3%減。 書籍は683億円で、同0.2%増。 雑誌は494億円で、同7.3%減。その内訳は月刊誌が409億円で、同8.4%減、週刊誌は85億円で、同1.5%減。 書籍のプラスは4.7%という出回り平均価格の大幅な上昇によるもの…