出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2024-01-01から1年間の記事一覧

古本夜話1507 室生犀星『愛の詩集』と感情詩社

前々回の新潮社の「現代詩人叢書」に室生犀星の『田舎の花』が含まれていることを示したばかりだが、これも犀星が萩原朔太郎と同じ詩話会で『日本詩人』の編集に携わっていたこととリンクしていよう。 しかし犀星の処女詩集『愛の詩集』は朔太郎の『月に吠え…

古本夜話1506 宝文館と山宮允『英米新詩選』

以前から山宮允を取り上げなければならないと思っていたのだが、彼の主たる著作や翻訳を入手するに至らず、言及してこなかった。それらを古本屋で見出せなかったのもひとつの要因ではあるのだが。 それでも前回、山宮と川路柳虹が詩話会の提唱者で、大正時代…

古本夜話1505 萩原朔太郎『青猫』と新潮社「現代詩人叢書」

萩原朔太郎も昭和三年に第一書房から新菊判、総革金泥装の『萩原朔太郎詩集』を刊行している。これは前々回にふれた大正末の『上田敏詩集』や堀口大学訳『月下の一群』などの第一書房ならではの特装本で、萩原の『月に吠える』に始まる詩集の集成だった。そ…

出版状況クロニクル 休載のお知らせ

「出版状況クロニクル」は著者病気療養のため、休載します。「古本夜話」は書きためた原稿があるので、継続してアップします。なお『出版状況クロニクルⅦ』は3月31日に発売されました。

古本夜話1504 竹内てるよ『美しき朝』、神谷暢、渓文社『近代学校』

前回を書いた後、またしても浜松の時代舎で竹内てるよのエッセイや日記も併録した詩集『美しき朝』を見つけたのである。B6判並製ながら、小倉遊亀による装幀は竹内も謝辞をしたためているように、鮮やかな紅椿が描かれ、戦時下の一冊とは思われない。版元は…

古本夜話1503 藤澤省吾『詩集我れ汝の足を洗はずば』と竹内てるよ『海のオルゴール』

かつて浜松の時代舎で見つけた無名の詩集に関して一文を草したことがあった。それは「廣太萬壽夫の詩集『異邦児』をめぐって」(『古本探究Ⅱ』所収で、この詩集が鳥羽茂のボン書店の前身である鳥羽印刷所で刷られ、花畑社から昭和四年に刊行されたこと、花畑…

古本夜話1502 土田杏村、アルス、『日本児童文庫』

『土田杏村全集』第十五巻所収の四十四年という短い「土田杏村年譜」をたどってみると、昭和二年に入って、『日本児童文庫』に関する言及を見出せる。それを順に追ってみる。 (『日本児童文庫』) 二月/アルス『児童文庫』の案を立てる。 三月/この頃『児…

古本夜話1501 『亀井勝一郎全集』と『土田杏村全集』

戦前に全集が出されていても、もはや忘れ去られてしまった文学者や思想家は数え切れないほどだし、それは戦後も同様である。二十年ほど前に、ブックオフで『亀井勝一郎全集』(講談社、全二十一巻、昭和四十六年)を見つけ、一冊百円だったので、気まぐれに…

古本夜話1500 第一書房と『古事類苑』の挫折

ずっと見てきたように、第一書房はモダニズム出版に携わってきたが、その一方で古典籍の出版にも執着を示していた。『近代出版史探索Ⅵ』1107で、『古事類苑』の流通と販売にふれておいた。それを簡略にトレースすれば、『古事類苑』出版企画は明治十二年に文…

古本夜話1499 第一書房『パンテオン』の直接販売

前回、城左門の詩集を取り上げたばかりだが、浜松の時代舎で『PAMTHÈON (汎天苑)』Ⅳを見つけた。以下『パンテオン』と表記する。B4判をひと回り小さくした判型で、表紙にはフランス語表記でタイトルと発行年月日が記されている 。確か城もこの詩誌の同人だ…

古本夜話1498 ウスヰ書房、城左門『終の栖』、臼井喜之助『京都味覚散歩』

本探索1495で、湯川弘文社の「新詩叢書」に城左門の『秋風秘抄』が収録されていることを挙げておいた。 私などの戦後世代にとって、詩人の城左門は馴染が薄く、「若さま侍捕物帖」シリーズの作者としての城昌幸のほうに親しんできた。それは昭和三十年代の東…

古本夜話1497 中央公論社と豪華本児童書

昭和戦前における児童書の大判化に気づかされたのは、ほるぷ出版による「名著複刻日本児童文学館」第一集、二集(昭和四十九年)を通じてであった。この復刻がなければ、それらの児童書に古本屋で出会うことはほとんどなかったであろうし、実物とたがわぬ一…

古本夜話1496 湯川松次郎と『新撰童話坪田譲治集』

前回の「新詩叢書」の版元が大阪の湯川弘文社であることにふれておいたが、どうしてこのような詩のシリーズを刊行するに至ったのかは詳らかでない。もっともそれは湯川弘文社に限らず、東京に支店を設けた大阪の多くの出版社に共通していることであるし、そ…

古本夜話1495 竹中郁『龍骨』と湯川弘文社「新詩叢書」

前回、『詩と詩論』同人の竹中郁が実際にパリのシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店を訪れていたことを既述しておいた。それは昭和三年から四年にかけて、洋画家の小磯良平と渡欧し、パリに滞在し、ジャン・コクトーとも会っていた頃だと思われる。 その…

古本夜話1494 北園克衛と『薔薇・魔術・学説』

第一書房における大正十四年の堀口内大学『月下の一群』の刊行、及び厚生閣の春山行夫による昭和三年の『詩と詩論』創刊は、日本の近代詩に多大な影響を及ぼし、多くの詩のリトルマガジンやエスプリ・ヌーヴォーに基づく詩を誕生させていった。 それは拙稿「…

出版状況クロニクル190(2024年2月1日~2月29日)

24年1月の書籍雑誌推定販売金額は731億円で、前年比5.8%減。 書籍は457億円で、同3.5%減。 雑誌は273億円で、同9.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が219億円で、同10.6%減、週刊誌は54億円で、同4.7%減。 返品率は書籍が33.8%、雑誌が47.8%で、月刊誌は48.4%、週刊…

古本夜話1493 『文学界』中原中也追悼号

続けて取り上げて来た『四季』と同じく、冬至書房の「近代文芸復刻叢刊」として、『文学界の』中原中也追悼号(昭和十二年十二月号)も復刻されている。これも手元にあるので、そこに寄せられた十本の「追悼」を挙げてみる。 *「追悼」/島木健作 *「中原…

古本夜話1492 『四季』と『辻野久憲追悼特集』

前回の『四季』は『日本近代文学大事典』第五巻「新聞・雑誌」に一ページに及ぶ解題があり、「『コギト』とともに昭和十年代の抒情詩復興の気運の中枢として重きをなした同人雑誌」とされている。 そこでは戦後の第三次、四次までの言及をみているし、ここで…

古本夜話1491 『四季』の「萩原朔太郎追悼号」と四季社

萩原朔太郎や第一書房と関係の深い詩のリトルマガジンがある。それは『四季』で昭和十七年には「萩原朔太郎追悼号」(第六十七号)を発行している。この「追悼号」は立原道造、中原中也、辻野久憲も合わせ、昭和五十二年に冬至書房新社によって、「近代文芸…

古本夜話1490 萩原朔太郎『氷島』と『日本への回帰』

かなり長く第一書房に関して書いてきたけれど、それはいつの間にか本がたまってしまったことにもよる。そうしたことは改造社や三笠書房にもいえるので、やはり続けて取り上げていきたいと思う。 その前に残った第一書房の春山行夫『詩の研究』と萩原朔太郎『…

古本夜話1489 堀口大学訳詩集『空しき花束』

これは古本屋で偶然に入手し、その「序」を読むまで知らなかったのだが、堀口大学訳詩集『空しき花束』は『月下の一群』の続編として刊行されていたのである。それは大正十五年十一月で、前年九月の『月下の一群』に続く訳詩集であることからすれば、当然の…

古本夜話1488 岡田正三、田中秀吉、全国書房『プラトン全集』

これは後述するつもりだが、第一書房の『土田杏村全集』の全巻校正は岡田正三が担っていた。ただ彼は『日本近代文学大事典』などには見えていない。ところが『第一書房長谷川巳之吉』所収の「第一書房刊行図書目録」にはふたつの『プラトン全集』の訳者とし…

古本夜話1487 大阪毎日新聞社校正部編『校正の研究』

もう一冊、浜松の時代舎で、所謂「業界本」を見つけているので、これも続けて紹介しておこう。 それは大阪毎日新聞社校正部編『校正の研究』で、昭和三年に大阪毎日新聞社と東京日々新聞社から刊行されている。四六判函入、六三六ページ、索引付の堂々たる一…

古本夜話1486 志水松太郎『出版事業とその仕事の仕方』

十年ほど前に『日本古書通信』の樽見博編集長からクリスマスプレゼントとして、『出版事業とその仕事の仕方』を恵送されたことがあたった。この本は知らなかったが、元版はかなり売れたようで、写真が豊富だし、何らかの参考になればという添え書きとともに…

古本夜話1485 竹柏会と「心の花叢書」

本探索1481の片山廣子の歌集『翡翠』を入手し、そこに収録された「ゆめもなく寝ざめ寂しきあかつきを魔よしのび来て我に物いへ」という一首を示し、彼女に言及したことがあった。(『翡翠』) その際に片山の『翡翠』の他に二冊の歌集も拾っていたことを思い…

古本夜話1484 生活社「日本叢書」と堀口大学『山嶺の気』

浜松の時代舎で、前回の今田謹吾が編集し、それに花森安治も関わっていたのではないかと推測される生活社の「日本叢書」を見出した。これは初めて目にする「叢書」にして、堀口大学の詩集『山嶺の気』である。「叢書」といってもB6判並製三〇ページのもので…

出版状況クロニクル189(2024年1月1日~1月31日)

23年12月の書籍雑誌推定販売金額は887億円で、前年比8.9%減。 書籍は483億円で、同7.5%減。 雑誌は404億円で、同10.0%減。 雑誌の内訳は月刊誌が354億円で、同8.8%減、週刊誌は50億円で、同17.9%減。 返品率は書籍が29.1%、雑誌が40.3%で、月刊誌は38.5%、週…

古本夜話1483 今田謹吾『陶器の鑑賞』と『編輯著述便覧』

前回、第一書房と花森安治の暮らしの手帖社が伊東胡蝶園と片山廣子を通じてリンクしているのではないかと既述しておいたが、花森に関してはもう一つのミッシングリンクとおぼしき人物もいるので、それも続けて書いておきたい。その人物は『近代出版史探索Ⅴ』…

古本夜話1482 『美しい暮しの手帖』と片山廣子『燈火節』

本探索1478で、第一書房の長谷川巳之吉と『暮しの手帖』の花森安治がともに伊藤(伊東)胡蝶園と関係があり、また花森の大政翼賛会を通じて、長谷川と面識があったのではないかという推測を既述しておいた。そのような想像をたくましくさせるのは、前回の片…

古本夜話1481 片山廣子訳『シング戯曲全集』

「川田順自叙伝」とある『葵の女』はタイトルが象徴しているように、自叙伝というよりも、徳川の娘を始めとし、「老いらくの恋」に至る川田の女性遍歴、それも遠回しな「ヴィタ・セクスアリス」と読むこともできる。それは川田が明治十五年に、宮中に近い東…